精霊の魔法使い5

今日は、一か月後過ごしたこの森から出発する日だ。時間は朝の七時ぐらいだ。




俺の今の格好は、元の世界で着ていた男物の格好をしている。少しぶかぶかだが女物の服を持っていないためこの服を着ている。いや、元は男なのだから俺は来ていて違和感はないのだが鏡に映る自分はなんとなく違和感があってややこしい。まぁ、そこら辺はおいおい考えるとして・・・ 後は、小物を入れる程度のメンズのショルダーバッグと土産物の木刀を持っているだけだ。




この木刀は、高校の頃の修学旅行で何となしに買った物だ。土産物なので剣道かが使うようなものではなく飾り物のような物だ。杖代わりに使おうと考えている。




ん? 手荷物が少ない? 理由は簡単だ。アオが家ごと空間にしまってしまったからだ。アオが俺の家よりも少し大きいサイズとなりこの前のペンと同じように飲み込んで空間へと収納したのだ。その空間がどういった仕組みになっているのかはいまいちわかっていないが俺が指示を出したものを任意に取り出すことが可能だ。




我ながらものすごく便利なスライムを作ってしまったように思う。今は、俺の上着の内ポケットの中にすっぽりと収まっている。居心地がいいのかとてもおとなしい。




「アオは、便利だのぉ~ あんなにも大きくなれるのに今は私と同じぐらいの大きさになっておる こんな魔物は見たことがないわ」




「ははは、 俺のイメージだとスライムって自在に大きさを変えれる風な感じだしな~ そこに便利な要素を付け加えた感じだけだし以外に野生でいるかもよ?」




「それはないと思うがのぉ~ 私もこの森のこと以外は詳しくしらんしなぁ」




そんな雑談を話している。ちなみにリアの格好は、初めてあった時と特に変わったような点はない。しいて言うならリアサイズのカバンを持っていることぐらいだ。何を入れているのかが少し気になるし後で聞いてみよう。




リアの忠犬であるリィーは特に何かを装備しているわけではない。今は、リアを頭の上に乗せふせの体勢で


待機している。




可愛い子猫のクーはというと。リアサイズの人型となり俺の頭の上に乗っている。俺が指示を出したわけではないのだがここ数日は、人型である時間が長かった様に思う。その数日は、熱心に様々な本を読んでいた。クーは、俺の使っていたパソコンを素にして作ったためか日本語を理解できるらしい。その結果今では、・・・・・




「康、これからどうするの?」




とても流暢に日本語を話している。初めの頃の片言はどこへ行ったのやら。




「えーと、この森を抜けたところに村があるらしいからとりあえずそこに行こうと考えてるよ」




「数年前の知識だからもしかすると変わっているかもしれないがな 歩いていくとなると一度野宿することになるかのぉ~」




野宿かぁ~あっちの世界だとキャンプぐらいでしか外で寝たことがなかったんだよな。いや待て、この一か月はほぼ野宿のようなものだったのではないか?なら、今までとあんまり変わらないのかもしれん。




「まぁ、出発しようか!」




俺がそう声をかけると各々の返事の仕方で答えてくれた。人と精霊が一人ずつに魔物が三体。随分とおかしなパーティーメンバーとなった。まぁ何とかなるだろう。そんな感じで俺たちは出発したのだった。




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俺たちは、森の中を進んでいる。時刻は、一時を少し過ぎたあたりだ。今までの道のりは特に障害といったものはなく時々動物とすれ違うぐらいだった。ちなみに魔物と動物の違いはリアに聞くところによると体の一部が魔素で構成されているかどうからしい。スライムなんかは魔素だけで構成されているようなものだから一目で魔物とわかるが動物の例えば鹿の前足が魔素で構成されていたら分類的には魔物になるということになり見分けがつきにくい。体の一部にでも魔素で構成されていたら能力が随分と伸びるらしくそのあたりで区別しているのだとか。だが、獰猛になるだとかの心配は少ないらしい。




そんなん感じで安全に進んでいた。




「ところでさぁ~ 今まで聞きそびれてたんだけど。この世界の言語って日本語なの?」




「いや、違うぞ ニホンゴというのはコウが話している言葉であろう? 私は精霊であるからコウに合わせるように話しておる。いや、どちらかというとコウの心に話しかけている形になるからそう聞こえるが正しいかの? ん? いやでも・・・・」




俺には、よくわからないがなんか精霊ならではの特殊なことで俺とリアは話せていたらしい。この世界には、また別で言語があるみたいだ。俺、村の人と話せないじゃん!ここに来て問題発生!まじでどうしよ~




「リア、村で使われている言語はわかるか?」




「・・・・ ん? あぁわかるぞ?」




「よし、ならリアは普通の人には見えないだろうから俺の耳元で翻訳してもらってもいいか?」




「おー そうすれば問題なさそうだな うむ引き受けた!」




案外簡単に問題は解決できたな。うーむ、でも本などは毎回リアに翻訳してもらうのも悪いしなぁ~ 勉強は苦手だから難しい。てか、だるい。




「少しでも聞きなれときたいし村の言葉を話してもらってもいいか?」




「え・・・さっきその言葉で話したのだがわからなかったか?」




リアがなんだかよくわからないことを言ってる。




「・・・もう一度話してもらっていい?」




「あぁ、 『そうすれば問題なさそうだな うむ引き受けた!』 と話したのだが・・・」




なんでだろう俺には全部日本語に聞こえるのだが・・・




「全部日本語に聞こえるよ わけわかんねぇ~」




「本当か!? ならば聞くことに関しては問題ないな うーむ もしかするとコウの持つスキルの効果かもしれないのぉ~」




「スキルか~」




俺はステータスと念じて確認してみる。


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立川康



20歳


男⇒女(逆転の効果 解除不可)


スキル


逆転


魔法


魔物の使役


・アオ スライム 0歳 なし  スキル 空間


・クー 電気猫  0歳 なし  スキル 変化




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このステータスを見るとたぶん『逆転』の影響だろう。性別でさえも変えてしまうのだからできそうな気がするのだ。この『逆転』というスキルはこの一か月の間にいろいろと試していたのだが正直まだ詳しくわかっていない。わかっていることは、文字道理念じることで逆転させることができるということだ。




例えば、火の魔法を発動した場合普通ならその魔法を途中で変化させることはできない。だが、逆転と念じると火が水に変化するのだ。この使い方は、この一か月で自在に使えるようになることができた。だが、自分がわかっているのはこれだけだ。まだまだ、このスキルについて完璧には理解できていない。もっと考えつかないようなことも試さないといけないようだ。考えつかないんだけどね・・・




「そんな気がするなぁ~ 聞くことに関しては問題ないことがわかったし後は話す方だな リアに耳元で話してもらって、それを俺が話そうと考えてたけどムリそうだな」




「そこが問題だのぉ~ もしかすると話す方も大丈夫かもしれん 最悪はクーに話してもらえれば大丈夫であろう」




「そうするしかなさそうだな ん? あの奥の方に見えるのはなんだ?」




俺は、左の方に動く大きな熊のような影とそれを取り囲むように小さな複数の人影のようなものを見つけたのだ。俺には何をしているのかがわからなかったのでその方向に指をさして質問してみた。




「んー あれか? たぶん戦闘中だな コウ!巻き込まれるのは面倒だ 少し迂回して移動しよう。」




「・・・あぁ そうだな 戦闘中ってことは命がかかっているんだよな・・」




「当たり前であろう さっさと移動するぞ」




「うん・・・」




リアが当然のようにそんなことを言っているのがとても怖くなった。この世界は、元の世界とは違い身近なところに危険があるのだろう。俺は戦争を知らない人間だ。自分の命の危機に瀕したときに逃げるなり戦うなり行動をできるかがわからない。小説の主人公なんかは乗り越えていっているみたいだが俺はどうだろう?近くで戦闘があるというだけで震えがきてしまっていた。




俺は、念のために自分たちの気配というか存在感を希薄にする魔法を使った。いわゆる隠形というやつだ。俺たちは、魔法をかけ終わったあと静かにその場を後にしたのだった。






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