第10話 2人きりの図書室①
6限終了のチャイムが鳴り、ついに放課後になってしまった。
「佐野ぉ。どうしよう俺、気まずくなる自信しかないんだけど」
そう駄々を捏ねていると
「あーもう! そろそろ覚悟決めて行けって! それとも何? 水瀬さんに仕事全部押し付ける気なの?」
と的確すぎるお言葉が返ってきた。
そう言われると行くしかないじゃないか。
田中は出来る子! 頑張れ田中! と叫ぶ佐野を背に、俺は渋々図書室へと向かった。
扉を開けると、受付にはもう水瀬さんの姿があった。
ただ本を読んでいるだけであったが、彼女の周りだけ時がゆっくりと動いているようだった。
そして髪に日が当たり、より一層美しく艶やかに見える様子は、まるでかの有名なシャンプーのCMのようだと俺は思った。
「ごめん少し遅れた」
そう言うと彼女は少しびくっとして顔を上げ、
「ううん。私が時間より早く来ちゃっただけだから大丈夫だよ」
と言った。
今さっき初めてしっかり会話を出来た俺は、もう今日の仕事は成し遂げたような気になっていた。
そして気づいたことが一つ。
声が馬鹿みたいに綺麗ということだ。
キャラでいう黒髪ロング清楚のツンデレ系みたいな感じといえば伝わるだろうか。
まあとにかく透明感のある可愛い声だった。
ちょっと神様本気出しすぎじゃない? 俺のときも少しは頑張れよなと思った。
__突然、制服の裾辺りに違和感を感じた。
視界を下げてると、立っている俺の制服の裾を少し引っ張っている水瀬さんが居た。
そして、
「……座らないの?」
と俺に尋ねた。
この状況、お分かり頂けるだろうか。
水瀬さんは椅子に座って俺の学ランの裾を引っ張っている
心臓が止まるかと思ったが、うるさい程にバクバクとなっていた。
そして俺は
「あ、あぁ」
とカ〇ナシのような声を出しながら、水瀬さんの隣の椅子に座った。
そして一旦深呼吸し、落ち着かせた。
この学校は割と可愛い子が多いため、免疫はある程度ついていると思っていたが甘かったようだ。
“水瀬さんはレベチすぎる”
改めてそう学んだ。
俺は図書委員が終わるまでのあと1時間もつのか。
気まずいとか以前にとても心配になった。
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