第3話:お前の背骨を折ってやるっ!
16歳。女。高校二年生。
身長は152センチと周りと比べても小柄。ただし、そのおっぱいは同年齢どころか日本人女性の平均値を遥かに超えている。
G、いやもしかしらHはあるかもしれない。美少女な上に巨乳とは実に眼福! 実にけしらかん!!
そしてそんな男なら誰もが思わず目を奪われてしまう僕の先輩は、へんてこな同好会の会長でもあった。
「あんずの食品格付けチェック同好会?」
僕が差し出した入部届を見て、担任の先生が「なんだそれ?」って表情で呟いた。
「はい。二年生の春巻あんず先輩が立ち上げたと聞いているのですが、やっぱり学校非公認ですか?」
「いや、ちゃんと学校公認だが?」
「マジか!?」
うっそだろ。あの活動内容でどうやって認可されたの!?
「そうか、あの春巻の同好会にお前がなぁ……」
「え? 何かあるんですか?」
「いや、別に。まぁ先生からは一言だけ。……死ぬな、高梨」
「やっぱり何かあるんじゃないですか!!」
あまりに不穏すぎるその発言にその真相を問いただすも、先生は乾いた笑いを繰り返すだけで何も答えてくれない。
そうこうしているうちに他の先生の邪魔が入って、職員室から追い出されてしまった。
おいおい、先輩の部活に一体何があるって言うんだ?
その答えは――しかし、すぐに分かった。
「なんだか疲れてるみたいだねぇ、高梨君?」
その日のお昼休み、僕はなんとか旧調理実習室の部室へ辿り着いて挨拶もそこそこに椅子に座ると、ぐてーと上体をテーブルに投げ出した。
「ええ、まぁ少し」
「よかったらお昼ご飯の前にあんずがマッサージしてあげようか?」
「え、いいんですか!?」
あんず先輩のマッサージ!
肉体的接触が増える上に、さらにはその巨大なおっぱいがどうしても身体に当たってむふふなイベント発生の予感!!
「だったらよろしくお……あ、やっぱりいいです……」
断りを入れて、がくりとテーブルに顔を押し当てる。
見てしまったのだ。窓の外にギラギラと憎しみの炎を纏った目を。しかも複数人分!!
春巻あんずファンクラブ。
その存在を入学してわずか一週間足らず、しかもぼっちの僕は当然のことながら知らなかった。
でもよく考えたら分かることだ。
ちょっとポンコツで相当に食いしん坊だけれども、とんでもない巨乳でしかも可愛い天然美少女な先輩に恋焦がれる人間が沢山いてもおかしくない、と。
しかもこのファンクラブ、相当な会員数を誇っていて情報網も凄まじい。
僕があんず先輩の同好会に入ったことなんて担任の先生にしか話してないのに、職員室から教室に戻った時にはすでに学校中に知れ渡っていた。
おかげで早速僕のノートに「殺すぞ!」と殴り書きされてたり、机の中に腐ったみかんが入れられてたり、下駄箱の靴にお決まりの画びょうが山盛りに入っていたり。
廊下を歩いている時でさえ、なんだか周りからやたらと睨まれたりした。
多分家に帰ったら壁や塀に「関西人のくせして面白くねぇんだよ!」とか落書きされまくっていることだろう……。
ああ、知らなかったとはいえ大変なことになってしまった。
「高梨君が元気ないと、あんずも寂しいよぉ」
そんな僕を見て、あんず先輩も対面で同じように机にぐたーと上体を投げ出す。
いや、あんず先輩の場合は「ぐたー」ではなく「ぐにょん」だな。机に押しつぶされるおっぱいが実にエロい。この光景を間近で見られる僕は果報者だ。
うん、そうだ!
どんなに嫌がらせを受けても、あんず先輩と一緒にいられる幸せには敵わない!
ファンクラブがなんだ。イジメがなんだ。こっちはもう「つまらない関西人」としてみんなからハブられているんだ。よくよく考えたらこれまでとそんなに変わらないんじゃないか。よし、だったらもう逆に僕とあんず先輩の関係を見せつけてやる!
「先輩、やっぱりマッサージを」
「ほう? マッサージ? 面白れぇ」
目の前でスライムになっているあんず先輩に話しかけたはずが、何故か背後から見知らぬ女の人の返事が聞こえてきた。
え? 誰?
てか、なんだ? さっきまで外の窓から覗き込んでいた連中が一斉に姿を消してる!?
「マッサージならオレがしてやらぁ! おらぁ、身体を反り上げろォォォォ!!」
いきなり背後から髪を掴まれたかと思うと、腰を片足で踏みつけられながら思い切り身体を後ろに反らされる。
「痛いいいいいいいいい!! ちょ、やめ! やめてくれー!!」
「はっはっはー! もっとだ! もっと関節を伸ばしてやるぜー! 人間の限界を超えてみろやゴラァ!!」
「おおっ! これはいわゆるタイ古式マッサージって奴だねぇ。すごく利きそうだよー」
「あんず先輩……これはそんなもんじゃ……てか、止めて……お願い!」
折れちゃう! このままだとマジで背骨がぽきって折れちゃうからぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「よう、お前の話は聞いているぜ、高梨亮! オレは二年の
羽後先輩が僕の髪の毛を引っ張りながら顔を覗き込んで自己紹介してくる。
耳元で切り揃えた毛先を外ハネさせた髪型。やたらと鋭い目つき。つまりは言葉から受ける印象通りワイルドな面持ちの先輩だった。
その直後、髪を掴む力が弱くなってようやく僕は地獄から解放される……と思ったら今度は顔をテーブルに押し付けられてしまった。
「で、クズ虫君よぉ。お前、自分が何をしでかしたのか、分かってんのか!?」
「ううっ……何って一体?」
「いいかぁ。世間にはこういう言葉がある。百合カップルの間に割り込んでくる野郎はロードローラーに押しつぶされて死んでしまえッ! とな」
「百合カップル……だって?」
「ああ。言っておくがオレはあんずのおっぱいを揉んだことがある。しかも生で!」
「なん……だと!?」
それはうらやまけしからんッ!
「ちょっと、カコちゃん、そんなこと高梨君に言わないでよぉ。あんず、恥ずかしいよぉ」
「なに恥ずかしがってんだよ、あんず。いい機会だ、この身の程知らずの便所虫にオレたちの仲を見せつけてやろうぜ」
そう言って羽後先輩は僕から離れると、今度は恥ずかしそうに顔を赤面させているあんず先輩の後ろに立った。
そして胸元から何かを取り出し、あんず先輩の目の前でウニウニとそいつを動かす。
「ほーら、あんず。これが欲しいだろ?」
「ううっ。カコちゃん、ダメだよ。高梨君が見てる……」
「そんなの関係ないさ。さぁ、素直になれ、あんず」
「ああ……いやぁ」
「口ではそう言っても身体が欲しがっているじゃないか。ほら、これをあいつの前で舐めてみせろ」
「うう……」
羽後先輩の誘惑へ懸命に抗っていたあんず先輩。が、ついに堪えきれず、その可愛らしい舌を伸ばす。
「うわい。フェットチーネグミ、とってもおいしい!」
「だろう? うりゃ!」
手にしていたフェットチーネグミをあんず先輩が咥えたと見るや、羽後先輩があんず先輩の服の中へ手を突っ込む!
「うへへへへ。あんずのおっぱい、柔らけー」
「このグミグミした噛み応えが最高だよー」
「そうだろうそうだろう? どうだ、高梨少年? オレたちの間に割り込む余地なんてないと分かったか!?」
「……いや、思っていた百合カップルと全然違うんですけど」
「なんだと!?」
「何と言うか、あんず先輩の餌付けという意味では僕とそんなに変わらないような」
「馬鹿なッ!? お前もお菓子であんずの気を引き、その間におっぱいを揉む秘技を会得しているというのかッ!?」
「いえ、さすがにそんな卑怯なことは出来ませんけど……」
「だろう! オレの勝利だ!」
「ああ、はいはい、そうですね。ところで羽後先輩、この後に僕と握手してくれませんか?」
「なっ! なんだとっ! それは一体どういう意味……そ、そうか! これはアレだな! 戦いの後に友情が芽生えるとかいう例のアレ……」
「……あー、そうですね。そんなところです」
すみません、本当はあんず先輩のおっぱいのぬくもりを僕にもおすそ分けしてほしいなぁという変態ちっくな願望です。
「はっはっは。可愛いところがあるじゃねぇか、高梨少年! 仕方ねぇ、握手してやるか!」
何故か羽後先輩がとても嬉しそうに高笑いする。
そしてあんず先輩はおっぱいを揉まれながら、ひたすらグミをもぐもぐしていた。
おまけ。
「え、羽後先輩の下の名前って『菓子』って書いて『カコ』って読むんスか?」
「なんだよっ! 悪いかよッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます