精霊の魔法使い6
時刻は、あれから三時間ほどたち午後の四時ごろだ。今俺たちは、非常にピンチです。
なぜなら、獰猛そうなゴブリンの群れに鉢合わせてしまったからだ。数はゆうに五十は超えているね。手には血のしたたる鉈や使い古された弓などを所持している。表皮は薄く緑がかっておりとてもたくましい肉体をお持ちだ。顔はとても厳つい方が多いようだがよく見ると中には人と変わらないような顔つきのゴブリンもいるようだ。あとは耳がとがっているのが特徴のように思う。
俺の思っていたゴブリン象とは若干違うようだ。表情の優しそうなゴブリンもいたりとやっぱり本物は違うらしい。三時間前に遠目に見た戦闘もたぶんゴブリンのものだったのであろう。
とまぁ観察はさておき、今の状況だ。このゴブリンの群れと鉢合わせてしまったもののまだ相手さんは気づいていないらしい。俺の魔法の効果が効いているのだろう。今のうちにこの場から離れよう・・・・
・・・バキッ!
とまぁお約束のように枝を踏んでしまい大きな音をたててしまった。
「ダレダ!!」
一番近くにいたゴブリンに気づかれてしまった。そりゃあ気づかれるよね。俺は、ない頭を回転させて一つの案を思いついた。
「クー、変化」
俺は、小声でクーに指示を出した。クーも意図がわかったらしくうなずくと狐に変化し逃げていった。
「マギラワシイ・・・」
どうやらごまかせたみたいだな。一安心だ。この群れと戦闘を繰り広げるのには無理があるだろう。その場から離れ少しの間待っているとクーが蝶となってもどってきた。するとリアサイズの人型となり俺の頭の上に降り立った。
「ありがとう クー、助かったよ」
「どういたしまして、康が無事なら何よりだよ」
本当に流暢に言葉を話すようになった。声のトーンはリアをもとにしているためか高めだ。
「これからどうしようか、あのゴブリンの群れの先にいかないといけないんだよな?」
「うむ、そうだ 他にも道はあるにはあるのだが随分と遠回りになってしまう。あの群れを突破できないこともないが・・・めんどうだのぉ~」
どうやらこの精霊様はあのゴブリンの群れごとき問題としていないようだ。なんとも恐ろしい。この精霊さんは実は無茶苦茶恐ろしい方なのでは?悪魔だったりして、なんかありえそうで怖いわ~
「・・・コウよ 何か失礼なことを考えてはいないか?」
心を読む魔法とかあるのかのぉ~ とりあえず首を横に振っておきます。
「まぁよい とりあえず様子を見るとするかのぉ~」
「そうするか」
俺たちは木の上って様子を見ることにした。俺は、魔法で足場に薄い正方形の板のようなものを作りエレベーターのように上へと上昇した。このままゴブリンの上も通過すればいいように思うが長時間魔法を行使し続けるのはなかなか難しい。イメージし続けるというのがまだ自分には難しいからだ。ここら辺もよく練習しとかないとね。
「あれってゴブリンだよな?」
「あぁ そうだ コウはゴブリンと会うのは初めてなのか?」
「初めても何も俺のいた世界には存在しない空想上のものだしね」
そんな感じでしばらくの間静かに雑談をしていた。そこまで時間はたっていなかったと思う。一瞬静かになったかと思うと今度は雄たけびのような声が上がり金属同士ぶつかり合う音が鳴り響いた。
「なんだ!!」
「戦闘が始まったのぉ~ コウよ隠形を重ねがけしておけ! あと防壁もはっておけ!」
俺はリアに言われるがままに隠形と薄い膜のようなものである防壁をはった。その間にも戦闘は激しくなっていき、あたりには悲鳴もこだましている。
「人間が討伐にきたようだのぉ~ しばらく待てば時期に静まるであろう」
リアはとても冷静だ。だが俺は冷静ではいられなあかった。目線のすぐ先でゴブリンが切り捨てられ血を噴き出しながら倒れていくのだ。さっきまで言葉を発していた生物がだ。ものすごく気分が悪くなり吐き出しそうになってしまった。
一か月の間に食料を確保するために森の動物を仕留めて調理することはあった。調理の方法などは知らなかったのでリアに教えてもらった。だがそれはあくまでも生きるためだと割り切ることができたので少し気持ちが悪くなる程度でそれほど辛くはなかった。
だが、今目の前で繰り広げられていることはどうだろう?俺には割り切ることができなかった。虐殺のように感じてしまったのかもしれない。理不尽に思ったのかもしれえない。でも、たぶん一番ショックだったのは自分と同じ人がこの現状を作り出していることが受け入れられなかっただと思う。うまく言葉に表せないが・・・
俺がこの世界で生きていくためには非情にならなければならないのだろう。降りかかる火の粉は自分で払えるようにならなければならないとこのとき改めて感じたのだった。
リアのいうように三十分もしないうち戦闘は治まった。俺たちは、それから人の気配が消えるまでもうしばらく待ち村に向けて足を進めるのだった。
あれからは危険な場面に遭遇することもなく順調に進んだ。暗くなってきたころには、テントというかアオの空間に保管してあった俺の家を出し晩飯を済ませ早めに床についた。リアたちは、数分もしないうちに寝息をたて始めたが俺はなかなか寝付くことができなった。当然だろう、つい数時間前のあの光景のことが頭から離れなかったのだ。結果、ぐっすりと眠ることができずほぼ徹夜の状態で朝を迎えてしまった。
空が白くなり始めたのは、五時ぐらいだったと思う。俺は、眠気を覚ますために魔法でそこそこ冷えた水の球体を作り顔を洗った。一応魔法で周囲を探っておく・・・不審な気配はないから大丈夫だろう。
しばらく魔法の練習をしていると六時ころにはリアたちも起き始めた。出発の準備といってもアオが飲み込むだけなんだけど準備をし六時半ごろには、出発した。
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今の時刻は日の昇りからして午前十時ぐらいだろう。リアがいうには、村まであと半日ほどらしい。ついでに今の状況は目の前、距離にして20メートルほど張られたところに傷だらけのゴブリンが二人いる状況だ。たぶん昨日のゴブリンの集団の残党だろう。体中のいたるところに傷跡があり目を見る限り話し合いの余地はなさそうに思う。
昨日よりは危機的状況ではないとはいえ自分には戦うことができるだろうか?あちらさんは、完璧やるきみたい・・・
「コウよ! 戦闘向けの魔法は使えるようだが・・・戦えるのか?」
とうとうリアに質問されてしまった。
「・・・正直難しいと思う、俺に戦闘経験はないし」
「やはりのぉ~ 昨日の様子を見るにそうではないかと思ったよ」
どうやら、リアには全部お見通しのようだ。リアは続けた。
「だが、コウよ! これから旅を続けるのであればこの場面はコウ一人で乗り超えてみなくてわな~ 私は、ギリギリまで手を出さんからよろしくな~」
「え!? 俺一人でやるの!?ムリムリムリムリ・・・」
「そんなこと言っている暇はないぞ~ ほらほら前向いてがんばった!」
俺はすぐに前を向いた。さっきまで20メートルは離れていたのに今ではあと10メートルにまで近づいていた。
「やば!!!」
俺にとって生まれて初めての戦闘が理不尽にも始まってしまった。
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