第68話 10月29日 土曜日6

 胡乃葉。俺がスマホを見ているタイミングで送って来たな。良い勘してやがるよ。普段だと気が付かなかったらホントしばらく気が付かないからな。などと俺が思っていると。スマホの画面の通知には新着メッセージの一部が表示され『明日の時間――』と出ていたので、明日の事だろうと思いつつ。今は東山さんに、コードを出さないといけないので、俺は胡乃葉のメッセージは後回しにした。


「——え?」


 すると後ろに居た東山さんから声が聞こえた気がして俺は振り向いた。


「うん?何か言った?」

「あっ――いえ、その――私が先に読んだらいいですか?楠先輩のものを」

「ああ、そうしてくれ」


 どうやら俺の気のせいだったらしい。

 俺はそう答えつつスマホの画面に自分の連絡先。コードを出して東山さんに読み込んでもらう。そして東山さんからメッセージを送ってもらった。俺のスマホに連絡先が新たに2人増えたのだった。


 すると、東山さんが席に戻ったタイミングで、騒がしい男ども3人が帰ってきた。

 ってか、旺駆里と高田君は酔っぱらいだな。そんなに頼んだ覚えはないのだが。あと、その2人に付き合っている下田君は――普通でそのテンションでいけるのなら――まあいいか。下田君に2人を任せたらいい気がしてきた。


 男3人が戻って来てからは、また先ほどと同じような盛り上がり。男3人がうるさいだけだがな。そして、九条さんは適度に会話に入り。東山さんはオロオロではないが――返事を小さくする。って感じで進んで行き――。


「よし、この後カラオケ行くか!で、明日のハロウィンの事もさー考えて――」


 旺駆里がそんなことを言ったところで、まずこの場はお開きとなった。なお、お支払いは割り勘という話だったが――。


「はい。回収するよー」


 支払いは九条さんが担当してくれたのだが――この人。なかなかのやり手というか。先ほど話している時にも感じたが。上手に旺駆里を使っていた。


「楠君と東山さんと私は安くして、その分小倉君に任せたから。多分小倉君気が付いてないから――よしだよ」


 小声でそんなことを言われた俺と東山さん――俺達は苦笑いするしかなかったな。ってか。九条さん支払いに関して、ニコニコ旺駆里と話していると思ったら裏でそんなことを――だった。彼女はすごい。


 ちなみに俺達が解散したのは23時前だった。俺はもちろん二次会は断った。というか。明日は用事あるし。ってことで、俺がさらっと旺駆里の誘いを断ると。


「あ、あの――私も電車の時間があるので――そろそろ」


 俺の隣に居た東山さんも小声でそんなことを言った。


「じゃ、女1人で参加しても身の危険しか感じないから――私も帰ろうかな。私も楠君と同じで明日予定あるし」


 さらに九条さんも帰る選択肢になったため――って、旺駆里のやつ。俺が断ったあと、ぐちぐち言いながらも「わかったわかった。俺は楽しむ!」とか言いつつ。俺の後の2人の事は聞いていない感じで――既に高田君と歩き出していた。

 なので、九条さん。東山さんの話を聞いていたのは下田君のみだ。ってか、九条さん。明日も予定あるにこの時間まで付き合うとかすごいわ。って、俺も明日用事あったわ。などと思っていると、1人こちらの話を聞いていた下田君が反応した。


「じゃあ、伝えときます。お疲れ様でーす」


 2人が歩き出していることに気が付いた下田君は、俺達に声をかけてからすぐに小走りで2人を追いかけていった。

 これなら旺駆里に追加で何か言われることはなかったのでいいか。と、まだまだ元気な2人を追いかける下田君の背中を見つつ思う俺だった。

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