第28話 始まる
宝箱開封の儀。
それは無慈悲にも誰にも需要のないものである。
その31個の宝箱の中身をドラケンがせっせと取り出す図は、誰にとっても要らない構図である。
31個のアイテムをそれぞれ並べるならば。
暗黒の兜【呪】
暗黒のグローブ【呪】
暗黒のグリーヴ【呪】
漆黒の光輝剣
ヴァイアグラ×7
漆黒の短剣
操作の杖
覇王の鎧
王者のマント
王者の杖
破邪の槍
破魔のレンズ
退魔の鎧
退魔の剣
アーカイヴ閲覧権×5
簡易鑑定書×5
【七大罪】傲慢の聖槌
と、こんな感じである。
レアリティをつけるとすれば、いくつも重複しているのがレアくらいで、そのほかがSR程度だろう。最後の【七大罪】がSSRに値するだろうと考えることができる。
これはヨシヒトの脳内変換レアリティである。
実際の価値変換表的にもそれらはほぼ合っているのだが、実は呪いの装備は価値が不安定である。
これはヨシヒトが知る由もないのだが、不死の効果を持たせる暗黒の騎士装備一式は途轍もない価値を持つ。
「ヨシヒトよ。この槌は貰ってもいいかの。予備の武器としたいのじゃが」
「勝手にしろ。俺がそんなものを振り回せると思うのか?」
「そうだな」
「失礼なやつだな、老害」
ヨシヒトは【七大罪】以外のアイテムを全てアイテムボックスに収納した。
「もう少し進むか。ここにはもう用はないだろう」
宝箱の山だったこの階層を後にして、次の階層へと進む二人。
実際、ヨシヒトにとってダンジョン攻略の難易度はとても低い。
ドラケンが隣についている、ということもあるし、そもそもがアイテムボックスというスキルが一番大きい。
アイテムボックスからアイテムを選択し、その具現化の方法を少し工夫することで相手を殺すことだって可能なのだ。
ヨシヒトの通常は漆黒の流線矢を選択し、それを的に射すように「射出」というか具現化させる事によってアイテムがある限りマシンガンのように連射までできる。
以前のドラゴンを殺した時も同じような戦闘方法をしていた。
これが意外にもハマる。この攻撃を避けたモンスターはいない。
基本的に中身をぶちまけて即死である。
それ以外にもアイテムで押しつぶすという方法もあるし、少し前まで上から鋭利な刃物を落とすこともしていた。
空を飛ぶモンスターには有効だし、動きの遅いモンスターにも効果的だったが、300層の何処かで暗い部屋があり、狭い部屋があり、そこで役に立たなかったことからいまのスタイルに落ち着いた。
「しかし、少し休んだほうがいいんじゃないのかの? あんまり寝てないんじゃろ」
すでに時間だけが過ぎ去る。
何十日も何百日も経った気がする。
もう生き返らせることができないんじゃないかと、そんな気もし始めていた。
だが、諦めるわけにもいかない。
いや、諦めるという概念はすでに持ち合わせていない。
見つからないというストレスと、早く見つけたいという願望の板挟みで、焦りがヨシヒトを追い詰めているのだ。
そう言いながらもヨシヒトとドラケン一行は598階層にたどり着くのだ。
「ボス階層かの」
それは一風変わった趣をした階層である。
一見、神殿のようにも見える。
しかし、何重にも重なった建物は城のようにも見る事が出来るだろう。
そしてその階層は一本道でその城にずっと続く道である。
「これが最後だとすれば、これが最後のチャンスだという事だな。
これでいよいよ俺の生死も決まるということか」
ここでカノンを生き返らせる方法が見つかる、アイテムが見つからなければ死ぬ。そう決めたが、しかし見つかる自信が一向にない。
しかし、このまま生きていたって人殺しの犯罪者であるのは間違いない。
ドラケンがいる事によって少しだけその自覚が小さくなっていったのは認める。
この二年以上の月日を一緒に過ごしていた事によって少しだけ心にゆとりが持てたのはそうだ。
だが、これだけははっきりとさせておくのだ。
見つからなければ自殺か、ドラケンに殺してもらうか。
そうするしかないのだ。
カノンにはそうやって断罪されなければならないのだ。
責任は取らなければならないのだ。
そうやって、その一本道を覚悟を決めて進んだ。
599階層
その城に後一歩でたどり着くという瞬間に、
二人は光に包まれて消えた。
『VOS 起動
認証 ーーーーーー許可
ヴァルヴコンピューティングシステム起動』
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