第43話 新たな力
「…………ここは?」
何もない空間でふよふよとした浮遊感で目が覚めた。
ここはヴィナス様と会う時にいつもくる空間だ。つまり成功したってことか!
「ヴィナス様ー! 居ますかー!」
辺りを見渡しても誰かというかヴィナス様がいる気配がない。
「……ぉぉぉぉおおおお!!!」
なんか声が聞こえるな……一体どこから?
周りを見ても何もいない。……上か!?
そう思って上を向いた瞬間足が目の前にあった。
「ぐふっ!?」
いてぇぇぇ!? なんだこの痛み! 気絶しそうだ!
「あっ、リック君! まぢごめん! でも安心して! この空間じゃ気を失う事はないから!」
それでここまで痛いのに意識が飛ばないわけだ。
「それはいいけど何してたんですか?」
「神パゥワーを試してたんだよね! 信者も増えたしね!」
ん? 信者が増えた? 俺はあれから勧誘してないぞ? ……リンか!
「そうだ! リンに何をしたんですか! アイツ今日リン・V・ノースターとか言う訳のわからない事言ってたんですよ!」
俺がそういうとあちゃーバレちゃったかーとか言って頭を抑えた。
「実はね、リック君が槍をとって来てくれた後アーレスの所に改めて行ったんだけど神としての力の差を見せられたんだよね……」
そう言って下を向いたヴィナス様。
「それでどうしたんですか?」
「やっぱ神の力の源と言えば信者だよね、それを手っ取り早く増やすには可愛いシスターかな! って閃いちゃったのよ!」
なるほど、それで唯一の女信者であるリンに白羽の矢が立ったのか。
「でもそれがどうしてあぁなったんですか?」
「ほら、その……あの子って自信なかったじゃない? だからそのー……毎晩ここに呼び出してリンちゃんは可愛いよって愛を囁き続けたというか……そんな感じかなー、あははは」
俺の言葉に目を逸らしながら少し申し訳ないような顔をしながらそう言った。
「半洗脳じゃねぇか! 何やってんだよ!?」
ついつい敬語をわすれてしまう。
「でもでも! 元はと言えばリック君も悪いんだよ! 全然信者集めてくれないし!」
ぷくーっと膨れ顔になって怒るヴィナス様。可愛い。
ってそうじゃない。でもそれを言われると何も言えない。
「うぬぬぬ、じゃあ今日1日で何人信者が増えたって言うんですか!」
そういうとヴィナス様は神々しく光りながらこう言った。
「10人」
「なっ!?」
俺の5倍だと……確かに今日リンが色々な人に話していたのは知っていたけどここまでとは……
「まぢぱないよね! リンちゃんに任せて大正解だったよ」
うんうんと満足気に頷くヴィナス様。
「はぁ……もういいですけど、リンは元に戻るんですか?」
「元に戻るも何も私が何かした訳じゃないしねぇ……でも今のリンちゃんの方がいいんじゃない?」
それはエリカも言ってたけどなぁ……
「じゃあ絶対にリンを唆して悪さとかしないでくださいね。今のリンならなんでも言う事聞いてしまいそうなんで」
「分かった、それは約束する」
そう言って頷いてくれた。とりあえず良かった。
「じゃあそろそろ、俺は帰りますね」
「待って待って! リック君に渡すものがあるんだよ!」
ん? 渡すものってなんだ?
「アーレスの槍を届けてくれたお礼にね、じゃーん! これをあげちゃいます!」
と言ってヴィナス様は両手を出して来た。
手の上にはふよふよと光の玉が浮いていた。
「これ、なんですか?」
思わず聞いてしまう。
「ふっふっふっ、これはね……なんと古代魔法! 失われた魔法の1つスティールさ!」
古代魔法か。ゲームの中でも最強魔法と言われる魔法で通常のプレイでは使うことのできない魔法だ。
俺の知ってる限りだと、時間停止と未来予知などのゲームバランスを崩壊させるレベルの魔法ばかりだ。
「スティールって一体どんなことができるんですか?」
俺はスティールの魔法を知らなかったので聞いてみることにした。
「触れた相手の魔力を奪うんだよ、使いづらいのが難点だけどリック君ならその条件クリアしてるでしょ?」
触れた相手の魔力を奪うか……
「まあ、そうっすけど……」
なんと言うか少し期待はずれだ。俺は今のところは魔法拳士だから確かに相性はいいが……地味すぎない?
「いらないならあーげない! せっかくリック君の為に用意した魔法なのになー! つらたにえんだよ」
そう言って光の玉を仕舞おうとするヴィナス様。
「いや、嘘です! ください!」
即土下座だ。貰えるものは貰っておかないと。
「最初からそうすればいいのに……じゃあ渡すね」
と言うと光の玉がふよふよと俺の体に入っていった。
特になにも変化を感じないな……
「よし! これで終わり!」
まあ使ってみたら分かるか。
「じゃあヴィナス様俺はそろそろ」
「うん、いい時間だしね。それと君とヒーデリック君が選抜戦? とか言うのに出場する事は聞いたよ! その選抜戦でいい結果を残してヴィナス教の宣伝よろしくね〜」
じゃあねー、と手を振っているヴィナス様を見ていると段々と視界が暗くなって来た。
俺はそれに逆らわず意識を委ねるのだった。
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