第33話 急遽開催、ゲーム大会

四分割された画面に四つの『3』が表示される。誰もが固唾を飲む、この瞬間――――命を懸けたレースが始まる。


「はぁ⁉ 誰だよ俺に“アカこうら”投げたやつ!」

「うちの目の前に居るのが悪いんですぅー! このザコめ」

「俺がザコなわけねーだろ!! ちょっと手加減してやってるだけだし?」

「じゃあ手加減する相手間違えてんね、一位はうちが頂くっ!」


(すっげぇうるさいな、こいつら。)

俺は横で殺りあっている二人の様子にそう思った。


一応忠告しておくが、当然“命懸け”な訳では無いのだ。せいぜい懸かっているとすれば昼食のピザ一切れ分とか、多分そんなもの。

ゲームだからといって手を抜くタイプではないけど、自分より遥かに白熱している佐野と倉科さんを見ると無難に三位でもいいかな、とも思えてくる。

――なんてな。


「よし、いけ!!」

俺は使い所を待っていた“トゲゾーこうら”を使用した。実はこのアイテム、一位のカートを追いかけ転倒させることが出来るのだ。回避はほぼ不可能。

現在の一位は僅差で佐野だが、すぐ後ろに倉科さんがいる。と、いうことは。


「うわやばい!! 後ろから来てんだけど!」

「ちょっと佐野離れてよ! うちまで巻き込まれるじゃん」


リモコンから警告音が鳴る。そして――ボンッ。

狙い通り、まとめて宙へ吹き飛ぶ。

そして落胆する二人を俺の愛車カートが追い抜き、ついに一位に躍り出た。と、その時――空からヨッシーが降ってきた。


「え、水瀬さん!?!?」

俺の声に他二人も思わず水瀬さんの画面を見る。

ヨッシーの後ろ姿、画面端に映る金色の『1位』。俺を抜いたのは紛れもなく彼女だった。

「私ヨッシーが一番好きなんだよね〜! スパマリで林檎美味しそうに丸呑みしてるとこが可愛いの!」と笑顔で言っていた人と同一人物だとは思えない顔つきに、凄まじいハンドルさばき。

確実にインコースを攻めつつ、ショートカットも挟んだ無駄の無い走りだ。

何度か追いつけそうかとも思ったが、予想以上に速くどんどん差が開いてしまう――そして。


「いちい……一位! やった、一番乗りだぁ!」

お兄ちゃんと練習したお陰だ、と水瀬さんは足をパタパタとばたつかせた。

そしてヨッシーを追いかけるようにして、俺、佐野、倉科さんはゴールした。

「まじかよ……完全に油断してたわ」

何故か息の切れている佐野の言葉に、ふふんと得意気な水瀬さん。

「私は得意だって忠告したもんねーっ! 人は見かけによらないんだよ?」

そして余裕の笑みで「もう1レースする?」と言った。当然、この誘いに乗っからないわけが無い。

「「「次こそは勝つ!!!!」」」

部屋の温度が少し上がった気がした。

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