精霊の魔法使い7

「やば!!!」




ゴブリンは、鬼気迫るように片手に持った鉈を上段に構えながら接近してきた。あと数秒もしないうちに俺はあの鉈の餌食となってしまう。




「壁よ!!!」




俺は、咄嗟に俺とゴブリンの間に分厚い土の壁を作り出した。ゴブリンがその壁にぶつかったのか鈍い音が響いた。




「ッつ!! もうやけくそだ!!!」




俺は、そう声には出していたが頭は随分と冷静でいられた。ものすごく不自然な感覚だ。気持ちは焦っているのに頭は何をするべきかを考えようとしている。




俺はそんなことを思いながらもすぐさま隠形を発動し土壁を消失させると当時に煙を発生させた。俺には、魔素の感覚を探ることでゴブリンの居場所が把握できている。ゴブリンは、突然のことにひどく混乱しているのかところかまわず鉈を振り回しているようだ。




「炎よ 燃え盛り 収束し 切裂け!」




両手の前に火が出現しそれが大きくなったかと思えば横に細長くまとまった。次の瞬間には、ものすごい早屋で飛んでいき煙を蹴散らしながら進んでいきその先にいたゴブリン真っ二つに焼き裂いた。




俺は、その光景と匂いに耐えられなくなりその場で吐いてしまった。ムリムリムリムリムリムリムリムリムリ・・・・・罪悪感が・・・・・もうどうにもムリ無理むり・・・耐えられなかった。




「コウは平和な世界に生まれてこれたのだな・・・ 仕方ないあとはまかせておけ」




そう言うとリアは残ったもう一人のゴブリンに魔法をかけたかと思うとそのゴブリンはその場からいなくなっていた。




「ふ~ これで一安心だな」




「康 大丈夫? どこかケガした?」




「っん ケガとかはしてないよ ごめん少し休ませてくれ」




「わかった」「仕方ない」




リアとクーから了承をうけ俺は、近くにあった木陰に腰を下ろした。まだ、吐き気は収まらないが休むことで落ち着いてきた。やっぱりこうなったかぁ~ しばらくそのままでいるとリアを頭に乗せたリィーが隣に来た。




「コウよ 少しは落ち着いたか?」




「さっきよりは落ち着いたかな」




「そうか・・・ このことはコウ自身が折り合いをつけるしかないからのぉ~ この世界を旅したいのであればどうしても乗り越えなければならん事だ。頭にだけでも入れておくのだぞ?」




「・・・・・わかった」




前々から考えていたけれど実際に体験すると半端ない。食料調達の時にはどうにか耐えれていたからなめていた。次戦う時でもリアがそばにいるとは限らない。毎回戦闘が起きるたびにあのようになってしまっては生き残れるものも生き残れない。




と、頭ではわかっているつもりでも気持ちの面ではまだまだなのだと思う。リアの言うようにどうにか折り合いをつけないと・・・




「もうそろそろ移動しないと日が暮れてしまうのぉ~」




「ワゥ!」




リアはそういうとリィーに指示を出し移動を開始した。俺は慌てて立ち上がりクーが頭に乗ったのを確認したらリアを追いかけた。




「・・・だな とりあえず進むか」




この世界に来て初めての戦闘はこんなグダグダな感じに終わるのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




それから歩くこと数時間、ようやく目的の村にたどり着くことができた。




というか・・・これって村なのか?俺の知っている村は普通城壁のような頑丈なもんがないと思うのだが・・・・




「あの~リアさん 村ってあれのことか?」




「昔、来たときはあのようなものはなかったと思うがのぉ~」




「ちなみに昔ってどのくらい前?」




「ざっと100年前ぐらいだな!」




・・・リアさん、出発するとき数年前て言ってなかったっけ?




「村があるかどうかの情報は10年ぐらい前に森に来ていた者の話からだから勘違いするなよ」




なんか、補足説明のように言ってくれたがそれでも10年前じゃん!!リアっていったい何歳なんだろう?他人のステータスを見ることはできないからわかんないけど、何千歳とかいきてそうだな~ 曲がりなりにも大精霊らしいし・・・




「まぁ 何かはあるみたいだからいいか このまま進もう!」




俺はリアのことを物知りだと思っていたことを若干訂正しながら予定の村に向けて足を進めていった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る