周りが勝手に強くする

いつもの日常の午後、いつも通りに授業を終え放課後の帰宅、部活にはとくに入っていないので友達と少し話した後分かれ道で別れる。今日も昨日と変わらない一日を送った。




・・・のは先ほどまで




今はなぜか何もない白い空間にいる。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ は?」




やっと出た言葉は意味のなさない言葉だった。




「いやいや、まて なんで俺はこんなところにいるんだ!? さっきいつもの道を曲がっただけだぞ!?」




「はいは~い☆ お取込み中のところ~ すいませんが落ち着いてくださいね~」




「ひゃっ!?」




どこからか突然子供のような無邪気な声が聞こえる。まだ声変わりしていないのか男か女かは定かではない。




「え~と、、なになに~? 芦名 健也さんですね~ この度は異世界召喚にお答えいただきありがとうございま~す 現状に大変驚いているとは思いますがしばらく私の話を聞いてくださいね~」




「へ? は?」




「では続けますね☆ 今回の召喚は勇者召喚となります ある世界の魔王の手からお救いしていただきたく召喚の儀を行われた模様です~ また、芦名さんは今回が初めての異世界召喚ということで召喚の際のサービスについてもお話しさせていただきま~す 異世界に渡る際には多大なエネルギーを取り込むこととなります~ そのエネルギーをそのままに異世界を渡ることは死へとつながることになりま~す 魂の消滅という完全な死ですね☆ そうならないために異世界に渡る際に私のような存在がその者にスキルとして力を与えることとなっています~ ここまでで質問はありませんでしょうか~?」




「へ? あ、と、あなたは誰ですか?」




「私ですか? 私は・・・皆様の言うところの女神のようなものです~」




「はあ・・・ では女神様、ここはその異世界召喚の中継地と思っていいですか?」




「はい、問題ありません~」




「元の世界に帰ることは出来るのでしょうか?」




「できますね~ ですがすぐに帰ることはできませんね 今回の場合であれば魔王の討伐が条件となります~ 討伐の数分後に元の世界へと帰る形となります~」




「拒否権は?」




「芦名さんは魔法陣による契約を行ってしまったためできません~」




「はあ、わかりました では、力を与えてくれるとかスキルがなんたらと言っていましたが何をくれるのでしょうか?」




「そちらにつきましてはこちらから選ぶこととなりま~す」




そう声がすると目の前に一冊の分厚い本が現れる。表紙には『72』と書かれており中を開いてみるとスキル名スキルの詳細あとそれぞれに数字が割り振られている。




「その本の中からお選びくださ~い そちらに書かれているものは芦名さんの獲得可能なスキル一覧となりま~す 本の表紙に書かれている数値以内になるようにスキルをお選びくださ~い 右から左へ文字をなぞることで獲得となります~ 取り消したい場合は反対にどうぞ~」




俺は言われたとうりにしてみる。試しに『体術の極意』と書かれたスキル名をなぞると文字の色が変わった。表紙を見ると『72』だった数字が『52』になっている。俺は面白くなりどうせならと長い時間をかけて様々なスキルを確認していった。




どれぐらい時間がたっただろうか一通りのスキルを確認し終えた。俺は『剣術』2、『体術』2、『隠密』2、『雷魔法』4、『水魔術』2、『成長速度上昇』30、『獲得経験値増加』30、のスキルを獲得した。ステータス上昇系に重点を置いたのであまり強いスキルを手に入れることができなかった。あとは勇者らしいので剣術を、武術などを習っていたわけではないので体術を、隠密は忍者に憧れて、あまりで手ごろな魔法を獲得した。




「やっと終わりましたね では、これより芦名さんをお送りいたし・・・・・ん? ちょっと、待ってくださいね~ 確認してきます~ ・・・・・・者・喚・・止? ・・・・・・は・・に倒・・た? ・・・・・芦名さん、どうやらすでに魔王は討たれたようです~ ですので目的達成とみなし元の世界へと帰還することとなります~ お疲れさまでした~☆」




そういわれると俺はいつもの通学路に立っていた。




「っ~~~~~~~~~~~ なんでだーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」




その日俺は一瞬だけ勇者となり元の生活へと戻った。






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あれから数ヶ月、何もなかったかのようにこれまで道理に生活している。本当に平穏な日常だ。変わったことを強いてあげるならば最近勉強が苦にならなくなったことだろうか?今までが嘘のように授業内容を理解できるのだ。英単語なんかも覚えるのに苦労していて苦手意識があったが最近はすんなり覚えることができる。




後は・・・あっ、体がものすごく動きやすい。運動すればするほど自分が成長しているのが実感できるのだ。最近では朝にランニング、夜に体幹トレーニングをしているくらいだ。少し肌寒い朝の気温がとても心地いい。




こう考えてみるとあの時を境に調子が良くなったような気がする。やっぱり夢じゃなかったのかな?まぁ今日も今日とていつも道理に下校をしている。




俺は自宅のドアを開けた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・開けたよな?




いつの間にかあの白い空間にいる。




「はいは~い☆ お久しぶりです~ またまた召喚にお答えいただきありがとうございます~」




「・・・えーと、召喚されたということですか?」




「はい~ そうです~ 今回の召喚は魔王召喚です~ 勇者の撃退が期間条件となりま~す」




「やっぱり拒否権は?」




「ありませんね~ 召喚されたくないのであれば魔法陣の中に入らないようにしてください~」




「え? どこに魔法陣があったんですか?」




「扉に描かれていましたよ~」




「マジですか・・・」




「マジですね~」




死角にでも魔法陣が書かれる決まりでもあるのだろうか? ニ回目なのに召喚陣を確認していない・・・




「はぁ~ スキルを選べばいいんでしょうか?」




「はい~ 話が速くて助かります~ ではこちらからお選びください~」




そういうと虚空から表紙に『108』と書かれた前回よりも分厚い本が現れた。煩悩の数ではないはずだ。




「前回よりも表紙の数字が大きいのは何か理由があるのでしょうか?」




「理由ですか~? ニ回目の召喚のために前回よりも効率よくエネルギーを集めてしまったものと考えられます~」




俺が召喚されることに慣れたということだろうか?まぁ深く考えてもわからないし別に大丈夫だろう。


さてさて今回はどのスキルを選ぼうか・・・




俺は悩んだ末、ポイントが大きいのだからと『空間魔法』100を取り残りで『魔力』2、『ステータス把握』2、『闇魔法』4、を獲得することにした。空間魔法はファンタジーの定番みたいな魔法だし丁度いいから取りたかったのだ。他のスキルについては魔法を使うためには魔力が必要らしく俺にも少しはあるようだが発動には足りないようなのでこのスキルを、ステータス把握は自分のステータスを見るためには必須スキルだったらしく前回の反省を兼ねて獲得。あまりで魔法をといった考えだ。




「また、だいぶ悩んでいましたね~ では、これより芦名さんをお送りいたし・・・・・・あら? ちょっと待ってくださいね~ ・・・・・・・ま・・止・・か? ・・・・・・・自・・王の罠・・・ら・・と?・・・・・・芦名さんどうやら勇者は既にいないようです~ ですので目的達成とみなし元の世界へと帰還することとなります~ お疲れさまでした~☆」




そういわれると俺は玄関の前に立っていた。




「あ、お兄ちゃんお帰り夕食はまだだから先に風呂に入れ~だって~ ・・・突っ立ってどうしたの?」




「・・・・・・・・・・またかよ!!!!!」




その日、俺は一瞬だけ魔王となり元の生活へと戻った。






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あれからまた数ヶ月これといったことはない。普段の生活も変わりなく生活できているし普通の学生の日常を送っている。違いがあるとすれば体が異様に軽いことだろうか?運動することが楽しくなってしまいあれからも時間を見つけては体を動かしている。空手の型の動画を見よう見まねでやっていたところを妹に見られてしまいめっちゃ揶揄われてしまった。どうせならどこかの道場にでも通おうか悩んでいるところだ。




因みに俺の今のステータスはこんな感じです。




芦名 健也 Lv1


HP 2623/2623


MP 2332/2332


スキル


『短剣術Ⅱ』『剣術Ⅲ』『体術Ⅴ』『身体能力Ⅴ』『隠密Ⅲ』『魔力Ⅲ』『学習Ⅷ』『暗記Ⅶ』『暗算Ⅵ』


『水魔法Ⅴ』『雷魔法Ⅳ』『闇魔法Ⅳ』『空間魔法Ⅲ』


『ステータス把握』


『成長速度上昇』『獲得経験値増加』『身体強化』『身体超過』『魔力強化』『魔力超過』『魔法の才』『直観』


称号


『勇者』『魔王』




レベルの上げ方がわからないのでレベルは1のまま、スキルは面白いくらいに成長した。獲得したスキルの成長以外にも普段の生活でスキルを獲得することもあった。学習やら暗記やらは学校での勉強によっていつの間にか獲得していたらしい。身体能力は毎日の運動の成果であろう。短剣術はいつ手に入れたのかがわからない。たぶん料理のときかな?包丁が短剣扱いになったとか・・・




後は称号で獲得したらしい。勇者の称号より身体強化、身体超過、直観。魔王の称号より魔力強化、魔力超過、魔法の才。俺はいつ勇者になって魔王になったのだろうか?この称号はとても恥ずかしいのだが・・・




このステータスがどれだけ強いのかはわからない。比べようがないからという理由もあるが自身の力を全力で試す場がないというのが大きな理由だ。




スキルの詳細な部分もステータス把握で確認できるが現在のレベルの情報しか確認できない。例えば水魔法Ⅴであれば使える魔法はレベルⅤまでのものらしい。ちょっとイミガワカラナイ。まあたぶんであるが権限が解除されるようなものではないだろうか?あとはそれを行使する上での補正のようなもののように思う。




水魔法で俺が使ったのは飲み水を生成する魔法だ。水の成分も若干いじれるらしく自分好みの水の味に変えるのには大分苦労した。あとは水球を作ることができた。所謂ウォーターボールだ。他には水を勢いよく発射したり水の壁を作ったりレベルⅤになったときには水を圧縮できるようになった。これにより今までは水びだしになるだけであった水の魔法が物理的に痛い感じにできるようになった。




他の魔法も似たようなものだ。たぶんだがレベルⅤ以上にならなければ戦闘で使えるようにならないのではないだろうか?レベルの低いうちはスキルによる恩恵が極端に低いように感じるのだ。まぁないよりはあった方が補正があるのだろうが・・・




まぁそんな感じで自己鍛錬に励んでおります!サーイエッサー! 別に何かと戦うわけでもないのだが・・・




今日も今日とて学校に行きますか~




いつも道理の登校中曲道で何気なくカーブミラーを見るとよく分からない模様で描かれた円形のものを見つけた。




「・・・は?」




しばらく眺めているとその模様が別々に回り出し、回る速度が上がっていく。瞬きをしてしまった後には白い空間にいた。




「・・・へ? もしかしてまた召喚された?」




「は~い☆ そうですよ~ お久しぶりですね~ 今回は複数人で召喚されたみたいですね~」




「・・・複数人の召喚? まさかとは思いますがカーブミラーに描かれていた円形の複雑な模様が魔法陣ですか?」




「今回はそれが召喚魔法陣ですね~ 直接認識、視認することで契約成立となるものですね~ 同時に今回の召喚についてもさらっと説明しますね~ その魔法陣を見てしまった方が召喚対象となる神隠しのような一種のトラップのような召喚ですね~」




「はぁ~ 前と同じようにスキルを選べばいいのでしょうか?」




「はい~ こちらになりまーす」




そう言うといつものように虚空から一冊の分厚い本が現れる。表紙には『264』と書かれていた。前よりも倍以上も増えている。俺はこの状況に慣れ過ぎてしまったのだろうか?




「わかりました 選んでいきます」




もうどうせだから魔法スキルを一通りとってしまうことにした。まず、『火魔法』2、『風魔法』2、『土魔法』2、『毒魔法』2、『木魔法』4、『氷魔法』4、『光魔法』4、『幻惑魔法』10、『合成魔法』10、『無魔法』20、『精霊魔法』30、『召喚魔法』30、『複製魔法』40、『分解魔法』50、『結合魔法』50、を取った。ポイントの残りはあと『4』になった。




魔法はまだまだ他にもあった。例えば250ポイント使う『加速魔法』といった魔法もあった。もっと高いポイントを支払った魔法もあるのだと思う。今回は魔法のレパートリーを増やそうと思ったから加速魔法はなしだ。




残りは何にしようか?う~ん・・・『投擲術』2、『隠蔽』2でいっか。




「あら~? 今回は決めるのが速いですね~ ではお疲れさまでした~ またの機会をお待ちしていまーす」




そういわれると俺は元の曲がり角に立っていた。




「へ?」




周りを見渡しても特に変化はなくいつも道理だった。




「何だったんだ? 結局何の召喚なのかわからない」




俺は少しの間その場で考えていたがすっぱりとあきらめ学校に向かうことにした。






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あのよく分からない召喚からまた数ヶ月たった。いや、よく分からない召喚ではないか・・・・




結論から言うと神隠しだ。女神様も言っていたようにもっとそのことを考えて行動するべきだったと今では後悔している。




あの日、そのまま登校し教室に入るとクラスメイトから悲鳴が上がってしまった。俺は訳が分からずいると教室に入ってきた先生に校長室まで連れ去られてしまった。そのあと、もはや尋問のように今までどこにいたのだ!?と繰り返し聞かされていると母さんが血相を変えて校長室に来たと思ったら俺を抱きしめて泣き崩れつてしまったのだ。




うん、俺は戸惑うことしかできなかったね。後々聞いてみると三ヶ月近く行方不明扱いにされていたらしい。その時になってやっとあの召喚の意味が分かったのだ。




そのあとは俺を病人扱いのように様々な検査をさせられたり、メディアが押しかけてきたりだとかでもう散々な目にあった。俺は健康その者というより健康過ぎたので一か月たったぐらいにやっと静かになった。




それから半月後ぐらいにまた行方不明だった学生が同時に三名登校してきたとかでメディアがまたも大騒ぎになっていた。たぶん、俺と一緒に神隠しにあった学生であろう。頑張ってくれと心の中で合掌しておいた。




あれから家に時折オカルト的ね方が尋ねることがあったがそのたびに警察に連絡しておりこれといった問題はなかった。それからは静穏無事に暮らしている。




ちなみに今のステータスはこんな感じだ。




芦名 健也 Lv1


HP 3101/3101


MP 4566/4566


スキル


『短剣術Ⅳ』『剣術Ⅴ』『投擲術Ⅲ』『体術Ⅴ』『身体能力Ⅶ』『隠密Ⅴ』『隠蔽Ⅴ』『魔力Ⅶ』『学習Ⅹ』『暗記Ⅸ』『暗算Ⅷ』『速読Ⅳ』『釣りⅢ』


『水魔法Ⅶ』『火魔法Ⅴ』『風魔法Ⅴ』『土魔法Ⅴ』『毒魔法Ⅴ』『木魔法Ⅴ』『氷魔法Ⅴ』『雷魔法Ⅸ』『闇魔法Ⅴ』『光魔法Ⅴ』『幻惑魔法Ⅲ』『合成魔法Ⅳ』『無魔法Ⅲ』『精霊魔法Ⅰ』『召喚魔法Ⅰ』『複製魔法Ⅲ』『分解魔法Ⅱ』『結合魔法Ⅱ』『空間魔法Ⅴ』


『ステータス把握』


『成長速度上昇』『獲得経験値増加』『身体強化』『身体超過』『魔力強化』『魔力超過』『魔法の才』『直観』『豪運』


称号


『勇者』『魔王』『神隠し』






とりあえず獲得した魔法スキルをレベルⅤまで上げようとした結果MPが化けてしまったように感じる。朝のランニングやら準備体操やらも継続しているからHPも上がっているのだが魔法の方が楽しいのだから仕方がない。うん、仕方がない。




やっぱり基本的に魔法はレベルⅤにならないと使い物にならないらしい。空間魔法がやっとⅤになって自分専用の空間を作ることができるようになった。今まで空間魔法はレベルⅠ視認できる空間の把握、レベルⅡ死角の把握、レベルⅢ長距離把握、レベルⅣ別空間の認識、レベルⅤ固有空間の作成、といったように実に地味な能力だった。さらにレベルが上がって次の能力が解放されたとしても初めからすべて理解できるわけではなく徐々に徐々に何度も行い慣れていくことで使えるようになってくるのだ。いまだにレベルⅠの視認できる空間の把握も完全には理解できていないように感じる。空間魔法のレベルⅩは何ができるのやらすごく楽しみです!はい!




他の魔法で一番愉快だったのは毒魔法かな? 毒魔法っていうからには毒の霧とか作る魔法なのかと思っていたのだが以外にもそういった現象を作るよりも毒について理解するような魔法だった。どういったものが自身に毒となるのか、また逆にどういったものが薬となるのか、といったように治療としても使える魔法だった。これはこれで楽しくいろいろ試すことができた。




速読や釣りといったのは本を読む時間を短縮したいな~と思って速読を頑張っていたら獲得、友達と長期休みの間に釣りにはまってしまいいつの間にか獲得といった感じだ。




そして称号『神隠し』によって豪運を獲得した。女神様からのお詫びのようなものなのだろうか?今のところ恩恵を受けた形跡はないように感じる。




相変わらずレベルの上げ方は分からずじまいと。。。


はて、俺はこんなにステータスを強化してどこへ向かっているのだろうか・・・




空間把握の理解が進んでからは召喚に引っかからない用に周りを注意するようにしている。わずかな魔力の揺らぎを感じたら迂回するように道を進むようにしており三回ほど回避できているように思う。まぁ思うだけで無駄に遠回りしているだけなのかもしれないのだが・・・




そんな感じで過ごしていたのだよ。さっきまで・・・




「いや、あのさぁ・・・ 学校全体に魔法陣はひどすぎるでしょう~」




「お久しぶりです~☆ その様なことを私に言われましても困りますよ~ なんかあまりにも人間が不利すぎるみたいでしてやけくそ気味に召喚したみたいですよ~ 因みに芦名さんの学校以外にも5校ほど巻き込んでいるようです~」




「HAHaHaHaHaHa 神様って何考えてるんですか?」




「さぁ~ 皆目見当もつきません~☆」




白い空間に無責任な声が響き渡っている。厭きれの要素もたぶんに含まれているように感じる。




「はぁ~ そういえばここに自分しかいないのはなんでなんですか?」




「それはですね~ 召喚された回数によって分かれているからですね 何回も召喚されている方に無駄な説明をしても意味ないですし~ 一緒に神隠しにあった三人組も別で説明を受けてますよ~」




そんなものなのだろうか?まぁどっちにしてもそこまで変わらないか。




「わかりました 今回もスキルを選べばいいのでしょうか?」




「はい~ こちらになります~☆」




そう聞こえるといつものように虚空から一冊の分厚い本が現れる。表紙には『612』と書かれていた。まただいぶポイントがインフレしてるな~ この言葉意味わからないな。




さて、今回はどうしようか。前回は魔法のレパートリーを増やしたんだっけか?ポイントが以上に食うスキルでも探してみようか。




しばらく黙々とページをめくっていく。へ~、こんなに魔法ってあったんだな~ ほとんど理解できない名前の魔法が大半だけどたぶん『時魔法』って時間止めたりできる魔法なのかな?でもな~今回は魔法じゃないのにしたいしなぁ~




あ~でもないこーでもないと独り言を言いながら俺は興味を惹かれたスキルにすることにした。まず一つ目が『ナビゲーション』600を取得した。名前からしてサポートしてくれるようなスキルな気がする。残りの『12』で『料理』2、『掃除』1、『洗濯』1、『家事』2、『鍛冶』2、『器用』4、を取得した。




「やっと終わりましたか 独り言はほどほどしないと変な目で見られちゃいますよ~ ではお疲れさまでした~☆ またの機会を~」




そういわれると自分の席に座っていた。




「ん?」




あれ?神様のやけくそ召喚されたんじゃなかったのか?周りの皆は・・・まだ戻って来てないのか机に突っ伏しているようだ。




「ん~ 俺も同じ体制でいるとするか」




しばらく仮眠をとっていると隣の席の人に体を揺すられ起こされた。






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あれからまた数ヶ月たった。結局あの召喚が何だったのかは分からずじまいだ。学校のほかの皆はと言うと普段と変わりない生活を送っている。召喚されてすぐのころは一部の人たちが「ファイヤーボール」とか叫んで中二病患者が増殖していたがそんな簡単に魔法が出るわけもなく徐々に治まっていった。




なぜ魔法が使えないのか?と初めは疑問に思ったが普通に考えて魔力が足りないからだと理解した。俺のときも魔力が足らずにニ回目の召喚のときに『魔力』のスキルを取ることで使えるようになったし初めの召喚で『ステータス把握』が必須であることを知る人がどれだけいるだろうか?いやいないだろう。という考えになった。




実は、校舎裏とかで時折弱い魔力の反応があることから幾人かは必須スキルに気づいて取得したのだろう。例の神隠しにあった三人あたりなら気づくように思う。




でも本当にあの召喚は何だったんだろうな~ スキルだけ与えて元の世界に戻ってきてしまったし目標が勝手にクリアしてしまったのだろうか?




「ほんとなんだったんだろうね~」




〈マスター 何のために『ナビゲーション』を取得したのですか いい加減質問してください〉




「おわああああーー」




ヤバい、授業中に大声出したからみんなに白い目で見られてら~ あ、先生の眉がぴくぴくしてらっしゃる。




俺は静かにそ~と座りなおした。 ほんとすいません・・・




「えーと 今のは何だったのかな?」




小声で口元を隠して話してみる。




(マスター 私はマスターが取得した『ナビゲーション』スキルです 本来であればマスターが『ナビゲーション』を呼び、私が答えるのが普通なのですが マスターは一向に私に質問する気配がないようでしたのでこちらから声を掛けさせていただきました)




ん? とーなると この頭の中に聞こえて来る声は『ナビゲーション』スキルの効果ってことか?てか、今の今まで忘れてたわ・・・




〈マスターは私のことを忘れていたのですね〉




あのー怒ってらっしゃるのかな?声のトーンに変化がないからわかりにくいけどそんな気がするのだが・・・ というか心の声が聞こえるのか?




〈はい 聞こえています 私に怒りというものはありませんのでそのようなことはありません〉




いや、怒ってるよね?




〈いいえ、怒っていません〉




・・・・・・さいですか。初めに声を掛けられた感じだとあの召喚の理由を知っているみたいだけど教えてくれますか?




〈・・・・・あの召喚は本来の召喚とは異なります。とある者がやけくそ気味に召喚したようですが一度に1000を超える人数を召喚するのは流石に問題があるとして召喚自体が中止となったようです。しかし、すでに世界の狭間に来てしまっていた者たちにはその身を滅ぼさないようにスキルを与えられることとなった次第です〉




ふむ、ということはあれは事故ってことでいいのか?




〈はい、それで問題ありません〉




なるほど、わざわざありがとう。




〈いえ、それでは失礼します〉




うん、それといつでも話しかけてくれていいから気兼ねなくこれからよろしく~




〈・・・・・はい、よろしくお願いします〉




ふむふむ、なるほど、事故ね~ ほんと神様何やってるんだろうね~ まぁ、これで気になっていたことが解決してめでたしめでたしだな。スッキリしてよかったです。




そのあとは、授業が終わった後、先生に指でひょいひょいとやられてしまい俺だけ宿題を多くさせられてしまった。げせない!!




あ、今のステータスはこんな感じです!




芦名 健也 Lv1


HP 3414/3414


MP 5008/5008


スキル


『短剣術Ⅴ』『剣術Ⅴ』『投擲術Ⅳ』『体術Ⅵ』『身体能力Ⅶ』『隠密Ⅵ』『隠蔽Ⅶ』『魔力Ⅸ』『学習Ⅹ』『暗記Ⅹ』『暗算Ⅹ』『速読Ⅵ』『釣りⅣ』『料理Ⅱ』『掃除Ⅲ』『洗濯Ⅱ』『家事Ⅱ』『鍛冶Ⅲ』


『水魔法Ⅸ』『火魔法Ⅶ』『風魔法Ⅶ』『土魔法Ⅶ』『毒魔法Ⅵ』『木魔法Ⅵ』『氷魔法Ⅵ』『雷魔法Ⅹ』『闇魔法Ⅵ』『光魔法Ⅵ』『幻惑魔法Ⅴ』『合成魔法Ⅵ』『無魔法Ⅴ』『精霊魔法Ⅰ』『召喚魔法Ⅰ』『複製魔法Ⅴ』『分解魔法Ⅲ』『結合魔法Ⅲ』『空間魔法Ⅵ』


『ステータス把握』『ナビゲーション』


『成長速度上昇』『獲得経験値増加』『身体強化』『身体超過』『魔力強化』『魔力超過』『魔法の才』『直観』『豪運』『器用』『幸運』


称号


『勇者』『魔王』『神隠し』『神の悪戯』




だんだんと俺は魔法馬鹿になりつつあるように思う。もう魔法が楽しくて楽しくていろいろと試しまくってらMPがおかしなことになってしまった。このままいったらMPだけ倍になるのかな?




称号に関しては神様側の手違いみたいな感じで怒った召喚なのに『神の悪戯』という称号はどうなんだろう?この称号で手に入るスキルは『幸運』となる。前の『豪運』と合わせて運気系のスキルを二つ持っているのだがそこまで運気が上がったようには感じない。俺のもともとの運気はそんなにもダメだったということだろうか?あ、でも、召喚っていう名のトラップにもう4回も引っ掛かっているのだから運は本当になさそう・・・ なんか泣けてきた。




で、相も変わらずレベルは1と。ここら辺をナビちゃんに聞いてみようか。もしも~し、ナビちゃ~ん!




〈はい なんでしょうか マスター〉




お、返事してくれた。 レベルの上げ方を教えてください!




〈はい レベルを上げるには魔物を倒す必要があります 魔物を倒すことにより・・・・・・・〉




なんか難しいこと言ってるけど全然わかりません! 簡潔にお願いできませんか!




〈・・・・・ 簡単に言いますと 魔物を倒す、経験値獲得、レベルが上がる になります また、この世界には魔物が少ないため遭遇することがほとんどありません〉




魔物を倒さないとレベルが上がらないのね この世界にも魔物がいるの?




〈はい この世界で言う魔物は日本で言う妖怪ですね〉




え?妖怪いるの?




〈はい います なぜか隠れていますが〉




いるんだ妖怪・・・ 俺には関係ないからレベル上げは無理ってことかな~ ありがとう!ナビちゃん!




〈いえ、失礼します〉




結局、レベル上げは無理ってことだな。まぁちょっとずつHP、MPも上がってることだし何かと戦うわけでもないし気楽にしていても問題ないよね。






さらに数ヶ月、そんな感じで気楽に自主トレをしながら過ごしていたのだが・・・






学校の帰り道、音楽を聴きながらちょっと乗り気味に曲がり角を曲がるとなぜか黒装束のよく分からん人たちに囲まれた。上から下まで真っ黒の人が八人。近くには俺と同じ学校の学生三人が一緒に囲まれている。ん?三人?男一人に女二人の三人組どっかで見たことがあるような気がする。




「一緒に来てもらおうか」




唐突に一歩前に出て真ん中の黒装束の人が話しかけてきた。目線は・・・わからない。誰に話しかけているのだろうか?




「あなたたちは誰ですか」




三人の中の男がそれに答える。コイツ以外にイケメン。特に何かで飾っているわけでもないのにイケメンに感じる不思議。やっぱりイケメンでなければ女子とお近づきになることは難しいのだろうか・・・




〈マスターもかっこいいですよ〉




ありがとうナビちゃん お世辞でもうれしいです。




「私たちに名はない。裏に生き、裏で死んでいく。そんな者だ。君たち三人を主様が御呼びだ。一緒に来てもらおうか」




イケメンが答える。




「そんなわけのわからない話についていくわけが・・・・」




景色が真っ白い空間になった。




「・・・・・・・」




「おひさしぶりです~☆ 芦名さん~ 今回の召喚は眷属召喚になります~ 眷属の召喚の儀式の際に召喚主がアレンジを加えてしまったが故に異世界からの召喚となってしまったようですね~ 帰還条件としては一定期間の滞在となります 期間に関しては召喚主と要相談としてください 何かご質問等はございますか~?」




「なんでだ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」




「ひゃいっ!」




さっきまでなんかいい感じだったじゃん!なんかよく分からん組織に絡まれてこれからいろいろなことに巻き込まれていく的な感じだったじゃん!それが何で召喚!!いつ俺は魔法陣に触れたんだよ?いつ契約したんだよ!!




〈先ほどの会話の途中にマスターの足元にのみ極小さい魔法陣が展開され触れたことにより契約が成立したものと推測されます〉




的確なツッコミありがとう、ナビちゃん。それでも納得できるか~~~~~~!!!!!!!!!




「はぁ~~~~~ すいません 取り乱してしまって スキル一覧を確認させていただいてもいいでしょうか?」




「え? は? はいっ! どうぞ~ こちらになります~」




いつものように一冊の分厚い本が現れる。表紙には『1456』と書かれていた。とうとう四ケタ台に行ってしまったよ。こんだけポイントが増えるとめんどくさいな~




今回はどうしようか。う~ん、魔法の偏りがちな気がするし『〇〇の極意』シリーズの上にある『〇〇の真理』シリーズでも取ろうか。極意とは変わってポイントが跳ね上がってるし強そうだ。後は俺には運がないみたいだから運気系のスキルがあったら取ることにしようか。




そのあとも悩みながらスキルを獲得していく。まず、『剣術の真理』200、『武術の真理』200、『暗器術の真理』200、『覇運』500、ついでに『魔術の真理』200を取って残りが『156』となった。




残りは『精霊視』50、『五感強化』50、『記憶力強化』20、『状態異常耐性』20、『冷暖耐性』10、『錬金』2、『彫金』2、『木工』2、を取った。




「思ったよりも早く終わりましたね~ では、これより芦名さんをお送りいたし・・・・・はぁ~ 待ってくださいね~ ・・・・・また・・か? ・・・・・あ~・・ほど・芦・・んの・・・・られ・かっ・・いう・と・す・~ ・・・・・芦名さん、今回は召喚先の不手際により召喚不十分とみなし目標がないため帰還となります お疲れさまでした~☆」




そう聞こえると元の曲がり角の景色へと戻った。黒装束の人たちも三人もいなくなっている。




「結局戻って来た・・・ あ~さっきの黒装束の人たち気になるな~」




しばらくそこで未練がましくぐちってたが諦めて家へと帰った。






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あれからまた数か月たった。初めて召喚されてからもうそろそろで二年になるころだろうか?最近は受験勉強が大変ってわけでもない。スキルの恩恵により覚えたものは記憶に残るし覚えるのは早いのだ。ここまでくるとズルをしているように感じてしまう・・・まだ、ナビちゃんを使っていないだけいいよね?




あの召喚のあとあまりにも気になって学校で三人を探したのだがなかなか見つからない。聞き込みしていくうちに一つ下の学年であることやクラス、名前はすぐに分かった。失踪した三人組はある意味で有名な生徒だったらしい。俺はいつの間にかついでのようになっていたが・・・それは置いておくとして何度も直接会おうとしてもすれ違いになるばかりで一月ぐらいは頑張ったが面倒になり諦めた。何度か隠密フル活動で追跡したこともあったがどうしても途中で見失ってしまう。こう忽然とふわっと曲がり角を曲がった瞬間とか雑踏に紛れた瞬間とかに見失ってしまうのだ。あれは何だったのだろうか?




〈回答としましては曲がり角を曲がる際には転移、雑踏に紛れる際には隠形のような魔法反応がありました マスター〉




ということらしい。そして、どうやらあの三人組はスキルの習得を分担して行ったみたいなのだ。何かに特化したスキル習得を行いそれぞれがそれぞれをカバーできるようにしているらしい。そう考えると個人の召喚回数は俺の方が上だが三人組の個別の召喚回数の合計と比べると俺の方が負けてしまう結果になる。




あと、たぶんだけどあの三人レベル上がってね?




〈はい 少しづつではありますがレベルが上がっている模様です〉




やっぱりな~ そら~勝てないわ 俺は今だにレベル1だからな~ ちなみにナビちゃん?レベルが上がるとどんなことが起こるの?




〈はい レベルが上がりますと全体的な能力が上昇します。HPやMP、身体能力の上昇、また、スキルを獲得することもあります。この上昇値やスキル獲得率は個人差が大きくすべての者が同じ能力値になるわけではありません。レベルの上限は100です〉




へ~ レベルアップの恩恵は結構あるんだな~ 俺もそろそろレベルを上げてみたいところなのだが如何せんこの世界じゃ無理なんだろうな~




〈レベルを上げたいですか?〉




へ? 上げれるなら上げてみたいけど・・・ ナビちゃん出来るの?




〈はい では、今日から四日後の土曜13時47分に校舎裏の桜の木の下へ行ってください〉




やけに時間や場所の指定が多いいな・・・ 何か必要な物とかあるかな?




〈必要な物としては戦闘を行うこととなりますので心構えでしょうか?〉




わかった 思いつく限り準備をしておこうか






・・・それから四日後・・・






ナビちゃんここでいいのかな?




〈はい 問題ありません 幹に手を当てておいてください〉




言われたとうりに手を当てる。手元のスマホを見ると残り時間はあと二分だ。




戦闘があるということで俺は装備を整えてみた。まぁ、なんちゃってだけどな。服装は動きやすい普段着を着ている。防具は特にない。武器としては木刀と食事で使う時のナイフを大量に持っている。ナイフは投擲として使えないかな~と。こんなんで戦闘なんてできそうにないな。近づかれる前に魔法で倒すことにしよう。




イヤホンで音楽を聴きながら待っていると時間になった。桜の木が少し光ったように感じたと思うと周りの景色が白一色となった。




「・・・・・あれ?」




「お久しぶりです~ 芦名さん 今回の召喚は迷宮からの誘いですね~ また珍しい召喚陣に引っかかり・・・あら?ご自分から召喚されたのですか?それもまた珍しい~」




「え~と あの桜が召喚魔法なんですか?」




「いえ、厳密には違いますが神隠しと同じような一種のトラップです」




ナビちゃんはわざと引っ掛からせたってことか?




「期間条件は何でしょうか?」




「迷宮からの誘いの期間条件は召喚先の迷宮の踏破です 正確には迷宮のコアに触れることにより帰還することができます~」




「わかりました いつものようにスキルを選べばいいのでしょうか?」




「はい~ こちらになります~」




虚空から分厚い本が現れる。表紙には『2650』と書かれていた。この表紙のポイントは倍々に増えているのだろうか?また、時間がかかりそうだな~




〈マスター あるスキルの習得をお願いしたいのですが・・・〉




ポイントも余っていることだしナビちゃんの指定したスキルをまず習得することにした。まず、『鑑定』200、『インベトリー』400、『登録』50『代行』50『並列処理』100、『演唱破棄』100、『マッピング』400を獲得した。残りのポイントは『1350』何を取ろうかしばらく悩む。




『天運』800、『超成長』500、を高ポイントからなんとなく。残りは適当でいいか~ 『弓術』2、『槍術』2、『棒術』2、『治癒魔法』4、『自動回復』40、を獲得した。




「それでは決まりましたね~ これより芦名さんを送りいたします~ 行ってらっしゃいませ~☆」




そういわれると俺は薄暗い四角い部屋の中にいた。周りを見渡してみると目の前にのみ通路が存在する。その先は暗くて見えない。




「え? 来れたのか?」




〈はい ここは迷宮の中になります ここでなら魔物も多数存在しますしレベルを上げることもできるでしょう〉




お、お~ ここが迷宮なのか~ てか、初めてまともに異世界に召喚されることができたよ~




〈マスター 大丈夫ですか?〉




あ、うん。大丈夫。六回目の召喚で初めて異世界の地を踏むことができてちょっと感動しちゃった。




〈・・・・・ あ、はい では、行きましょうか〉




・・・・・スルーなのね ナビちゃんもだいぶ強かになったね。






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ダンジョンに入ってから二年以上経った。そう、二年以上経っているのである。このダンジョンあまりにも広大過ぎて遅々として攻略が進まないのだ。




このダンジョンは下に向かっていく形の迷宮だった。全200階層の迷宮。50階層ごとに中ボスの部屋が存在する。一つの階層に下への階段が複数個存在する。さらに一つ一つの階層が広いこと広いこと。行き止まりも多数存在するし何度も行き来しなければ道が開けないようになっている細工も施してあった。ひどい時には三十階層分戻されたこともあった。あの時は泣けたな~しばらく動けなかったよ。ははw




その中でも幸いしたのはダンジョンのルートが変わらないことだ。これだけ広いダンジョンでさらに一定期間ごとに道を帰られてしまったら俺は挫けていたと思う。まぁ、それでもこのダンジョンは鬼畜難易度には変わりないのだが・・・




魔物に関しては下へ下へと進むごとに徐々に協力になっていった様に感じる。なぜこんなに曖昧な表現なのかと言うと大半の敵が魔法一つで終了してしまったからだ。隠密で身を隠して進み、魔物を発見したら遠距離から魔法で急所を一撃、もし倒せなかったとしてもそのあと数発魔法を打ち込めば倒すことができた。魔法が効かない魔物でも探索途中で手に入れた投擲武器や長弓などで遠距離から一撃、長剣で一撃とあまり苦労らしい苦労はしなかった。俺は自分が思っていたよりも人間をやめていたようである。




食料に関してはナビちゃんのおかげで助かった。俺は長時間拘束されると思っていなかったので何も用意していなかったがナビちゃんは固有空間に準備をしていてくれたらしい。いつ準備していたのか聞いたところスーパーやコンビニなどのときにこっそり固有空間に移動していたとかなんとか。いや、それは新手のどろぼ・・・非常時なので黙認。よくよく聞くとお金も置いてきているとのこと。いつ稼いでいたのだろうか?まぁ、そんなこともあり飢え死にすることは回避された。途中に食用のモノもあった為どうにか生存できています。




本当に今まで大変でした。思い付きで行動するべきではないということなどが今回の教訓です。




それもあとはこの目の前に存在する最奥のボスモンスターを攻略すればおさらばだ。ナビちゃんもこの部屋が最後だと言っているし信じていいだろう。・・・ん?まてよ。ナビちゃんが最適ルートを教えてくれればここまで苦労しなかったのでは?




〈・・・・・・〉




いや、気のせいだ。今までのルートが最適ルートだったんだよ。うん。そう思おう!




今の俺の装備は初めの頃とは一変している。なぜか身長などは成長しなかったため普段着を魔法で直しながら使用。他の服として迷宮内で取得した服を着まわしている。なぜ迷宮に服が落ちているのだろうか?そこはスルーして装備としては動きやすいように皮鎧だ。全体的に暗い赤っぽい物を着こみその上から灰色のローブのようなコートのようなものを着ている。何を素材にしているかは未知であるが防御力は高い。武器としては迷宮内で取得した長剣をメインに短剣、長弓、投擲用のナイフを装備している。槍や斧なんかも拾ったが今は『インベトリー』の中だ。後は白い小さな石のはまった小さな指輪を装備している。これは魔法の補助として使っている。




さて、準備も整ったことだしラスボス戦と行きますか~




俺は目の前に沈黙している黒い大扉を両手で少しずつ開けていった。




中にいたラスボスは一本の角の生えた黒い竜だ。その鱗は光沢を帯びる黒であり鋭利な刃物のように見えなくもない。少し左寄りに生える一本の角は真っ白であり時折紫電が走っている。その巨体は優に十メートルを超えているのではないだろうか。




その竜は俺を視界に留めると数秒後無音の咆哮を放った。その圧力に耐えながらあまりの強大さに内心で愚痴る。




こいつはヤバいな いつもは確かめるようにバラバラにスキルを使っていたけどすべてのスキルをフル活用しないとぽっくり逝っちゃいそうだな ナビちゃん! 魔法はそっちに全部預けた 俺は俺で戦う




〈わかりました すべての魔法及びスキルを最適起動 これより行動を開始します〉




そう聞こえると俺の周りに無数の魔法陣が出現する。その中心から様々な魔物が召喚される。人型の鎧の騎士が大半だが中には二本の武骨な大剣を構えた巨人、大槌を肩に構えた小柄ながらも筋肉ムキムキな者、体の一部に獣の特徴を残したものなど様々だ。そのような者たちが何かに取り付かれているかのように一斉に黒竜へと殺到した。




俺はその中をスキルによって爆発的に底上げされた身体能力を使い幻惑魔法で惑わしながら突き進む。長弓の射程に入ると同時に黒竜の目に向けて狙撃した。土魔法により硬化し風魔法により速度を上げ無魔法により透明化し火魔法により着弾時に威力を上げる。そうしてもはや矢とも言えない代物を俺は連射した。黒竜は直前で気づいたらしく目への直撃はさけた。俺の弓は浅く傷を抉る様に作り出したのみに留まった。




〈魔法の連射を開始します〉




その言葉の直後色とりどりの魔法が黒竜に着弾する。だが、黒竜に直撃する手前に波紋が広がると魔法は殆どが防がれてしまった。




「ちっ」




魔法攻撃の種類を通用するものに限定 他の魔法はすべて強化、召喚に回してくれ




〈わかりました 開始します〉




そう指示を出しながらも弓の手は止めていない。黒竜はまだ俺を見失っているらしく探しているようだ。爪や尾の薙ぎ払いで召喚魔物の第一陣は壊滅状態になっている。再度召喚した第二陣があと数秒で殺到するところだ。




俺は弓ではあまり効果がないことを見て取り近接戦闘に切り替えた。まだ気づいていない黒竜の後ろ足へ回りその太い小指を切り飛ばした。若干返り血を浴びながらを前足と後ろ足の間を駆け抜ける。腹に長剣を振るうがその巨体に対してはかすり傷に等しい。




「チッ! デカすぎる!」




ナビちゃん! こいつには何の魔法が有効?




爪の攻撃の後に追撃するように放たれた炎のブレスを同じ炎で逸らしながら質問を飛ばした。




〈有効な魔法は物理的なダメージの伴う土、氷などの魔法です 氷で長剣を巨大にし正面に分解魔法を加えればどうでしょうか?〉




了解 それでよろしく 比率なんかは詳しく分からんから任せる!




土と氷の杭を乱射しながら距離を保つ。鬱陶しいのか眉間にしわが寄っているように感じるが気のせいだろう。第二陣、第三陣も壊滅に今は第四陣目が殺到している。魔物の比率が全体的に巨人寄りになってきているようだ。それでも爪の一撃や尾の一撃で消滅していく。




〈完成まで残り5、4、3、2、1、終了 構築します〉




その声と同時に俺は黒竜に向けて走り出した。途中幻惑魔法を置きながら突き進んでいく。頭上ギリギリを黒竜の紫電のブレスが通り過ぎたが耳がダメになっただけで済んだ。俺は最後の一歩を風魔法で一気に飛び込み黒竜の首下にたどり着くと同時に一閃。波紋が分解魔法とで相殺。振り切った残身の構えの時には氷の刃が端から砕け散っていった。一瞬のあと黒竜の首と胴体が別れた。




頭から黒竜の血を浴びてしまったがその血も一緒に黒竜は迷宮の床へ消えていく。俺はすべてのスキルを解除する。




「ふぅ~~~~」




〈お疲れ様です これにて迷宮踏破になります〉




ナビちゃんもお疲れさま~ これで終わりだね この後はどうすればいいのかな?




〈黒竜の消滅と同時に下への階段が出現します 階段を下り迷宮のコアを触れれば帰還できます〉




了解 なら、消滅しきるまではしばらく休憩だね~




これでやっと家に帰れる 迷宮に二年近くいたということはあっちの世界でも二年近く経過しているのだろうか? 自分が死んだ扱いになっていたらやだな~ まぁ、当初の目的どうりにレベルアップは果たすことができたしよかったのかな? おっ! 最後の最後でレベルが上げられたよ




今のステータスはこれ! どんっ!!




芦名 健也 Lv100


HP 108700/1079236


MP  33750/1523408


スキル


技術


『短剣術Ⅹ』『剣術Ⅹ』『大剣術Ⅹ』『弓術Ⅹ』『槍術Ⅹ』『棒術Ⅹ』『投擲術Ⅹ』『暗記術Ⅹ』『双剣術Ⅹ』『体術Ⅹ』『武術Ⅹ』『柔術Ⅹ』『歩行術Ⅹ』『隠密Ⅹ』『隠蔽Ⅹ』『身体能力Ⅹ』『五感強化Ⅹ』『記憶力強化Ⅹ』『鍛冶Ⅹ』『錬金Ⅹ』『彫金Ⅹ』『木工Ⅹ』『学習Ⅹ』『暗記Ⅹ』『暗算Ⅹ』『速読Ⅹ』『釣りⅩ』『料理Ⅹ』『掃除Ⅹ』『洗濯Ⅹ』『家事Ⅹ』『サバイバルⅩ』


『剣術の真理』『武術の真理』『暗器術の真理』『状態異常無効』『環境適応』『超速回復』『瞬歩』


魔法


『水魔法Ⅹ』『火魔法Ⅹ』『風魔法Ⅹ』『土魔法Ⅹ』『毒魔法Ⅹ』『木魔法Ⅹ』『氷魔法Ⅹ』『雷魔法Ⅹ』『闇魔法Ⅹ』『光魔法Ⅹ』『治癒魔法Ⅹ』『幻惑魔法Ⅹ』『結界魔法Ⅹ』『合成魔法Ⅹ』『無魔法Ⅹ』『精霊魔法Ⅹ』『召喚魔法Ⅹ』『振動魔法Ⅹ』『複製魔法Ⅹ』『分解魔法Ⅹ』『結合魔法Ⅹ』『空間魔法Ⅹ』『転移Ⅹ』『再生Ⅹ』『分析Ⅹ』『迷宮作製Ⅰ』『魔力Ⅹ』『登録Ⅹ』


『魔術の真理』『精霊視』『並列処理』『演唱破棄』


その他


『ステータス把握』『ナビゲーション』『インベトリー』『マッピング』『契約』『鑑定』『代行』


『成長速度上昇』『獲得経験値増加』『超成長』『身体強化』『身体超過』『魔力強化』『魔力超過』『魔法の才』『直観』『直感』『器用』『幸運』『豪運』『覇運』『天運』


称号


『勇者』『魔王』『神隠し』『神の悪戯』『眷属』『挑戦者』『迷宮踏破』




この二年俺は頑張りました。自分で言うのもなんだがこのステータスは異常だと思う。レベルが上がるごとのHPとMP上昇値がおかしいと思うんだ。初めの方は数千ごとだったのに最後の方だと可笑しな上昇値になってるから意味が解らない。




黒竜が消滅するとその下に階段が現れていた。俺は疲れた体をゆっくりと動かし階段を下りる。段数はそこまで多くなく数分降りると真ん中に白い球体の浮かんでいる部屋にたどり着く。たぶんあれがコアだろう。俺は、コアに手を触れると・・・白い空間にいた。




「迷宮踏破おめでとうございます~ これから元の世界へお送りしますね~ なお、帰還の際のエネルギーはこちらでスキルに変換させていただきます あちらの世界の時間は進んでいませんのでご安心ください それではお疲れさまでした~☆」




何も話す暇もないまま次の瞬間には校舎裏の桜の木の下にいた。




「女神様が言うには時間は進んでないみたいだな」




〈その様ですね〉




俺は体幹時間で二年ぶりの我が家へと音楽を聴きながらに帰った。






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それからまた数か月後、受験も終わりもうそろそろで卒業という時期。




「ただいま~」




「あ、お帰りお兄ちゃん 夕飯で来てるからすぐ来た方がいいよー」




「わかった すぐ・・・」




白い空間にいた。




「は?え? ここどこ?」




妹も一緒らしい・・・




「はいはーい☆ 勇者召喚にお答え頂きありがとうございま~す」




「ひゃっ!? 」




「はぁ~」




「お、お兄ちゃんなんでそんなに冷静なの?」




「え? 慣れてるから」




「え?え?」








ははは 俺のこの日常はまだまだ続くらしい・・・




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