第27話:高梨の高梨たる高梨なところがとっても高梨で大変です
かぽーん。
間接照明によって浴室全体が薄暗く照らされた中、僕は本日二回目のお風呂に入っていた。
あれから僕はなんとか小日向さんのお婆ちゃんの家まで無事辿り着き、出迎えてくれたお婆さんになんとかおしっこを我慢しきったあんず先輩を任せると、しばらく玄関にぶっ倒れていた。
疲れた。めっちゃ疲れた。
腕が痺れて動かせない上に、足はもう鉄の下駄でも履いているのかってぐらい重い。
昼間は昼間で海水浴で普段使わない体力を消耗したし、今日はこのままここで寝てやろうかとさえ思った。
が、お婆さんが小日向さんを叱責する声が居間からここまで聞こえてきて、さすがに寝れそうにない。
それにしばらくすると多少体力が回復したので、とりあえず客室に移動しようとのそのそ廊下を歩いていたら、僕に気付いたお婆さんが「お風呂を入れなおしたので是非お入りなさってくださいな」と言ってきた。
かくして本日二度目のお風呂というわけである。
まぁ汗もかいたし、疲れを癒すにはうってつけだしね。
それにしてもさっきは本当に驚いた。
草むらで大きな音を立てた何か、の事じゃない。
あんず先輩がいきなりあんな話をしてきたことだ。
そりゃあ僕はあんず先輩が好きだ。大好きだ。
出来れば恋人になりたいし、恋人になったらやれることもやりたいなとは思っている。
だけど先輩はそっち方面にはとんと疎い。
そもそも自分が男の子を虜にしてしまう要素てんこ盛りなことすら自覚していない。
だからしばらくはじっくりと、少しずつ僕をそんな風に見てもらえるようになればいいなと思っていた。
それがいきなり先輩の方から距離を詰めてくるんだもん。
焦った。
焦りまくった。
それで慌ててお漏らしネタに走ったのは自分でもどうかと思うけれど、とにかくあの時はなんとか先輩の言葉を遮るのに必死だったんだ。
だってさ、こういうことはあんな形ではっきりさせちゃいけないんだよ。
ちゃんと自分の口で、先輩の目を見て、しっかりと伝えなきゃ。
「でもなー、僕の方も心の準備ってのがあってー」
正直なところ、僕があんず先輩に告白するのなんてもっと先のことだと思ってた。
早くても今年のクリスマスあたりだと油断してたので、今のところ心の準備も出来てなければ、告白プランに関してはまったくのアイハブノーアイデア状態だ。
相談したくても出来そうな人は身近にいないしなぁ。
羽後先輩はライバルだから論外だし、盃位生徒会長は「馬鹿なの? そんなことやってる暇があったら勉強しなさいよっ! 学生の本分は勉強よっ!」って言われそうだし、あんず先輩のお兄さんに至ってはリングで制裁されそうだし。
となると残りは小日向さん? ダメダメ、絶対面白がって変なプランを押し付けるに決まってる。
「んー、なんとか自分で考えないとなー」
ブクブクブクと湯船の中に口をつけて息を吐き出しながら、何か良いアイデアがないかと頭を捻る。
と、ふと脱衣場への扉に人影があるのに気が付いた。
お婆さんが替えの浴衣を持ってきてくれたのだろうか。なんだか悪いなぁ……と思っていたら突然扉が開いて。
「ごめんねっ! 高梨君!」
いきなり一糸纏わない、すっぽんぽん姿のあんず先輩が飛び込んできたっ!
「あ、あんず先輩!?」
「ごめん、高梨君! ちょっとそこどいてー!」
驚いている暇なく、あんず先輩がジャンプして湯船に飛び込んでくる。
僕は慌てて湯船の中で横っ飛びしてあんず先輩のダイブを回避。
でも、先輩が巻き起こした水しぶきをもろに食らってしまい、ごほごほっと噎せ返った。
「ああっ! ごめんね、高梨君!」
「い、いえ大丈夫です……ってか、せ、せ、先輩! ここ、男湯ですよ!」
「分かってるよぅ。でもあんなことがあったでひとりでお風呂なんて怖くて入れないんだもん」
「でもだからって男湯に入ってこなくてもいいじゃないですかーっ!」
見えちゃった。
見えちゃったぞ!
あんず先輩の生おっぱいがはっきりと! 薄いピンク色の頂点に鎮座するぽっちまでくっきりと!
いやそれどころかもっと大切なところまで見えてしまって……どうしよう、高梨の高梨たる高梨なところがとっても高梨でまじヤバいです、今!!
「だけど汗いっぱいかいちゃったし……あ、ゴメン、高梨君!」
「何ですか今度は?」
「あんず、おまた洗わずに湯船に入っちゃった」
「やめて、おまた言わないで」
「でも大丈夫だから! さっきオシッコした後にちゃんと拭いてきれいだからねっ!」
そんな心配してませんってば。てか、このままでは僕の方こそ湯船の中でとんだ粗相をしてしまいそうですっ!
「あ、あの、だったら僕もう上がりますんで!」
「だからオシッコで汚れてないってば―」
「いや、そういう意味じゃなくて……うわっ!」
湯船から出ようとする僕に、あんず先輩があろうことか抱きついてきた。
ああ、ぽっちが! ふにゃんとする塊の中にも硬さを感じるぽっちが僕の背中を刺激してくるーっ!
「ううっ。だからひとりでお風呂は怖いって言ってるじゃんー。高梨君も一緒に入ってよー」
「ええーっ!? でも、さすがにそれはマズくないですか!?」
「大丈夫だよ。カコちゃんはまだまだ気を失ったままだし、朝陽ちゃんはお婆ちゃんに居間でお説教喰らってるしー」
「で、でも……」
「あんずと一緒にお風呂は嫌だった、高梨君?」
「そ、そんなことはないですけど……」
いや、本当はすごく嬉しいですよ!
出来ることなら僕もお兄さんの真似してあんず先輩のおっぱいを持ちあげてみたいですよ?
でも、そんなことしたらそれこそ爆発してしまうーっ!
そう考えたらお兄さん、凄いな。こんな状況を何度も経験しているなんて。さすがは世界チャンピオンだ、とんでもない鬼メンタル!
「だったらその……分かりました。一緒にお風呂、しましょう」
「わーい! 嬉しいなー! あ、そうだ、高梨君、背中を洗ってあげるよー」
「え? いや、でもタオルが……」
「あ、そだね。あんずもタオル持ってくるの忘れちゃった。ちょっと取ってくるー」
止める暇もなくあんず先輩が湯船から立ち上がっておっぱいを盛大に揺らしたかと思えば、おしり丸出しで脱衣場へと小走りする。
うーん、エロくていいお尻だとは思う。
思うけれど、今はそう思っちゃいけない。心を無にしなくては湯船から出られないんだぞ、僕!
「タオル持ってきたー! さぁ、高梨君、背中を……ってあれ、どうしたの高梨君、湯船の中でそんなに前かがみになって?」
「あ、あんず先輩……お願いですから、そのタオルで前を隠してください」
このままじゃあ湯船から一生出られないですよ!
おまけ
「でも、おけけにおしっこがついてたかも」
「だからやめてー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます