第39話 アーレス戦
「よっと」
地面に着地して目の前にいるアーレスの思念体を睨みつける。
そしてそれとほぼ同時にアーレスが動いた。
「………」
無言だが槍を構えてこちらへ向けて走ってきた。レオナは力と魔力、精神力はないと言っていた。つまりこいつから魔法攻撃はないと踏んで構わない訳だ。
身体強化の魔法をかけて俺は怯まずアーレスに向けて走り出す。
「うおりゃ!」
右手を握りして殴りかかろうとすると槍の矛先が迫ってきた。
遅いな、どれほどかと思ったが身体強化状態の俺なら避けれるレベルの攻撃だ。
その攻撃をスウェーで避けて殴ろうしたが、左頬が痛い。
バックステップで距離を取ってから左頬を触ると血がついていた。
「……いつのまに」
少なくとも俺は避けたつもりだったがあいつの攻撃は当たっている。傷は浅いが傷の深さの問題ではない。攻撃を見切れていないと言うことが問題なのだ。
普通攻撃されたにしても、やられた瞬間にわかるはずなのだ。それが分からないって事は……
「まさしく神技ってわけか」
さっきレオナが言ってたことを理解した。
「さあ、どうすっかなぁ」
エリカとソフィアの声援が聞こえてくるがそっちに意識が向けられない。
いつ切られるか分からない状態じゃ満足に戦えないぞ……
……ガントレットの力見てみるか。
俺はある程度を取りながら右手に魔力を集中させる。
「食いやがれ! 真空波!」
風属性の魔力を込めた拳を振るうと風が音を立てながらアーレスの方へと向かう。
アーレスは槍を使ってガードしているが、思念体が少しずつ傷ついている。
「風を飛ばすとこうなるのか……」
ゲームではガントレットをあまり使っていなかった為知らなかったがカマイタチを起こせるなんてな。
そんな事を考えているとアーレスが槍でカマイタチを吹き飛ばした。
「………!」
またしても迫ってくるアーレス。
また距離を取るか? ……それじゃあ根本的な解決しないだろう。
またカマイタチを使って攻撃するにしても槍を振るって掻き消されたら意味がない。
「一か八かやってみるか……」
失敗したら腕が飛びそうだが、このガントレットの耐久力を信じるしかない。
アーレスの突きをサイドステップで避けて右手で掴もうとする。
「よし、取っ!?」
掴めたと思った槍が消えて俺の脇腹に槍が刺さった。
「ぐぅ!? 離れろ!」
そのまま槍で抉ろうとしてきたアーレスに真空波を放って引かせる。
……傷は負ったが、カラクリは分かった。アーレスの突きは早すぎるんだ。
俺の目にも止まらぬスピードで攻撃してきているせいか俺は残像を見ているようだ。
「それは分かったけど……」
見えないと攻略しようがないぞ。
早すぎて残像が見えると言うのは分かった。でもそれを対処する手段がない。
「………」
アーレスが今度はゆらゆらと揺れながら走ってきた。
「アイススパイク!」
魔法を放ちながら後ろへ下がる。距離を空けないと話にならない。
すると背中に何かがぶつかった。壁まで追いやられたか……
「おーいリック、技の正体を見破ったお前にご褒美をやろう」
「あん?」
上を見ると暴れているエリカとソフィアを両脇に抱えているレオナの姿があった。
エリカとソフィアは助けに行くっと言っているがそれを止めているのだろう。
「身体強化魔法を使えるんなら目に集中させろ、そしたら奴の動きも見えてくるはずだ」
……反抗しても仕方ない。言われた通りにするか。
魔法を自分にかけるとアーレスが攻撃範囲内まで近づいてきている。
そして魔法をかけたおかげなのかアーレスが槍を構えつく瞬間がさっきと違って見えた。
「これなら!」
と言うが体が思うように動かない。
俺の体がこのスピードに着いていけていないのか。
せめて少しでも急所を外すために体を動かすそして攻撃を受ける事前提でアーレスに魔法を放つ。
「ファイアランス!」
炎の槍がアーレスに直撃した。アーレスもたまらず下がるが、こっちは横腹に二つ穴が空いている。
「どうする? 助けてやろうか?」
レオナがそんな事を言ってくるが答えはノーだ。
「いらねぇよ。今からぶっ倒すから大人しくそこで見てろ」
「ふははは! いいねぇ! アンタ最高だよ!」
レオナの隣では2人がふがふが怒っているがレオナは全く気にしていないようだ。
「次で決めてやる!」
俺はガントレットに魔力を貯めながらアーレスに向けて走り出す。
相手の攻撃が見えるようになったなら、俺の体が動かなくてもどうとでもなる。
「!!!」
アーレスも走ってきた。そしてアーレスの攻撃圏内に入ると槍を突いてきた。
動きは見えてる!
「雷神拳!」
雷の魔力を流し込んだ拳が高速でアーレスのボディに突き刺さる。
雷の速さだ。いくら神でも避けられないだろう。
「っっっ!!!」
その場でうずくまる神の顔面めがけて右手でアッパーを決めに行く。もちろん魔力を込めてある。
「破壊拳!」
純粋な魔力だ。属性を纏っていない純粋な拳がアーレスの顎を捉え当たったアーレスは空へ吹き飛んだ。
そしてさらに右手に魔力を込める。
「これでとどめだ! 爆炎拳!!」
空から落ちてきたアーレスに狙いを定めて炎の拳をぶつける。当たると爆発を起こしアーレスの体は消滅した。
そしてカラン、カラン、と槍だけが地面に落ちた。
「勝ったのか……」
俺がその場で立ち尽くしていると突然何かが後ろから倒れかかってきた。
「いつつつつ!!!」
俺の後ろに何かが乗っているせいで傷口が圧迫されてクソ痛い。
「バカ!」
「何でこんなになるまで戦うんですか!」
俺の上に乗っているのはエリカとソフィアらしい。
「いや、痛いから! 上には乗らないで!」
「心配させた罰よ!」
とエリカが言う。
「いや、マジでダメだって! このままじゃ意識が飛ぶって!」
猛烈に痛い。死にそうだ。
と思っていると急に軽くなった。
「そこまでにしてやりな」
2人を持ち上げているのはレオナのようだ。ついでに回復魔法までかけてくれたみたいで痛みが消えた。
「中々面白い戦いだったよ! そのガントレットに頼ってる部分はあるが度胸もあるし読みもいい! この分だと今年の選抜戦は楽しいことになりそうだね!」
そう言ってくれるのは嬉しいが、素直に喜べない。だってこいつ俺をかもってきたし。
「そうかよ、楽しめたんなら10万ゴールドを見物料として払っていけ!」
「ハハハハッ! アタイは命の恩人だぞ?」
いや、あれはカラクリを理解したご褒美だろうが。
「そりゃあご褒美で助けてもらっただけだ」
「ったく、仕方ないねー。ほらっ! 立ちな!」
と言って無理やり起こされた。
「なんなん……ん?!?!?」
おっぱいに顔面をうずくめられた。
息ができないが柔らかい感触が……
「さっ、これで10万ゴールドはチャラさ。じゃあアタイは帰るからなー」
と言って引き剥がされたと思ったら帰っていてしまった。
「これで……チャラなら……いいかも……」
なんで小さく呟いてしまうと2人からとんでもない気配を感じる。
「私達が心配しているときにそれですか……」
「少しお話が必要なようね……」
ゴゴゴ、と2人からとんでもない気配を感じる。
「ハハハハ、後で話そう! なっ!」
そう言うが2人は止まる気配がない。俺はアーレスの槍を拾い上げて2人から逃げるため出口の方へ走った。
「待てぇ!」
「止まってください!」
「ゆ、ゆるしてぇーーー!」
後ろから飛んでくる魔法を避けながら俺は走りつづけるのだった。
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