第26話 決着!
……さぁ第3ラウンドだ! なんでかっこいい事を思ったまでは良かったがレベルが高すぎて手が出せねぇ。
悔しいけど俺が出て行ったとて逆に足を引っ張るだけだ。
「ふむ、この僕を相手に中々やりますね。貴方のお名前を聞かせてください」
「マーリンだ。マーリン・ライトスそれがアタシの名前だ。アタシからも質問なんだが、貴様はなぜこのダンジョンにきた」
「そこにダンジョンがあったから、とあちらの方々には申した筈ですが?」
「つまらん嘘を吐くな。貴様の目的はこのダンジョンにあった宝か?」
「嘘ではありません⭐︎こちらの宝を頂きに来たと言うのは事実ですがね⭐︎」
そう言うとクラウンは胸のポケットから何かを取り出した。
それと共にハトのような鳥が出てくるが注目するべきはそっちじゃない。
とてつもない魔力を持った黒い球。それがこのダンジョンに眠っていた宝だろう。
……あれはもしかして、魔王の魔力か!?
魔王の封印を解くのに必要なアイテムだ。
「マーリン先生! それを壊せ!」
「あ、あぁ!」
少し惚けた返事が返ってきたがマーリンは黒い球へ向けて炎を放った。
が、マーリンが放った炎は全て黒い球へと吸収されていった。
「そのような攻撃効くわけがないでしょう! それよりもそこの人間、この石のこともしっているのか」
クラウンがこちらを睨んできた。
「ああ、魔王の魔力。その一部だろ?」
「なに!?」
「えっ!?」
横では2人が驚いている。
マーリンはクラウンから視線を外していないが少し驚いたような表情をうかべた。
「貴様どこまで! ……まあいいでしょう⭐︎今回はこちらの分が悪いようですしね⭐︎」
そう言ってチラリとマーリンの方を見た。
「逃すと思うか?」
マーリンはそれに応えるように言葉を放った。
「いえ、今回はこれでお開きです⭐︎それでは紳士、淑女の皆様! またの会える日を楽しみにしております!」
ボフッと紫色の煙が出現したかと思うとそこにクラウンの姿は無くなっていた。
「……逃げる算段はつけていたか」
マーリンは忌々しそうに呟いた。
「いなくなったんですか?」
ソフィアは恐る恐るといった様子で口を開いた。
「ああ、おそらくな」
俺はその言葉に頷く。
するとヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「リック!」
次は突然ヒーデリックが大きな声を出した。
「お、おう」
俺は思わず身構えてしまう。
すると次の瞬間ガバッと抱きしめられた。
「君が無事で本当によかった。友を失ってしまったかと思った」
「え、は? と、友? お前が? 俺と?」
衝撃のあまり言葉に出てしまった。ここにくるまではあそこまで毛嫌いされていたのに。
「当たり前だろ! 君と僕は共に死線を乗り越えた仲じゃないか!」
もう一回ガシッと抱かれた。
「……そうだな! なんなら今から全員で打ち上げでもいくか!」
といった瞬間に拳骨を落とされた。
「いてぇ!! なにすんだよ!」
ヒーデリックからの拘束が解けたので勢いよく振り返るとマーリンがいた。
「調子に乗るな、馬鹿者!」
「体罰反対だぞ! マーリン先生!」
「体罰ではない。愛の鞭だ。……それよりリック、貴様生き返ったのか?」
物はいいようだな。……なんて答えればいいんだろう。
素直に生き返りました! なんて言ったら質問攻めされそうだし……
「元々大した怪我じゃッ!」
嘘を吐こうとした瞬間に何かが横を通った。
マーリンの拳だ。それも魔法と魔力で強化していてとても早い。目で追えないレベルだ。
「次の鞭は少し愛が重めだぞ?」
なんて脅迫だ。こいつ本当に教師かよ。
仕方ない。夢のような空間で男と会ったことだけ話すか……
「実は……」
それから俺が転生した事は丸々カットして夢で出会った男の話だけをした。リザレクをかけて貰っていたことも話した。
そいつが何者か、とか何故俺にそんな魔法を掛けたのかとか色々聞かれたがわからないの一点張りで通しておいた。
「それじゃあダンジョンの制覇を祝って乾杯!!」
ところ変わって今俺達はダンジョン近くの街で祝杯を上げている。費用はマーリンが出してくれた。
「かんぱーい!」
全員でジョッキを合わせる。マーリンのジョッキには酒が入っているが俺達のジョッキには入っていない。ただのオレンジジュースだ。
「どの料理も美味いなぁ!」
ここの料理めちゃウマだ。食堂のご飯も美味いが正直こっちの方が美味しい。
「中々いけるだろ?」
マーリンが得意げな表情をしている。実はこの店がいいと勧めてくれたのはマーリンだ。
「ああ! 特にこの肉! 脂身が舌の上で甘く蕩けるぜぇ」
しかし、マーリンがこんな店を知っているのは意外だ。ご飯とか食えたらいいと思ってそうなのに。
「敬語を使わんか! 馬鹿者! と言いたいところだが今日は無礼講だ。好きなだけ食え! ガハハハ!!」
ん? もしかしてもう酔ってるのか? まあいいか好きなもの食べれるし。
「よっ! 流石マーリン先生、太っ腹! ついでにこの魚も食べてみたいな……なんて」
チラッとマーリンを横目で見る。
「現金な奴め! まあいい! 好きなだけ頼め!」
そのままグビグビと酒を飲みほした。
……めちゃくちゃ扱いやすいやん。いつも酒飲んでてくれないかな。
なんて思っていると急に肩を掴まれた。
「僕は、僕は! リック! 君が生きていて、生きていて!」
なんだなんだ!? なんでヒーデリックは顔面をくしゃくしゃにして泣いてるんだよ。
酒は飲んでないはずだろ!
「聞いているのかい!」
「お、おう」
ドンっと机を叩かれた。
確認のためヒーデリックの飲み物を飲んでみるが、普通のジュースだ。
まさか酒屋の空気に当てられて酔ったのか!?
それからもヒーデリックのだる絡みは続きいつのまにか、
「僕達が出会った時はお互いに敵視していたが……」
初めて出会った時の話になっていた。
「どうしたリック! これを食え!」
すると突然マーリンから急に何かを口に入れられた。
さっき欲しいと言った魚だ。
「どうだ!? 美味いか!?」
「はい、美味しいです」
マーリンのあまりの気迫に頷く。いや実際に美味しいんだけど敬語になってしまった。
「そうか、美味しいか。私もな、男ができればあーんをしてやりたかったのだが、その夢が、その夢が」
プルプルと震えるマーリン。なんか見てはいけない闇を見ている気分だ。
マーリンレベルの魔法使いになると男も寄り付かないのだろう。……なんで冷静に考えている場合じゃないか。
「リック君! 私の方も見てください!」
次はソフィアに手を引っ張られた。
……まさか。
「お、おう」
「貴方は私のペットなんですから私を楽しませてください!」
お前も空気で酔っぱらったのか!?
「い、いやそれは……」
「そうですね、あの男の人と勝負をしてください!」
ソフィアが指を指したのは強面なスキンヘッドだ。冒険者か何かだろうか? それにしては迫力ありすぎだろ。
「いや、無理、無理です!」
「はやくいってください!」
ギュギュッと首輪が締まる。
「分かった、分かりました!」
俺は諦めて強面の男の方へ向かう。
「アタシの教え子なんだそんなハゲやってやれ!」
「リック、君の勇姿を僕に、僕に見せてくれ!」
2人からの声援も聞こえる。全く嬉しくないがな!
「あ、あのー」
「なんじゃい」
声をかけたら凄まれた。
「ちょっと、勝負していただけないでしょうか?」
勝負だったらなんでもいいんだ。ここはトランプとかで決めよう。
「カチコミだ! こいつを袋にしろ!」
するとスキンヘッドは立ち上がり周りに聞こえるように声を出した。
ヤーサンかな?
すると客の半分以上が立ち上がった。
「……フッ、ごめんなーい!!」
俺は即座にその場から逃げ出した。
「待てコラー!」
「殺してやる!」
「止まれ!」
などの熱い熱いエールを貰いながら俺は夜の街を駆け回った。
そして俺は二度とこのメンバーで打ち上げなんかしないと心に誓うのだった。
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