第2章 ちょっと砂糖がこぼれたらしい

第50話 10月21日 金曜日

 いつもドーナツ屋。いつもの時間。今はココと同じオールドドーナツを頬張っているところである。ドーナツを一口食べている間にかなりいろいろな事。ココと会ってからの事を思い出していた気がするが――気のせいかな?無駄に50話弱話した……って、俺は何を意味の分からないことを言っているんだ?今は今だ。ほんの数十秒しかあれから時間は経過していないはずだ。経過してないよな?ちょっと俺がココと出会ってからの事を――だったのだが。自信が無いのは何故だ。いや、こういう時は忘れよう。

 そう。今は美味しいドーナツを食べている。よし。


 ★


「——これ食べないと1週間終われないんだよ」

「その気持ちはわかります」

「「美味しい」」


 2人でいつもの味を楽しむ。もしかしたらお疲れと思われるココは、別のもっと甘いものを食べたかったかもしれないが――店長がくれたからな。それにこれはこれで安心の美味しさだから。

 ってか、ドーナツ食べて幸せ。となっていた俺だが。そういえばココは今週――違う。先週会った翌日だから、土曜日の事だな。土曜日に友達?とカラオケに行くとかで、いろいろ言ってたが。今のところ潰れている感じはない。ちらりと隣を見てみれば、俺があげたドーナツをいつも通りハムスターがひまわりの種を食べるかのように食べている。幸せそうに食べている。ある意味この光景も最近では癒しかな。もしかしてこの様子からすると上手くいった?などと俺は思いつつ。気にはなっていたので、いや、先週かなり言っていたからな。絶対潰れていると思ったのだが――ということで、ココに聞いてみた。


「なあココ?」

「はい?なんですか?先輩」

「カラオケどうだった?」

「あっ、それがですね。大丈夫でした。先週いろいろ言いましたが。何とかなりましたよ」


 嬉しそうに答えるココ。この様子からして問題は何もなかったということが確定したのだった。それはよかったよかっただな。実は潰れていたらどうやって声を――とかどのようの――って、ちょっと考えていたのだが。それは無駄になったか。って、大したこと考えてなかったからな。これで良しだな。


「大丈夫でした。っていうことは――カラオケが無くなった?」

「あっ、いえ、普通にカラオケはありまして、参加者は10人……15人だったかな?まあそこそこ居たんです。で、はじめこそはこの人の前で歌うのは――と、思ってたら。やっぱり人数が多いのでみんなで歌うって感じがほとんどで、それで乗り切れたという感じです。人が多いので順番も回ってきませんし。上手に逃げることも出来ましたし。あと――」

「あと?」


 順調に話していたココが急に言いにくそうな感じになった。


「——えっと――これ言っちゃって……良いですよね。先輩しか今はいませんし。実はですね。先輩の1人が――」

「1人が?」

「——めちゃくちゃ歌が下手で」

「……ほう」

「それも本人気が付いてないのか。結構何曲も――って感じで……」


 あははー。という感じで、ココがそんな報告をしてくれたのだった。

 って、それは予想しなかったな。その先輩?大丈夫なのだろうか?なんか心配してしまうというか。周りの評価下がっているぞ?と、とりあえずどこの誰かわからないが思っておこう。大丈夫か?とね。俺が言えたことではないと思うが。マイク強制回収ではないが。何が何でも回さないように――ってされる人間だからな。

 とりあえずココにとってはいい方向に事が進んでいたらしい。


「……なんとまあだな」

「それもその先輩。ノリノリで一番初めに歌っていたので――」


 ココは苦笑いをしつつ話している。いや、その先輩ある意味――すごいというか。想像しただけで――その場大丈夫?となった。


「その先輩。強いというか。すごいな」

「発起人さんだったみたいですが。とにかく一番初めに空気をおかしくしてくれたから助かりました」

「それって――その先輩の優しさでは?」


 話を聞いていてその可能性はすぐに浮かんだ。初めての1年生とかが混ざっているなら。出来る奴なら、緊張とかしないように場を和ませたのでは?だったが。それは違ったらしい。すぐにココが否定してきたからだ。それもココははっきり否定してきたのだった。


「ずっと下手でした。むしろ回を追うごとに疲れからか。さらに酷くなっていました。こんなこと言うのも――ですが。私の周りの子も小言で……って感じでした」


 バッサリと切られたという感じだった。ココがそこまで言うのならな。多分――ずっとその先輩とやら下手だったのだろう。その光景を想像すると……うーん。だな。何とも言えない空気に場がなっていそうだが。でも俺には関係ない人だろうし。既にその場は過去の事だから、わざわざ部外者が無駄に想像することではないか。俺もマジで他人の事は言えないはずだからな。


「なんか――すごいことが翌日あったという事か」


 ざっくり俺はココの話をまとめた。


「まあ、ですね。だから……私は上手にみんなでの時にちょっとだけ入って、あとは飲み物接待です」

「飲み物接待?結局そっちになったの?」

「はい。そのちょうど1人の先輩が飲み物担当していまして、それに上手にくっつきました」


 グーポーズを見せてくるココ。この子。とりあえず土曜日は上手くいった様子だな。ってか、楽しんできたようにも見える。


「なかなかだな」

「その飲み物担当をしていた先輩は、私たち1年生にも優しくて、私も会うとよく話す先輩だったので、ホントちょうどよかったと言いますか。助かった―です」

「さすがというか。友人は多いといいな」


 ココはなんやかんや言いつつも、やはり俺なんかよりはるかにコミュニケーション能力が高いらしい。どう見ても高いか。

 そしてさらっと友人の輪を広げれるタイプなのだろう。多分俺がその場に居ても――そんな誰かに引っ付いてとかには、ならないかな?俺には無縁な気がした。

 あっ、でも旺駆里にならなんやかんやで付いていくことが……って、あいつは友人ではない。知人だ。だから俺の友人は――考えないでおこう。悲しくなるだけだ。既に悲しくなってきた……いないな。


「まあ――それで終わったら良かったんですが」


 よしよし。ココも潰れることなく。いい感じに――と俺が別の話。何かあったかな。と話題を振ろうとしていたら――どうやらココの話はまだ終わってなかったらしい。


「——終わらなかったのか?雰囲気的にハッピーエンドの予想だったんだが?」


 俺が勝手に悲しんでいると話はまだあったのか。ココの話は続いていた。そして何故かココは楽しそうな表情から――複雑な表情になっていた。何があった?。

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