国賊

　日本中の武家を北条時頼が束ねていた時代、鎌倉の西には地獄があった。
　天災から逃れ、疫病に悩まされ、死骸が遺棄され、蔑まされた非人が集う地獄谷。

　幕府の頭脳で本の虫、金沢（かねさわ）流北条実時（さねとき）が招聘したのは、真言宗西大寺派の僧侶・良観房忍性（りょうかんぼうにんしょう）。

「無間地獄を極楽浄土にしてみせましょう」

　文殊菩薩の生まれ変わりだと、非人を救済する忍性。それを支える幕府の重鎮、実時。
　そこへ立ちはだかる名越（なごえ）流北条家、そして法華僧・日蓮。

「真言は亡国の悪法、律宗は国賊の妄説！」

　忍性は地獄を極楽に変えられるのか。
　日蓮との闘いの行く末は。

　文中に差別用語や差別的表現が含まれますが、差別を助長する意図は一切ございません。
　特定の宗教宗派を支持、非難する意図も一切ございません。