第16話 ソース
ミリーナの説明により、伯爵はカノンを諦めることになった。
それは簡単な話だ。カノンは、ここらでは有名な「疫病神」それにとても頭が悪いことが先歩きしているかわいそうな人であること。
それに、ただ居ることはできるが、それ以上はカノンはできないこと。家事も、料理も、その他全てにおいて、無能をはっきする。
最低限、ダンジョン探索という部門においてだけ、一般的だがそれでも方向音痴という最悪な特性を発揮するために、パーティメンバーには推薦できないというか、誰も一緒に組んでもらえない。
「そうなのか。結婚パーティもできないとなれば、ほかの家族に自慢できないのか。こんなに、顔はいいのに。それ以外が致命的だとは」
カノンには悪いが、後々伯爵家に迷惑がかかることを考えて、諦めざるを得なかった。
玉の輿、出世ルートが意味をなさない。カノンの日頃の行動は、人間としての人格は。とてもひどい。同情をできないくらいに、最悪すぎた。
「まぁ、俺はお前のことを知らないが、可哀相な人だということはわかるぞ」
ミリーナを筆頭に、カノンを知って居る人間が一番、カノンが危険だということを叫んで居る。
結局は、カノンとはどんな人間なのか。
一周回って気にならなくもないが。
「ところで、あのエルフはどこに行ったんだ?」
ギルドの中で、伯爵に絡まれていたエルフとドワーフの冒険者が見当たらないことに気がつく。
それを、ミリーナに尋ねた。
「ああ、彼らならカノンに気を取られたときに、ダンジョンへ向かいましたよ」
「またこいつか」
少し、ダンジョンのことを聞こうと思っただけに、少しだけ残念である。しかし、それでも逆に嬉しい誤算でもある。
今日はハイエナができないかと思ったが、ダンジョンアタックをして居るのであれば、昨日ほど多くはないにしても、たくさんのアイテムをハイエナできる可能性があるのだ。
「にしても、ひどいよミリーナもほかも。せっかくお金がお金を背負ってやってきたのに」
「伯爵をそう表現することが一番危険な証拠だ」
ギルドマスターがいった。いつの間にか、ギルドマスターがこの会話に参加していたのだった。
「昨日の買取履歴を見ていた。ミウラ君。君は昨日どこまで行ったのかね?」
少しだけ真面目な表情をするギルドマスターに
「昨日は、20層を少し超えたくらいですね」
そう答えた。おそらくだが、あれはそれほど低くはないと思って居る。
もしかして50を超えているかもしれない。
あんなに段差のないダンジョンを昨日ほどの時間歩き続けていれば、流石にその階層では少し低すぎる気がしなくもない。
「まぁ、そのくらいか」
一人で納得する。
「この街に来る前に、どこかのダンジョンに行ったことはあるかい?」
「ないと思いますよ? アーバンに来る前にもギルドに登録したことないようだったので、ダンジョンには入れなかったと思いますし」
ミリーナがフォローしてくれる。
「そうか。でもな、一角狼の変異種は、50階層以降にしか出現しないんだ」
昨日の選択は間違えたか? 一角狼は低層のモンスターだとばかり思っていたが。
「そうですか? そこらへんにも色の違う狼はいましたし」
「それは本当か? そうだとすればーーーーーーダンジョンの異変というのは、すぐそこまで来ていたのか」
あ、やばい。適当なことを言ったら、ギルドマスターの余計な情報と混じってえらいことになった気がするぞ。
そういえば、少し聞こえた話にも、凄腕のエルフとドワーフが一度にアーバンにきたのには、ダンジョンの異変が問題があるとかないとか。
それに、カバディ伯爵がきたのも、異変を調査するためだったか?
「あ、どうだったかなぁ。もしかすればそこまで行ったかもしれませんねぇ」
なんて適当にお茶を濁してみれば
「50層以降なんて、深層冒険者以上の実力者だぞ!?
昨日今日登録したばかりの若造が、そんなところに行けるわけもないだろう。
情報を見れば、君は人間族で年齢も見た目通りではないか」
管理者でないにせよ、なぜか買取情報を持っていたり、ギルド登録情報を知っていたり。職権乱用か?
情報開示する前にも、結構知られているじゃないか。
スカスカかこの世界の情報管理技術。
なんて、疑い深くギルドマスターを見ていると、ミリーナがいう。
「ごめんなさい。昨日ミウラさんの事見てたらギルドマスターに盗み見されたんです」
「プライバシーの侵害ですよ。これ以上知ってても、俺に干渉することも、話しかけることもしないでくださいね。それを他人に話すこともです。
それができないのであれば、法的に、いえ。神に断罪してもらうことになります」
昨日見た情報のうちの一つ。
管理情報の私的利用は、情報保護法に抵触し、運営に報告した瞬間に行くつかの罰則事項が適応されることになる。
ギルドカードには、報告ボタンがあった。
「わかった。これ以上は聞かないことにしよう。しかし、もし異変と何か関係があれば、ギルドマスターの立場からいくつか質問をさせてもらうからな」
そう言い残し、彼はさっていく。
「悪い人ではないんです。少しだけ正義感が強いというか、そんな人なんです」
ミリーナは本当にいいやつだ。一緒に痛いくらいに。
カノンと立場が変わってほしい。
カノンじゃなくて、ミリーナにつきまとわれたい。
「ところで、ヨシヒトさん。今日もダンジョンへ行くんでしょ?
私も行きますからね」
「来なくていいが。迷子になっても探さないからな」
「大丈夫です。少し後をついてきますから。深層冒険者の戦いをこの目で見るだけですから」
ぬっと、ギルドマスターが聞き耳を立てていることに気がつく。そして彼は「やはり深層冒険者じゃないか」
と呟いた。
ソースがカノンだということを理解してほしい。
「無理しないようにしてくださいね、ミウラさん。体は一つしかないんですから。カノンが危険でも、ミウラさんが危なければ見捨てて構いませんからね」
最後まで、ミリーナはカノンに厳しいようだ。
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