第161話 11月6日 日曜日12
「――へ、へっ?」
俺に手を持たれているからだろう。少し恥ずかしそうにおどおど?かな。そんな感じだった胡乃葉に話しかけると、胡乃葉も少し驚いたような表情をしてから、きょとん?とした表情となった。
何を言っているのですか?みたいな雰囲気かな?
現状は九条さんが見せてきた画像に写っていたものに関してだ。
いや、普通なら何も気にしなくてもいいような画像。部屋にぬいぐるみとかあっても別にいいだろうというものなのだが――そのぬいぐるみが俺にとってはかなり重要だった。
「楠君?どうしたの?必死な顔して」
隣から九条さんも不思議そうに話しかけてきたが。そちらはおいておいて――俺は胡乃葉を見ていた。
胡乃葉と九条さんの2人の写真の胡乃葉が抱いているぬいぐるみ――俺は知ってる。再度先ほど見た画像を頭の中で思いだす――あれは間違いない。昔俺が欲しくて……。
「もしもーし。楠君?」
「――せ、先輩?」
すると、俺が少し胡乃葉の手を掴んだまま固まっていたからだろう。九条さんと胡乃葉の不思議そうな声が聞こえてきたところで、俺は九条さんのスマホをちらっと見つつ。
「なあ。胡乃葉この画像に写っているやつだけどさ――」
「――なっ、いや先輩――恥ずかしいからこの話はいいじゃないですか。ってなんでも見ないでくださいよ。間抜けな顔してますから――」
すると胡乃葉は恥ずかしがって――って、もしかして先ほど九条さんが言っていた初恋なんやら――という話と思っているのか?あっ。俺もぬいぐるみってちゃんと言わなかったな。
「いや、胡乃葉じゃなくて」
「ふへぇ?」
「このぬいぐるみだよ」
俺は九条さんのスマホを指差しつつ。胡乃葉にも見えるようにする。
「およよ?楠君何か反応しちゃった?実はね。これがさっき言っていた――」
すると、九条さんが何やら思ったのか。先ほどの話を再開させようとしていたが。その話を聞きたいわけではない。
「九条さん。お静かに」
「あれ?楠君がすごく真面目な顔してるー」
そんな顔はしてないと思いますけどね。でも――そこそこ重要な確認ではある。
「えっと――先輩?」
再度不思議そうな感じで胡乃葉が声をかけてきた。どうやらまだ胡乃葉は、俺が確認したいことをわかっていないらしい。
「いや、だから、この画像だけど。胡乃葉が隠そうとしているぬいぐるみ」
「えっ――あー、そういえばこれドーナツ屋のですから。先輩知っている物でした?」
すると、胡乃葉がわかった。という表情になって話し出したが――少し俺が確認したいのとは違う。
「いや、これどこで――」
「えっ?このぬいぐるみですか?これは――」
「はいはい。私が昨日聞いたまま話す!」
「九条先輩が話したら脱線しかしませんから嫌です」
「あの、九条さん。お静かに」
「――楠君が冷たくなったー」
九条さん。少しお静かにお願いします。ということで、俺は胡乃葉を見て再度確認する。
「胡乃葉このぬいぐるみどこでゲットした?」
俺が再度確認すると、ちょっと困惑――した表情に胡乃葉はなったが。すぐに
話し出した。
「その――これは昔ですかね。私が中学になった時くらいに――もらったというか。たまたま渡されたと言いますか。お恥ずかしいですが。中学生になっても迷子になっていた私を助けてくれた人が居まして。その人が無理矢理――って感じで……」
胡乃葉の話す過去の出来事。これは胡乃葉の記憶なのだが――何故か俺の頭の中でも思い出されて来る光景があった。
「なんかね。ドーナツ押し付けて、これ買ってて遅くなったと言えばいいとか言って立ち去ったんだってー。そんな人ほんとにいるのかな?だったけどね。でも胡乃葉ちゃんの中ではそのように記憶されているんだって」
「ちょ九条先輩。だから私が話す――」
どうやら今日の九条さんが静かにすることはできないみたいだが――今の九条さんの言葉で俺は頭の中でとある言葉。返事が出来た。
『それ――俺かも』
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