やたらと見てくる水瀬さん
来栖クウ
第1話 初めての席替え
「お前あの水瀬さんの隣じゃん! 運よすぎだろ」
「……え?」
俺の唯一の友達の佐野は、ニヤニヤしながら俺を見た。
正直席なんてどうでもいいのだが、流石にこれには驚いた。
水瀬さんは学校一の美人と言われている。
艶やかな黒髪に透き通った肌、少し茶色がかった瞳。
誰が見ても綺麗と感じるだろう。
そんな彼女が俺の隣の席だって?
冗談であってくれと願ったが、黒板に書かれた座席を見るにどうやら本当らしい。
「まじかよ」
「なんで凹んでるんだよ! そこは喜ぶところだろ!」
まあ普通は喜ぶかもしれない。
隣だと接点が多い分仲良くなって、あわよくば彼女になって欲しいと考える人も少なくはないだろう。
でもな、佐野。違うんだ。
「俺、女子と話すの苦手なんだよな……」
そう言うと佐野は、は? と間抜けな顔をした。そして
「そんな事言ってる場合じゃないだろ。ちょっと話すくらいいけるって」
と俺に言った。
そのちょっとが無理なんだよっっ‼ と心の中で叫んだのは言うまでもない。
異性と話すことが苦手になったのは中学生の頃。
俺はそれまではごく普通に話すことが出来ていたし、女子の友達も居た。
しかしある日。女子の集団が同性の悪口を言っている所を見てしまい、それ以来怖くなってしまったのだ。
まあ今はだいぶ時が経ったせいか苦手意識は減ってきたが、それでもやっぱり苦手だ。
「__では、それぞれの席に移動してください」
担任の先生が言った。
決まった以上は仕方ない、いくか。と、重い腰を上げた。
佐野はまだ俺を見てニヤニヤしているがスルーしたのだった。
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