第141話 11月5日 土曜日28

 旺駆里からの逃走中。


 いや、待て。駅に着いてから俺たちは無駄なことを話していたから、逃走中ではないような……。

 現に先ほどから俺たちはこの場からほとんど動いてないので――これは逃走中と言うと間違えか。

 とにかく駅まで来て胡乃葉と話していると、胡乃葉が何か決心したかのように、急に声をかけてきて、今はしっかり頷いていたのだった。

 めっちゃ嫌な予感しかしないのだが――いや、いやな予感しかしない。って、なんで逃げる?えっ?何から?あっ、旺駆里から?などなどと俺が思いつつ何故か『行きましょう』みたいな表情をしている胡乃葉を再度見ると――その時だった。


「あっ、楠君発見」


 ふと聞きなれた声が聞こえてきた。

 俺と胡乃葉が声の方を見ると――九条さんが手を振りつつ近寄ってきていた。あれ?見つかった?って、そもそも九条さんも俺たちを探していたのか?

 いや、俺を探していたのかな?確か今俺の名前だけ呼んだよな?って、ここ大学から離れてますけど――えー、ここまで探しに来た――?なんでみんないろいろ必死に来ちゃうかな。


「九条さんどうして――?」


 俺の隣では胡乃葉も少し驚きつつという感じだった。そりゃ普通ここまで来るとか思わないよな。って。九条さんは俺たちを捕まえるために来たのか?って捕まえるなら、ギリギリまで声かけなくないか?


「いやー、私もみんなから逃げてきた」

「「えっ?」」


 おっと、俺がいろいろ考えながら、こちらに向かってくる九条さんを見ていると。まさかの発言が聞こえてきた。

 いや、ちょっと待とうか。なんで九条さんも逃げてきたの?って、誰から?

 するとその答えは俺が聞くより前に九条さん自信が勝手に話してくれた。


「いやー、さっき楠君とのことでおふざけし過ぎて――みんなが獲物見つけたー。みたいな感じでさ」


 ってか、勝手に俺を巻き込まないでください。って。まさかの俺――2か所から追われていたり……しないよね?


「何したんですか。先輩」


 すると胡乃葉が少しじろっとこちらを見てきた。少し怒っているではないが。『何ですか?その話』みたいな雰囲気だ。

 

「――いや、俺は何も知らないというか。九条さん何か勝手に妄想を話したとかじゃないですよね?」

「やだなー。妄想なんて。単にあまりに適当な事言っていたら――みんなに恋人認定されちゃったー。って、これ米野さんの前で言うとダメ?あっ、言っちゃった」


 ……九条さんめっちゃ楽しそうである。


「はいっ!?」


 そして、ちゃんと反応する胡乃葉だった。


「あちゃー。ダメ見たい」


 さらにさらに、胡乃葉の反応を楽しそうに見て、俺の方を見てくる九条さん……こっち見るな。あと面倒なことにするな。今はこっち旺駆里で大変なんだから。

 いや、マジで、九条さん何をしているである。



 旺駆里から逃走し。胡乃葉と駅でいろいろ話していたら――新たに1人増えました。というのが今である。

 俺の胡乃葉の前には九条さんが居る。ちなみに――めっちゃ楽しそうなのは触れなくていいか。

 一つ言えることは――九条さん謎なテンション?によりお友達に追われていると思われる。って、勝手に俺巻き込まれている説だ。

 ホント迷惑だ――。

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