第42話 リン・V・ノースター
「いやいやいや! どうしたんだよ? 本当に大丈夫か?」
ヴィナス様は一体リンに何をしたんだよ。
「はい、私は大丈夫です。……あなたがこの方達を率いて来たのですね。こんな事では何も解決しません。ヴィナス様もそれを望んでいます」
俺の質問に答えてからリンは俺の胸ぐらを掴んだ生徒に対してそう言った。
「……は?」
そう言われた生徒はポカンとしている。
「いいですか? 貴方が何故リック君に絡んでいるのかは知りませんが、貴方じゃリック君には敵いません。ですからこれは無駄な争いと言うやつです」
と素で煽るような事を言い始めた。……以前のリンとはまるで別人だ。
「な、なにを〜平民風情が!」
と怒って拳を振り上げようとする。
「やめなさい! これ何事よ!」
この声はエリカか! それに後ろにはカインもいる。
「え、エリカ様」
貴族達はエリカの姿を見た瞬間固まる。
「平民差別は禁止されているはずよ」
「そうだ! そうだ!」
とエリカの後ろで言っているカイン。少し楽しそうだ。
「っち、くそ! 覚えてろよ! 退くぞ」
分が悪いと思ったのかそう言ってリーダー格の生徒がそう言って貴族を連れてこの場を去っていった。
「ありがとう助かったよ」
「そうだな。エリカさんありがとう」
俺とレオンはエリカに頭を下げる。エリカが来てくれていなかったらどうなっていた事か……
「ふん、気にしなくていいわよ」
と言ってそっぽを向いてしまった。
「こんな態度とってるけどエリカってばとても心配してたんだよ」
とカインが補足説明をしてくれるが、やめてやれ。エリカが顔を真っ赤にしてるぞ。
「な、何を言ってるのよ!?」
「……エリカさん、ありがとうございました」
そう言ってエリカの手を取りお礼をするリン。一方で手を握られているエリカは困惑しているようだ。
「リン、よね?」
そう言って俺の方を見て目でこれはどう言う事? って聞いてくるが分からんと返しておいた。
……でもヴィナス様がこれに関わってるのは間違いないんだよな。
って事はもしかしてヒーデリックもこんなことになってんのか!?
ヒーデリックにも勧誘してしまったしな。
俺はヒーデリックが変になってないか確認するためにすぐに1ーBへと向かっていった。
「おいヒーデリック! いるか!」
バンっと扉を開いて入ると近くにいた貴族が立ち上がって絡んできた。
「貴様、平民のリック・ゲインバースか!? 貴様が何をしにここにっ!」
途中で言葉が止まった理由は、ヒーデリックが貴族の肩を掴んで止めてくれた。
「やめろ、彼は僕の友達だ。それと平民差別はもうするなと言っただろ」
ヒーデリック……お前いい方向に変わったんだな。あれだけ差別をしていたやつとは思えないセリフだ。
「で、ですが……」
「ですがも何もない。反省したまえ。……でリック、まずはおめでとうと言えばいいのかな?」
ヒーデリックに変わったところはないようだ。少しキザったいこの態度は元からだしな。
「ありがとな、当然ヒーデリックも入ってんだろ?」
まあヒーデリックの実力なら確実に1年の代表メンバーに入ってるだろう。
「勿論さ! それで今日はなんのようだい?」
「んー、もう用事は終わったわ! じゃあな!」
ヒーデリックの様子がおかしくなってないって事はリンだけか……ヴィナス様に聞くしかないか。
俺はそう言って教室を後にした。
「ちょっ!? 僕への扱い雑じゃないか!?」
などと言っているが、聞かなかった事にしておこう。
「へー、そうなの」
「はい、そうなんです! ですからエリカさんとカイン君、レオン君もヴィナス様を信仰しましょう!」
「うん、僕は信仰してもいいよ。信じてる神様とかいないし」
「私は考えておくわ」
「俺も考えておこう」
と戻ってくると新しくなったリンがめちゃくちゃ馴染んでいた。
と言うか待て、カインは俺が勧誘した時は断ってたよな。それにレオンも断ってたのになんで今は考えておこうなんだよ!
「あら、帰って来たの」
エリカが俺に気づいて声をかけて来た。
「おう、リンはどんな調子だ?」
返事をしてエリカに耳打ちをする
「最初は変になったと思ったけど、今のリンもいいんじゃない。前よりも楽しそうだし」
まあそれは思った。前までのリンよりイキイキしてるし。
「内緒話ですか?」
コテンと首を傾げながら質問してくるがお前の話だぞと言ってやりたい。
「いや、なんでもない。それよりそろそろ授業が始まるぞ」
「えっ、もうこんな時間なの!? カイン! 戻るわよ!」
「うん!」
と言ってカインを引き連れてエリカは帰っていった。
「俺らもだ、早く演習場まで行こう!」
「ああ!」
「はい!」
とレオンとリンが返事を返した。
「……リンはその格好で授業を受けるのか?」
「はい! 勿論です!」
……マーリンになんか言われないか心配だ。俺はそう思いながら演習場へと向かうのだった。
その日の夜。
……それにしても今日のリンにはびっくりしたな。
あの後授業に修道服で出席したリンだったが、マーリンは動じずに授業していた。初めてアイツのことを教師として尊敬しそうになった。
「今日は疲れたし早めに寝るか」
俺はベッドの上で横になる。もちろんヴィナス様に会えるように願いながらだ。
アーレス様の槍の事件以降会えてないから心配だ。
俺から会いたいと思って会えるもの何かは、分からないがリンと何があったか知るためには直接話さないといけないしな。
俺はそう考えながら目を閉じるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます