第4話 ハイエナ
この世界では、コンピュータ管理が一般的。
それは現代社会に似ているが、一般常識もその他の環境も違う。
結局、この世界は異世界なのだ。
それ以上でも以下でもない。
「ふう。次はダンジョンにでも行ってみるか」
図書館は、あまり収穫はなかった。先ほどの受付嬢がいうように、電子書籍が主流であるために紙の本は異様に少ない。
はるか昔の文献までもが電子化されているので、紛失はないものの、冒険者ランクが高くないとアクセス権がないとか、そんな話をされて追い出されたのが、今ほど。
「最初は、ダンジョンに行って、ランク上げしないといけないのか」
と言いつつ、ランクは、自分のステータスが元になっているそうだ。
であれば、レベルアップというか、少なくともモンスターとか生物を殺さなければいけないのだろう。
スキルは、長い目で見て使えそうなものばかり。
すぐに有用性を見出せるものではない。
アイテムボックス。使い勝手はいいのだろうが、入れるものがなければ無用の長物。
それに生成。異世界に来て、スキルを得たというが、どう使えばいいのかもわからない。
思考で考えたらとか、呪文を唱えるとか、そんなものであればいいが、とっくに試した。
それでなお、反応がないのだから、問題にしているのだ。
「まぁ、行ってみるのが先決か」
街を歩く。
ダンジョンの入り口は、巨大な門がある。門は街にどこからでも見える。
よって、そっちに向いて歩けば着くのだ。
「結構でかいのな」
見上げるほど大きいその門。
地下へと続くそのダンジョンの大穴が目の前にある。
入り口の手前に、警備員のような人が二人立っている。
あまり出入りは少ないようだった。
「あのー」
恐る恐ると話しかける。
「ん? なんだ?」
「いつもこんなに少ないのか」
「ん? この街のダンジョンは初めてか? いやぁな、今日は大手パーティが三組も鉢合わせてダンジョンに特攻して行ったのよ。
冒険者の大半は、モンスターが狩り尽くされたら仕事ができないからな、今日は自重しているのさ」
「へぇ。別に、入れないわけではないんでしょ。入っていいですか?」
「ああ、問題ねぇよ。一応ギルドカードを見せてもらうよ」
この街、ダンジョンでも神の力は働いているようで、このカードには倒したモンスターや、その討伐回数、ギルドのクエスト成功回数なんてものも記録される。
犯罪なんてのも。
ダンジョン一階層。
何もない。いや、何もないわけではない。
いろんなモンスターが、四散している。
ダンジョンモンスターはアイテムがドロップし、肉体は消えるらしいが、つまり肉体が残っているという事は、まだ生きているのではないのか。
経験値をハイエナゲットできるわけだ。
ダメだったら知らなかったってことにして、それでいいだろ。
「ッて言ってもな、素手で攻撃なんてしたくないし」
図書館から出て直行したために、手元には何もない。
腰のポーチには最低限のお金と、パンフレットのみ。
「まぁ、仕方ない。でもこんな場面には遭遇しないかもしれない。美味しいところは持って行くのがいいのさ」
四散している肉体。
こびりつく血を辿れば、たくさんの四足歩行のモンスターが瀕死になって、うずくまっている。
いくつか死んで、ドロップアイテムがあるが、それすらも手をつけていないのだから、
「王道の物語とかは、所有権が如何の斯うのいうだろうけど、知らないね。図書館にもルールブックがあって、ダンジョンのアイテムは拾ったものが所有者って書いてあったしね」
それが本当か嘘か知らないが、しかし、「知らなかった」とことにして、「言われたら返す」で謝ればいいだろう。
それ以上は、知らない。
殺されたらそれで終わり。
別に、生きていることに関心はないのだから、楽にいかせてもらう。
「だから、この尖っている角をもらってもいいわけだな」
ドロップアイテム。それは【一角狼のツノ】。レアリティは結構高いそうだが、確認するのが面倒だ。
「で、これで他の瀕死の狼を殺せばいいわけだ」
グロいなんて、あまり考えなかった。地球でも、ネットに上がっているグロ画像を見て、「ヘェ」とか、そんなことを言っているだけ。あまり関心もない。
まぁ流石に自分で殺すとなると、手に変な感覚が残るが、しかし、死ぬとパァッと光が弾け飛ぶ。
そして、ドロップアイテムが残るわけだ。
経験値も入ってくる。
「結構うまいな」
一気にレベルが、ランクが上がった。
カードを確認して、二つ上がったのを見た。
「この狼全てで、二つか」
30匹ほどいた気がするが
「やっぱり、ハイエナ寄生レベリングはあまり経験値が入ってこないのがネックだな。まぁ、一人で危険に挑む方がおかしいけど」
ところで、その強いパーティはどこまで言ったのだろうか。
行けるところまで行って、瀕死のモンスターにとどめを刺していこうと思うが、どこかで鉢合わせるのが一番危険そうだ。
「強いというくらいだから、この階層にいる事は稀だろうね」
帰ったらダンジョンのどこまでが一般的な階層なのかを教えてもらわないといけない。
結局知識は偏りすぎているので、この世界の常識を知らない。
「まぁ、レベルが10になるまでは、ここでハイエナしていよう」
ドロップアイテム。そのままにして行くのは少し寂しい。
こんな時のためのアイテムボックスだ。どうにかして使用したいが、ステータス欄に書いてある文字は、文字化けしていてあまりわからない。どっちがアイテムボックスなのか。
武器のようにしていた狼のツノに意識を集中してみる。
何も反応がない。
「どうやってアイテムボックスを使うのか」
散らばっている地面のドロップアイテムを見ながら、四次元ポケットのようなものをイメージしながら入れと念じる。
瞬間、その場の全てが消失する。
「!?」
「これはアイテムボックスが起動したという事でいいのか」
次に、ツノを持っていない方の手に集中して、なんか出ろと念じる。
すると、頭の中に、収納したアイテムが一覧として表示される。
【何を排出しますか?】
おお、これば便利だな。
何も出さないが。
ツノを強く握りして、次目的地に急ごう。
まっすぐ進めば、いろんな分かれ道があるが、地面にはたくさんの血痕が残っているので、それを追いかければいいのだ。
「ハイエナ作戦だな」
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