第49話 開会式

 会場に入り、学園のみんなが並んでいた列に並んだ。


「遅いぞ」


 列に並ぶとマーリンから注意された。でも俺は悪くないと言いたい。


「すみません。まだ始まってないですよね?」


「ああ、むっ、始まるみたいだぞ」


 マーリンが顎で前を指すと王冠を被った人が壇上に立っていた。

 その人が壇上に立ってからは一気に静かになった。


「まずは我が国、ギルパネア王国に来ていただき……」


 と校長先生のように長々と話を話し出した。俺はその間ぼーっとしていたのだが、ふとレオナとリディアが視界に入った。

 2人の話を聞く態度はまさに真逆だ。背筋を伸ばしてちゃんと話を聞いているリディアに欠伸をしながら猫背になって話を聞いているレオナ。


 あんな対称的な2人だからかあの2人はライバルで、一年の時からずっと競い合って来たらしい。

 らしいっていうのは俺もゲームの設定資料集でしか見たことがないからだ。


 そして今年の選抜戦最終日では確かレオナとリディアが戦うんだよなぁ。

 まっ、俺には関係ない。

 この戦いのペアは主人公であるカインが選ばれるからな。一応選ばれないルートもあるがそれはカインが選抜戦に出場していない時だけだ。


 おっ、そうこうしているうちに話が終わったようだ。

 第一競技棒倒しの準備がありますので選手の皆さんはそれぞれの学園の控室に移動してくださいというアナウンスが流れている。


 最初の競技は棒倒しか……確か選抜戦に出場する6学園同時に戦って最後まで棒が残っていた学園が一位になるんだよな……


 俺達はそのアナウンスに従って移動するのだった。


 案内された部屋は結構デカくて俺たち学生15人と引率の先生5人が入ってもかなりスペースがあった。


「さっそくだが、これからある棒倒しに出場するメンバーを決めたいと思う」


 部屋に入るとすぐにリディアがそう言った。

 今から決めるのか、てっきり3年と2年の独断で出場する競技が決まってるのかと思ってた。


「そうですね、リディア様。出場メンバーは8名でしたよね?」


 すぐにソールド先輩が賛成の意を示した。

 ちょっと前にあんなに青い顔してたのによく話しかけれるな。


「ああ、それと様はつけなくてもいい。気軽に先輩と読んでくれ」


 というリディアだが、その言葉に対してソールド先輩はすぐに首を横に振った。


「まさか! 王族であるリディア様に先輩などと……」


「そうか……まあいい。それで話を戻すが棒倒しと言うが魔法や攻撃もありだ。勿論武器も使って構わない。自分に適性があると思ったものは手を上げてくれないか?」


 リディアの問いに対して三年から2人と2年が全員。そして1年からはエリカとカインが手を上げた。

 2年に関してはソールド先輩が手を上げてから引っ張られるように手を上げた。


 俺には関係ない話だし、端にあるベンチにでも座っておくか。

 立っているのが疲れて来たので俺はベンチに腰を下ろした。

 まあ平民の俺が選ばれる事ないだろ。


「9人か……1人余るな。では、攻撃力に自信がある人は?」


「はい」


 ソールド先輩がそう言ってリディアの前に出た。


「私も自信あるわ!」


 次にエリカが前に出た。


 他の人は前に出ない。つまり残りは全員守りに自信があるのか……

 攻撃2人に対して守備が6人か……

 悪くはないけどもう少し攻撃力が欲しいな。


「2人だけか……守備も大切だが、もう少し攻撃力が欲しいな……」


 そう言って悩んでいるリディア。俺と同じ考えのようだ。


「ふっ、悩んでいるようだな」


 そんな時に声を上げたのはマーリンだ。他の先生はリディアの顔色を伺って何も発言していない。


「ッ! マーリン先生。はい、もう少しパワーが欲しいですね」


 リディアも突然声をかけられて一瞬驚いたが直ぐに普段の態度に戻った。


「ならば、このバカを使え」


 そう言って俺の首根っこを持ち上げる。


「うぇっ!」


 急に喉が詰まって変な声が出た。


「確かに……エリカの時のあの魔法があれば……」


 いや、無理ですよ。あれ条件が整っていただけだし。


「そうよ! アンタあのガントレットつけて出場しなさいよ!」


 とエリカがいう。やめろ、バラすんじゃない! ソフィアもそれに続いてそうですね! とかいうのやめろ!


「ちょっとまってください! 俺は反対です! 平民が競技に出るなんて貴族の恥です!」


 とソールド先輩が反対をした。貴族的にはそれが普通だよなぁ。貴族を抑えて平民が出るなんて貴族のメンツ丸潰れだ。


「平民も貴族も関係ないでしょ! それにリックはそこらの貴族より強いわよ!」


 とエリカが切れた。素直に俺のために怒ってくれるのは嬉しいがその怒り方は俺がヘイトをかってしまう。


「ですが、エリカ様!」


「落ち着いてくれ……リック、君に頼めるか?」


 ……断りずらい。というか断ったらマーリンから後で愛の鞭をもらってしまう。


「任せてください! 俺がこの学園を1位にしてみせます!」


 どうせやるなら目指せ1位だ。


 俺は気合いを入れてから鞄に入れていたガントレットを取り出すのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る