ブラッドウルフ ~母を殺した犯人と、ギルドでコンビを組むことになりました~
二野 十条
プロローグ
序章 つぎはぎの理想郷、その名はユートピア
視界が真っ赤に染まる――
こんな感情生まれて初めてだ――
つい先日15歳になったばかりのエルフの少女はそう思いつつ、目の前にいる赤い瞳の青年にかつてないほどの怒りを向ける。
街から少し外れた森の中に、ひっそりと建てられているエルフの少女の屋敷。周囲を照らすのは、満月の光と屋敷の周りに漂う魔法の灯火だけとなった時間帯。
エルフの少女は、たった今彼女の目の前で母親の首を引き裂いたその青年を、ありったけの殺気を込めた瞳で見つめていた――
***
この世界において知的生命体とみなされているこの五種族のうち、エルフとドワーフ、ビュームの三種族は、107年前まで
だが数百年続いたその戦争は、あまりの不毛さにしびれを切らしたドラゴニアによる、圧倒的な力での弾圧によって終結することとなる。
そして当のドラゴニアは、今後このような惨劇を繰り返さないために、この世界の知的生命体である五種族を「ユートピア」という一つの自治団体――つまり国の一員としてまとめた。
国民となったそれぞれの種族は、ユートピアにおいてそれぞれの特性を生かして、社会的地位を築き上げていった。
圧倒的な力により、戦争をしていた種族をまとめ上げたドラゴニアは、国を牛耳る統治組織の中心として。
圧倒的な魔法適性により、この国の経済発展に多大な影響を及ぼすエルフは、経済の中心として。
圧倒的な技術力により、この国の産業に多大な影響を及ぼすドワーフは、産業の中心として。
圧倒的な身体能力により、この国の労働力に多大な影響を及ぼすビュームは、労働力の中心として。
かくして国の経済が回りだし、飛び交う魔法や技術によってユートピアは瞬く間に繁栄することとなる。
弾圧によりまとめ上げられた各種族のいざこざは決して少なくなかったが、しかしユートピアは確かに国として成り立っていた。
では、
この
これは、とあるエルフとヒューマの不思議な関係のお話――
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