第40話 戦いが終わってからの話
ちゅちゅんと言う鳥の囀りで目を覚ます。
あれから俺達はダンジョンをクリアして外に出てきたんだが、夜だったこともありというかあの2人が怖かったのですぐに街へ戻り宿をとった。
借りていた部屋を出て一階の食事ができる場所に行くと、2人はすでに起きていたのか話をしていた。
「おはよう」
と2人に挨拶をすると睨まれた。
「ぐっすり眠れたかしらクソ野郎?」
「おはようございます。変態さん」
あれ? おかしいぞ? リックて呼ばれなかったような気がするんだが、2人を見るととんでもない笑顔だ。
あれぇ? 聞き間違いかなー?
「2人はもうご飯食べたのか?」
俺が席についても2人はニコニコと笑っている。
「いえ、まだよ。クソ野郎がくるのを待っていたのよ」
ん?
「そうですね、変態さんは朝が遅いんですから」
んん?
「スゥー……すみませんでした!」
俺は机に頭を擦り付ける。もう怒ってるとかって次元じゃないぞこれ!
恐る恐る頭を上げると2人は普段の表情に戻っていた。
「冗談よ、まあリックも男ってことかしらねー」
「そうですねぇ、今回は顕著に出てましたもんねー」
なんて言いながら店員さんに注文をしていた。許してくれたみたいでよかった。
エリカは俺が甘い物を好きなのを知ってか知らずかは分からないがフレンチトーストを頼んでくれた。
「で、報酬はどうするの?」
「今日売る予定だ。それを3人で分けようと思っているんだけど……」
「それでいいわ、それでリックの分前が10万ゴールドに届かなかった場合はどうするのかしら」
「それはもちろんコツコツ返させていただきます」
モンスターを倒すついでにちょうどいいだろう。素材が出ればそれを売って暫くはエリカに返そう。
「槍はどうしたんですか?」
俺が槍を持っていないことに気づいてソフィアが質問してきた。
「あー、あれはもう渡しておいたよ」
昨日夢の中で神様に渡しましたなんて言えないのでそう言っておく。ヴィナス様はアーレスにこれを返したらまた連絡するねと言われた。
「依頼人はこっちにきていたんですね」
「あー、まあ急ぎの用事だったらしいからな」
と言っておくと納得したようだ。そうこうしていると頼んだご飯がやってきたので俺達はそれを食べることにした。
「ふぅ、美味しかったー」
ふわふわで甘くて美味しかった。
2人も味に満足したのか美味しいと言っていた。
「じゃあこれ売りに行くか?」
「はい!」
「ええ」
俺達は会計を済ませて素材を売りに行くのだった。
「意外と高い値段で売れたわね」
「まあ数も多かったしな」
「じゃあ分けましょうか!」
俺達が取り囲んでいるのは売れたお金だ。なんと合計で15万ゴールドもあった。
それから1人5万ゴールドに分けた。
「じゃあこれ3万ゴールドは返しておくよ」
俺は早速エリカにお金を渡す。
「はい。確かに受け取りました」
と言ってエリカは自分の袋に三万ゴールドを入れた。
「今日はこれからどうする?」
俺が2人にそう問いかけると2人は待ってましたと言わんばかりに、
「「遊びたい!」」
と言った。
まあ帰りのことを考えても昼までは時間があるしちょうどいいか。
「そういえば昨日ここに来た時に面白そうな店があったな、いってみるか?」
と聞くと2人は頷いた。
「さぁ! これらを落とすことができたなら貴方のもの! 中には3万ゴールドの景品もあるよー!」
と言うことでやってきたのは射的屋だ。日本を思い出すなー。
「おっ、挑戦者かい?」
俺達が店の前で立ち止まると店主は笑顔でそう言った。
「そうよ!」
エリカが一歩前に出た。エリカが1番にやると言うことなのだろう。
「おっ、お嬢ちゃんが最初の挑戦者だね! ルールは簡単この銃と玉を使って景品を地面に落とせばいい! ただし魔力は込めたらダメだよ! 一回300ゴールドだ!」
と言ってコルクの玉を詰めた銃を渡してきた。玉は5個渡されるみたいだ。
「頑張れよー」
「頑張ってください!」
とソフィアも応援している事にびっくりする。仲良くなれたのだろうか?
エリカがなにを狙うのか見ているとどうやらぬいぐるみを狙うらしい。
可愛らしいネコ? のようなぬいぐるみに照準を合わせている。
「えいっ!」
コルク玉はぬいぐるみに当たるがぬいぐるみが動く気配はない。
「ぐぬぬぬぬ」
あの小さなコルクだまでぬいぐるみを落とすのは無理があるだろう。
エリカはやけくそ気味に何発も放つが当然びくりとも動かない。
「なら次は私が!」
と言ってソフィアがお金を払った。ソフィアはぬいぐるみの横にある、ブレスレットを狙っているみたいだ。
シンプルな白色だがデザインがいい。
「んー、ここです!」
身を乗り出して出来るだけ距離を縮めて玉を放った。玉はブレスレットを入れたケースに当たるが少し動く程度で落ちる気配はない。
「落ちてください!」
とソフィアも全弾ヒットさせるが動くだけだ。……当然イカサマしてるよなぁ。
まずここのコルク小さすぎる。下を固定しているんじゃないかと思うくらい物が後ろに行かない。
「とほほ」
2人とも取れなかったのでショックを受けているようだ。日本人の力見せてやるか。
「次は俺がやる」
と言ってお金を渡して銃をコッキングする。さらにコルクを水魔法で少し濡らしてから詰める。
こうする事で多少威力が上がるだろう。
次に打ち方だが、脇を締めて狙いを合わせる。まずはブレスレットからだ。
ケースの角を撃ち抜いて一発でブレスレットを地面に落とす。
「おぉ、やるね! お兄さん!」
と言ってブレスレットを渡してきた。
「はい、ソフィア」
俺はそれをソフィアに渡した。
「いいんですか!?」
そう言いながらソフィアはパァーと笑顔になった。
「おう、色々迷惑かけたからな」
「ありがとうございます! 大事にしますね!」
そう言って頭を下げてくれると落とした甲斐があるもんだ。
さて次は問題のぬいぐるみだな。どうするかな……
玉を詰めながら悩んでいると店主がニヤッと笑った。
「ウチのぬいぐるみは取れないと評判でね! お嬢ちゃんにプレゼントするつもりだろうが諦めた方がいい!」
チラッとエリカの方を見ると涙目になっていた。
「安心しろ、絶対取ってやるから」
そう言ってまずはぬいぐるみの右手を狙う。次に左手だ。するとぬいぐるみの手はぶらんと後ろに垂れ下がった。
「これで終わりだ!」
残りの二発で足を狙うとぬいぐるみは商品棚から落ちた。
「……おじさんの負けさ」
フッと言って店主はぬいぐるみを渡してくるその表情はどこか清々しい。
「いや、どちらが負けてもおかしくはなかった」
とだけ言って俺はぬいぐるみを受け取る。
「エリカ、これ」
と言ってエリカに渡すとエリカは受け取るかどうか迷っている。プライドの高いエリカのことだ。どうするか迷っているんだろう。
「いっぱい迷惑かけて悪かったな、これを謝罪の気持ちだと思ってくれ!」
と言って渡すと、
「し、仕方ないわね! そこまで言うなら貰ってあげるわ!」
と言って大事そうにぬいぐるみを抱き抱えた。
ふっ、ツンデレめ。
「次もまた寄ってくれ、その時はリベンジさせてもらうよ」
「ああ、勿論だ!」
ガシッと俺達は握手をしてから店を出た。
そしてそんな調子で昼まで遊んでから俺達は学園へと帰るのだった。
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