第3話 冒険者

 自由都市アーバン




「すみません、聞いているのですか? ・・・寝てる? お客さん?」




 そこは冒険者ギルド。


 新入者受付カウンター。その場で、一人の青年が覚醒する。




「んあっ!? あれ? ここはどこ?」




 受付嬢は、少し困った顔をして




「何も言ってるですか。ここは自由都市アーバン、冒険者ギルドの受付です」




 黒髪をポニーテールにした、フリルのカチューシャをした美少女。


 愛らしい瞳。小首を傾げ、不思議そうに青年を見た。




「あ、ああそうだったね。ウンウン。で?  なんだったっけ」




「そうです。名前を教えてください、冒険者さん」




 紙とペンを渡される。コピー用紙みたいに真っ白な紙に、名前を書く欄、今まで何をしていたかなどの履歴書のようなものを簡単に書く欄があり、どれも日本語である。




「ああ、名前。ミウラ・ヨシヒトっと。これでいい?」




 ニッコリと微笑む受付嬢は、「はい」と頷いて、


「次は、こっちですね」




 と、年齢と前職を訪ねてきた。




「歳は20かな。職業というか、現役大学生。と」




 再び、受付嬢は不思議そうな顔で


「現役大学生・・・ですか。研究職でしょうか」




 なんて小声で呟いている。


「ああ、そんなもんだ」


「でしたら、なんで冒険者に?」




「気まぐれだね」




「そうですかぁ」




 ある程度、興味を失ったような受付嬢は、事務的にその紙を何かの機会に取り込む。


「それは?」


「スキャナですよ。データとして保存します。あ、ここに手をおいてもらえますか?」




 そこにあったのは、指紋認証をする機会のようなもの。それの手全体。




「これは、オーラを測るものです。そして、このオーラとデータをリンクさせて、神様の監視のもとで、リアルタイムで全てを記録することができます」




「怖。プライバシーとかやばいじゃん」




「問題ないですよ。このデータはビックデータ管理されてまして、必要になるときにしか参照できません。世界全部の冒険者様のデータを宇宙の巨大サーバで管理しておりまして、第三者がそのデータを見ることはできません。


 いいですか。今の時代にこのロストテクノロジーに匹敵するプログラマーはいませんよ。


 結局、小さな商店のデータを盗むので精一杯。お金を記録しているギルドカードのマイクロチップの防御システムを超えることは誰にもできませんし、もしもいるとしたら、この世界で最も最強で強い人ですね」




 と、ペラペラと喋る受付嬢だが、


 ここは、想像していたい世界とは違うようだと直感した。




「ロストテクノロジーとはなんだ?」


「研究者さんなのに、それも知らないのですか。どんな研究されてるのでしょう。


 まぁ、簡単に説明しますと、神に最も近づいた技術の果て。ですね。


 何千年も昔、神様と人間の国がありまして、人間は神様を殺すために日々研究を重ねていたそうです。


 そして、神様の力の一端を解析することに成功したんです。それが、宇宙にあると言われている巨大コンピュータ。そして、その他諸々とずっと残っている技術全てがロストテクノロジーです。


 今の人間には中身がなんなのかもあまり理解できてませんし、


 実際宇宙がどこにあるかなんてわかりません。


 神の世界ですか?」




 うーんと考え込む受付嬢。


 なんだ? 結局、この世界の人間はこの管理されたテクノロジーを利用しているだけってことか。 




「これも聖書の受け売りで、あまりよくわかりません。


 これは全て神様の力なんです。きっと。


 欲深い人間が、人間が作ったと言いふらしている神様の力にすぎないのです。


 新しい冒険者さんも、神様を崇める怪しい教会には近づかないほうがいいですよ」


「あ、ああ。気をつけるよ」




 結局何もわからなかった。


 これに登録しても、この世界では問題ないのだろうか。


 本当に、見ている側の人間がいないとも限らない。


 改竄できるのかもしれない。




「図書館とかないか? この近くに。


 色々ときになることがあるんだが」




 説明書のようなものはないのか。


 この世界は、本当に安全なのか。管理者側がいるとすれば、神様よりも厄介だぞ。


 この世界では、ギルドカードなるものが全てを決済するとして、管理者はお金を不正に大量にゲットできるということだ。


 クレジット、電子マネーの残高を不正にたくさんにすることだってできるし、


 見知らぬ人間に借金をつけることだってできる。




 可愛い女の子に、借金をつけて身売りさせるなんてことだってありえる。


 ……いや、お金がたくさんあればそんな回りくどいことはしなくていいのか。




 素晴らしい。


 これは管理者にならなくては。




「そうですね。図書館は、このギルド会館の正面にありますね。人はあまりいませんが」


「そうなのか?」




 大きく頷く。


「そうですよ。冒険者さんの地域はなかったんですか? 電子書籍は」




 衝撃を受ける。


 電子書籍まであるのか




「ロストテクノロジーの流用ですが。アップしたり削除したりはできますよ。でも、どういう仕組みかはわかりませんね。これは沢山の研究者連合が頑張っていましたが、つい数年前に無理だと諦めて終わりましたし」




 ふふふと笑う受付嬢。




「ひとつ疑問なんだが、聞いていいか?


 受付嬢さん、すごく物知りだよね。他にも色々教えて欲しいことがあるんだけど」




 ギョッと目を見開く。


 そして、ゆっくりと話し始めた


「別に、物知りではないですよ。聖書を読んでいただけですし、それに、一般常識なところも多いです」




 そうか。


 この世界は、消費者の集まりか。


 電子ネットワークサービスを利用して、それが普通と、世界だと、当然だと思っているのか。


 中身はあまり知らなくていいって、そんな世界なのだろう。




「あ、できましたよ。ギルドカード。今貯金はゼロですね。


 登録料として10,000gです。持ち合わせがないなら、カードで支払っときますか? 借金になりますが」




 ポケットを探る。


 腰にポーチがある。いや、この中にはあのパンフレットしかなかった。


 が、先ほどよりも少しだけ重量を感じた。




 開くと、いくつかの硬貨とお札があった。


 お札の方は、一万円と同じくらいの大きさだったので、それを取り出して渡した。




「おー、これは新札じゃないですか。まぁ、こんな世の中、現金を持っている人なんで商人くらいしかいないですよ。あ、現金は世界共通ですからね、都市外での取引とか、電子決済できませんしね」




「それは、別にどうでもいい。使えるなら、それでいいかな」




「はい。ありがとうございます。これがカードですね」




 そういって、手渡してくれる。




「再発行には、結構な手数料が入りますので注意してくださいね」




 そのカードには、ステータスという欄があった。




「あ、言い忘れてました。あなたのランクはDからスタートです。


 平均的ですね。


 ランクというのは、ステータスの合計値で決まります。神様に監視されているので、レベルアップしてもすぐにカードに更新されますよ」






ーーーーーー


ミウラ・ヨシヒト(20)


rank 1


HP F20  


STR H8


DEX F24


VIT G16


INT F22


AGI F27


MND B 79


LUK B 79


スキル:がwれh、;glrはgl、魔法適性


ーーーーーー

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