第3話 ターミナル駅

 これは俺が中2の時の出来事だ。

 ドーナツ屋がやっていたプレゼントキャンペーンの商品がどうしても欲しく。いつもより遠くの駅まで、わざわざ1人で買い物に行った時の話だ。


 普段から1人で出歩くのはよくよくあった。それにちょっとくらい遠いところでも小学生のころから問題なく1人で行っていたので、今回も問題なく俺は無事にドーナツ屋で商品と、キャンペーンのぬいぐるみ。ドーナツ屋での限定のぬいぐるみをゲットし。帰ろうとしていた時だ。

 ざわざわとし。多くの人が行き来するターミナル駅の構内で、大きなキャリーケースを持った迷子の女の子と出会った。どうやらどの電車に乗ったらいいのかわからなくなったらしい。年は――どうだろうか?かなり小柄な子なので小学生?だとは思うが――こんな小さい子が1人で旅行とはだった。

 俺もこのくらいでは1人で出歩くことが多かったと思うが――でもさすがにこのような大きな駅に、1人で来るようになったのは小学校の高学年くらいだったと思う。いや、もしかしたら中学生に入ってからだったかもしれない。

 はっきり言おう。迷子の女の子を見つけたが俺はどうしたらいいかわからなかった。出来ることと言えば――笑顔で。明るく少女と話すだけだった。

 そういえば、今思うと、この時の俺はドーナツ屋で目当ての物が買えて機嫌が良かったと思う。だから。自然と優しくもできていたのかもしれない。

 とりあえず少し俺は女の子と話した。すると女の子が目指している方面はわかった。だが。女の子は自分が迷子になったことを何故か気にしている感じで、俺が教えてもなかなか歩き出そうとしなかった。

 そこで俺は女の子に持っていたドーナツを渡した。何故かというと理由のためだ。俺なんかが考えたことなので、上手くいく保証などない。でもこの時に俺が出来たことはそれくらいだ。

 これはほとんど無理矢理に俺が迷子の女の子にドーナツを渡し。乗り換えの方向。乗り場を教えただけの出来事だ。


 最後は、無理矢理――と言う感じだったので、俺が居ると押し返される。そんなことが頭によぎったので、俺は女の子に言うだけ言って、その場から駆け出したのだった。俺がすぐに駆け出したからか。女の子は付いてくることはなかった。

 その後女の子がちゃんとたどり着けたのかすらもわからないんだがな。そういえば、付いて行ってやるという選択肢もあったんだな。今更思ってもか。

 これは俺がまだ中学2年の出来事だ。


 ◆


 そうそう、この日俺は家に帰ってからとあることに気が付いた。

 せっかく交換したをなくしたことを。


 確か女の子と会った時までは持っていたことを覚えていたが。その後の俺は、なんか良い事した気がする。などと思い。テンション高めに家へと帰ってきたので、どこに置き忘れたのか全く思い出せなかった。

 

 そして、後日再チャレンジでドーナツ屋にまた行ったのだが――既に完売。という文字を見た。とある日の思い出だ。

 

 あのぬいぐるみは――どこに行ったのだろうか。今でもどこに置き忘れたのか。本当に思い出せない。

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