第78話 10月30日 日曜日9

 現状説明をすると、ジーっと、胡乃葉が俺を見てきていた。

 いや、胡乃葉が話しだしたんだからな?それでたまたま昨日の事があってそれを思い出していただけで――って、いうわけだから謝っておこう。ごめん、無駄な事考えてました。想像してました。って、にやけては無いよな?無いよな?俺。


「――いや、そんなことはない」


 ちょっと見れない自分の表情を考えつつ。って、思っていたことが事だからな。間抜けな顔を胡乃葉に見せてしまったのか――と、ちょっと思っていると。


「あれ?思ったより先輩慌てないですね。本当に何も想像してなかったんですか?」

「もしかして――胡乃葉。鎌かけたか?」


 胡乃葉の反応的に俺。普通だったと見た。変に慌てなくて良かった。こやつ何を仕掛けてくるかわからんやつだったか。俺から何を聞き出そうと――あっ。俺の弱みか。


「ごめんなさい。って、とにかくスタイルいい人多いじゃないですか。だからそのことで話の分かる2人と言いますか。2人でご飯とか食べる時に――いろいろと愚痴ではないですが――ぶちまけると言いますか」

「——なんだろう。俺が触れてはいけない世界な気がした」

「そういえば先輩。長身ですね」


 胡乃葉からみると平均でも大きく見えるのでは?ということはもちろん口には出さない。言った瞬間蹴飛ばされそうだったからな。いや、胡乃葉のイメージ的にそんなことはしないだろうが――もし、っていうのがあるからな。


「——そんなことないと思うがな」


 ちなみに俺の身長平均くらいだと思う。知らんが。


「いやいや高いですよ。ほら」


 そう言うと立ち上がり俺の前に来る胡乃葉。確かに頭一つ分――って、近くないか?目の前に胡乃葉。いい香りするんですが?すると、胡乃葉もハッとした表情になり。半歩離れた。


「あっ――す、すみません。ちょっと近寄りすぎました」


 ちょっと恥ずかしそうにつぶやく胡乃葉。でしょうね。先ほどまで座っていた時も近かったが。見つめ合う形で近いのは――ね。また違うよ。


「いや、問題はないが。って、そこまで気にすることでも――だと思うが」

「気にするんですよ。ビッグになりたい夢があるんです」

「……ビッグね」


 あれ?そういえば、昨日飲み会にいた――東山さん。あの子も胡乃葉と意見が合いそうだな。確かコノハと同学年だったし。そのうち機会があれば、紹介してあげてもいいかも。と、そんなことを俺が思っていると。


 ♪♪


「あっ。すみません」


胡乃葉のスマホが鳴った。


 どうやら胡乃葉のスマホが鳴ったのはメッセージだったらしく。スマホを手にした胡乃葉は、すぐに画面を見てポチポチとしている様子。

 俺は今のうちにってか、既に目は覚めていたが。リフレッシュもかねて、ちょっと飲み物飲み物――と冷蔵庫をあさりに行った。


 特に何もなかったから、たまたまあった気の抜けた炭酸水を飲んでいると胡乃葉がこちらへとやって来た。

 にしても、炭酸水は開けたら早く飲まないとだな。これ――水だわ。いや、まて、これはあれか。炭酸と水。両方を一つのペットボトルで楽しめる――って、何を俺は言っているのか。そうだそうだ。胡乃葉がやって来たんだったな。


「胡乃葉も何か欲しいか?お茶か――炭酸水になるが」

「大丈夫です。ありがとうございます」


 ですよねー。今度は何か飲み物買っておこう。って――俺はなんで今度があると思っているのか。


「——まあ、なんだ。飲み物欲しかったら言ってくれ」

「はい。って、先輩」

「うん?」

「ち、ちょっとお尋ねしたいんですけど――」


 すると急に真面目な感じで、いや、ちょっと気まずい?いや、恥ずかしそうに?胡乃葉が話しかけて来た。


「どうした?」

「えっと――あー、やっぱりやめておきます。ご迷惑なので――」


 そこで止めるなよ。めっちゃ気になるじゃん。今の雰囲気からして重要そうな感じだったじゃん。何でそこでやめるんだよ。ってそこまで言ったら言えよ。気になるんだよ。


「なんだよ。気になるな」

「——いや、ホント言い出しておいてですが――やっぱりよく考えると、ホントご迷惑かと」

「聞かないことには判断できないが――ほら、もう言いかけたから言ってみろよ」

「そ、それもそうですね――じゃあ、その先輩って今日の夜はご予定は――ありますか?」

「——今日?」


 聞いてみるとえらく急な話だった。今日の夜と言われる時間って――数時間後ですよ?胡乃葉さんよ。

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