第18話 迷探偵真雪ちゃん
テスト終わりの放課後。
下校中の女子生徒Mは、学校近くのとあるファミレスにて怪しい三人を目撃した。
そして奴らの周りは、妙に空気が重かったという。
一体これから何が始まるのだろうか。
この緊急事態を目撃した女子生徒Mこと、私。水瀬真雪は近くの席からこっそりと彼らを見守ることにした。(決してつけている訳では無いからね)
「ごほん。誰かさんが“カラオケ寄ってからにしようぜ”などと言ったせいで、予定時間よりかなり過ぎてしまいましたが、これより第一回テストお疲れ&赤点回避対策会を始めます。本日司会進行を務めます。
彼はドヤ顔でそう挨拶し、軽く一礼をした。
自信に満ち溢れた司会者の言葉に、1人は歓喜を上げ、もう一方はドン引きしているように見える。
「異議あり! 君は国宝級なんてもんじゃない!! 日本一、いや世界一の間違いだ!」
「……前野、悪いことは言わんから今すぐ視力検査してき? あとカラオケは佐野が言い出したやん」
私は思わず(いや、言い出しっぺだったんかい!)というツッコミを心の中で入れてしまった。
それと、テスト後に赤点回避なんてできるの? という疑問が頭によぎった。
この2人の声を聞き自称国宝級イケメンの佐野くんは
「前野、おまえ最高。見る目ありすぎ。それから倉科、女子じゃなかったら蹴ってたわ」
と言った。
どうやら怪しい三人の正体は、佐野くん、前野くん、そして私の友達の倉科
あれ、水瀬真雪って友達いないのでは? って思いました?
失礼ですね。一人くらい居ますよ。(正しくは1人だけですが)
倉科凛月、通称りっちゃんは小学生の時に転校してきてから今までずっと一緒。
高校ではクラスが離れちゃったから、あんまり話せないけど……
今でも登下校を一緒にする仲なのです。
私が心の中でふんす!としていると、司会の佐野くんが議題について話し始めた。
「まずは、赤点をどう回避するかという事についてですが……賄賂でも渡します?」
「んー、それなら良いところのお菓子とかどうやろ? 先生甘い物好きそうな顔してるからいいんちゃう? 知らんけど」
「「確かに」」
__りっちゃんはいつからそんな子になってしまったのだろう。
昔はしっかり者で頼れるお姉ちゃんのような存在だったのに……
真雪は悲しみに暮れていた。
「よし! じゃあ三人で500円ずつ出し合って菓子買おうぜ。で、それでも無理なら土下座だっ!」
その言葉に、前野くんとりっちゃんは「さんせーい!」と声を揃えた。
さんせーい! じゃないんですよ。
仲がよろしくて微笑ましいですが、違うんです。
りっちゃんはもう、どうしようも無いお馬鹿さんになちゃったのかもしれないですね。(私が言えたことじゃないですが)
その後他の案も出たが、結局賄賂(お菓子)を渡すという提案に決まったらしく、彼らはピザやらドリアやらを注文し始めた。
どうやら赤点回避対策会は終わったようだ。
もう見守らなくても大丈夫かな。そう思った私は、りっちゃんたちにバレないように店を去った。
外に出ると夕焼けで辺りは赤く染まり、帰宅するサラリーマンや学生で溢れていた。
「内容はあんまり良いことではなかったけど、ああいうノリ憧れるなあ。私も、りっちゃんみたいに友達が作れたらいいのに」
水瀬真雪はそう呟いたが、その声はだれにも届くことはなく夕陽に溶けていった。
こうして、迷探偵による調査は幕を閉じたのだった。
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