記憶の書庫
この国で生まれた子供は10歳になるとレベルを上限である100まで上げることになる。そして、発現するスキルによってその後の人生が大きく左右されることになる。
レベルの上げ方は簡単だ。あるスライムを倒せばいい。名前はメタルバブルスライム。このスライムは王国の専門のスライムテイマーによって飼育管理されているスライムだ。このスライムの特徴はステータスが非常に高くそれに比例するように経験値を多量に獲得することができる。このスライムはHPと素早さ以外のステータスがほぼカンストしている。残りのHPと素早さは最低値である為、どんなに弱い攻撃でも倒すことができ中てることができる。
このスライムによってすべての国民のレベルを100にすることでこの王国は強国として成り立ってきた。どんな生物でも100になればスキルを獲得することができる。他の国ではスキルは神の授かりものだと生まれながらにでしかスキルを獲得できないと考えられているがこの国ではその常識は通用しない。10歳以上のすべての国民がスキルを最低でも一つ以上獲得しているからだ。
そんな国で生まれ10歳になった僕が獲得したスキルは・・・
記憶の書庫 だった。
別段何か不便になるようなスキルではない。自身が見聞き、認識した事象をイメージ内にある本棚に記録するスキルだ。簡単に説明するとめっちゃ記憶力が良くなるスキルだ。このスキルが発現したことで僕は図書館の司書として生きることにした。他の選択肢としては国の記録係や極秘情報の管理といった仕事場があったがどちらも身の危険が伴う職場のように思ったので選ばなかった。
僕がなりたかった職業は世界を旅するような職業が良かったんだけど戦闘関係のスキルがなければ非常に危険な世界のため諦めた。護衛を雇って見聞きした事を後世に残すというのもいいように思うがそれでも自身が足手まといというのは危険となる。
僕はこの一生をほとんどの時間図書館と共に過ごした。年齢にして86歳となり流行り病で亡くなるまで本を読み続けた。国の全ての図書館の本を読破した。哲学書から専門的な魔法論文、はてはくだらない自伝や料理本までジャンルを問わず様々な本を読み続けた。一時期は自身で本を書いてみようとしたが文才はなく本は書かなかった。
僕の記憶の書庫には数えきれないほどの本がギッシリと詰まっている。60を越えたあたりからは自身の書庫の情報を整理するようになる。結果、ジャンル別、重複している情報を整理することでスッキリとした本棚となった。
死の間際に確認したステータスは、特に76年間使い続けたスキルは大きく変化していた。
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Lv:100
HP:1000
MP:1000
攻撃:100
魔力:100
防御:100
精神:100
敏捷:100
スキル
記憶の書庫
【ステータス確認】【本棚】【速読】【自動記録】【記録整理】【記録検索】【記憶強化】【映像記録】【瞬間記憶】【思考加速】【事象記録】【知覚拡大】
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自身の努力の結晶を目で見て確認できたことに満足して家族に見守られながら死んだ。
というのが記憶の書庫を獲得した前世だ。
今世の俺は同じ国で生まれ10歳になりレベルを100にしたことでスキルを獲得した。
重ね というスキルだ。
このスキルは戦闘向きのスキルだと言われている。斬撃の威力を素振りで重ねることで威力を上昇させ相手を斬る。脚力を重ねることで速度を上げる等といった使い方をするスキルだ。だが、このスキルはそれだけではなかったようだ。
このスキルは事象を重ねることができる。前世で『記憶の書庫』を獲得した俺は死んで生きての輪廻転生を繰り返す中でその記憶を記録してきた。その中にはステータスも存在する。記録してきた情報が今世の『重ね』によりステータスを重ねた。これにより記憶の書庫に記録された情報を確認できるようになったようだ。
今、俺はレベル上げの最中だ。周りには俺と同い年の子供たちが弓をメタルバブルスライムに中てようとしている。思考加速を行いステータスを確認する。
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Lv:200(100+100)
HP:8000(30+10)
MP:4000(10+10)
攻撃:800(3+1)
魔力:400(1+1)
防御:800(3+1)
精神:600(2+1)
敏捷:999(4+1)
スキル
重ね
【二重】【三重】
記憶の書庫
【ステータス確認】【本棚】【速読】【自動記録】【記録整理】【記録検索】【記憶強化】【映像記録】【瞬間記憶】【思考加速】【事象記録】【知覚拡大】
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ステータスが大きく上昇している。ステータスの計算は簡単でレベル1の時の数値×レベルだ。さらに成長するには自己鍛錬で上昇ができるらしい。それは置いておこう。今確認するべきなのは『重ね』の【三重】の部分だ。このステータスは二重の状態まだもう一つステータスを重ねることができる。
ステータスは数えきれないほどある。俺はどれだけの輪廻転生を繰り返したのだろう?ザっと確認してみたがレベルが100に達しているステータスはこの二つ以外ない。最高でも70だ。レベルを100にするというのは難しいらしい。
雑多なステータスの中からレベル1のものを重ねる。そして、周りの子供たちと同じようにメタルバブルスライムを倒した。すると重ねたステータスのレベルが急激に上昇。それから数体倒しレベル100にする。
スキル『力持ち』を獲得した。
おお~ レベルを上げれただけでなくスキルも獲得できた。これはもっと様々なスキルを得ることができるということだ。それから俺は『記憶の書庫』のステータスは変えずに三重目のステータスを変えてはレベル上げ変えてはレベル上げと繰り返した。何度も重ねを繰り返していくうちに【四重】【五重】【六重】と重ねられる数が増えていく。一度にレベル上げができるステータスが増えたことで加速度的に消化していく。
しばらく続けていると一つのステータスをレベル100にするとまだ上げていないステータスが何十と消えていることが分かった。たぶん、同じスキルを獲得できるステータスだったのだと思う。その証拠に獲得したばかりのスキルなのに様々な発生スキルを発現させていた。
重ねられる数が増えたことと重複しているステータスが多かったことで施設が閉じるまでにはすべてのステータスを100にすることができた。スキルは重ねていなくても使えることがわかった。スキルは種類が多すぎるので大まかな分類にまとめる。
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Lv:1000【100×10】
HP:9999(10×10)
MP:9999(10×10)
攻撃:999(1×10)
魔力:999(1×10)
防御:999(1×10)
精神:999(1×10)
敏捷:999(1×10)
スキル
強化
【身体能力】【五感】【第六感】【バフ】【代償強化】【合成】・・・
弱体化
【トラップ】【デバフ】【レベルダウン】・・・
耐性
【状態異常耐性】【物理耐性】【魔法耐性】・・・
職業
【戦闘職】【魔法職】【技能職】【使役職】【職人職】・・・
魔法
【火】【水】【風】【土】【雷】【氷】【光】【闇】【重力】【時空】【回復】・・・
特殊
【体質】【異能】【亜空庫】・・・
記憶の書庫
【ステータス確認】【本棚】【速読】【自動記録】【記録整理】【記録検索】【記憶強化】【映像記録】【瞬間記憶】【思考加速】【事象記録】【知覚拡大】
重ね
【二重】【三重】【四重】【五重】【六重】【七重】【八重】【九重】【十重】
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ステータスが重複し過ぎたせいかレベル1の時点でのステータスが最小値になってしまった。なぜだろうか?まぁ、理由は分からないがこの状態でもステータスはカンストしているから今はいい。基礎ステータスを上げることに意味があるかはわからないが何か方法がないか試してみようと思う。
人間でないときのステータスの方が多いようでいくつか体の構造上使えないスキルも発現している。胃酸強化や牙強化といったところはいいのだが角強化や鱗強化といった無い部位はどうしようもない。
スキルの確認を一つ一つしたいが明日からしばらくは予定が入っている。レベルを100にしただけではそのステータスどうりの能力を発揮できるわけではない。このステータスはあくまで現在の上限値だ。今の状態は急激に上限値が上がっただけで能力自体はレベル1の時のままなのだ。明日からは上限値まで能力を上げるために訓練を受けることになる。上限値が低ければ一週間で終わるが今回はカンストだ。数か月かかるかもしれない。
自身の能力が上がり切ったかどうかは感覚でわかる。本当に何となくでわかる。これ以上腕立て伏せしても意味ないなぁ~ぐらいの感じでわかる。さらにステータスを成長させたいのであればこれ以降も自身に負荷をかけ続ければいい。過酷であればあるほど成長するらしい。やったことがないのでわからないが・・・
数ヶ月訓練場に通い続けても怪しまれることはないだろう。ステータス上昇を目指している人は結構な数がいる。俺が長く通い続けてもマゾの一人だと勘違いされるだけで済むはずだ。済んでいいのだろうか?ダメな気がしてきたが今回は仕方がない。
訓練と並行する形で少しづつスキルを確認していく。訓練が完了したら思考加速も用いて本格的にスキル確認を進めていこう。将来設計はそのあとでいいだろう。
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思ったよりもスキル確認に時間がかかった。スキルを獲得してから約半年近くたっている。その間はひたすら訓練、スキル確認、訓練、スキル確認の繰り返し。訓練が終了してからは瞑想しながらスキル確認を高速で行っていた。途中、迷走している気もしたが気にしない。
確認してわかったことはスキルは基本、単体で完結しているということだ。本来スキルは、他のスキルと組み合わせることを想定していない。そのためスキル名は違うが効果は似通っているスキルが多数存在した。だが、中には予想外の効果を発揮する組み合わせも存在する。『重ね』と『記憶の書庫』がいい例だ。今の状態は予定外の一種のバグなのかもしれない。
俺が見つけた他の組み合わせは『レベルダウン』と『代償強化』だ。
『レベルダウン』は対象のレベルを下げるスキル。対象との関係性が深ければ深いほどレベルが下がる時間が増える効果がある。なかなかに凶悪なスキルだが例えば敵対モンスターのレベルを1下げたとしても数秒で元に戻ってしまう。10も下げようものなら一瞬だ。対象との関係性というのが難しいスキルだ。
『代償強化』は何かを失った代償に強化するスキルだ。代償とした対象と等価の現象を強化するスキルとなる。例えば、両目を失明する代償に他の五感を強化するといったものとなる。失うものが大きければ大きいほど強化率が上がるスキルとなる。
この二つのスキルを組み合わせる。『レベルダウン』は対象との関係性が深いほどレベルが下がる時間が増えることから自身を対象としてレベルを下げたならば最大の関係性から永久にレベルが戻らないことになる。このことから自身のレベルを代償にレベル1の時点でのステータスをレベル1分上昇させる。そんな事ができないか試してみた。
結果はできた。99レベルを代償にHP、MPは990上昇。他は99上昇した。
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Lv:1
HP:1000
MP:1000
攻撃:100
魔力:100
防御:100
精神:100
敏捷:100
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この次にここからレベルが上がるのか試した。レベルは無事上げることができたがものすごく上がりにくい。必要経験値が膨大になっているようだ。まぁ、そうでないと代償にならないからしょうがないのだが・・・
レベルを効率よく上げるために『召喚』と『スライムテイマー』を組み合わせる。
『召喚』は倒した魔物を魔力で一時的に召喚、使役するスキル。本来であれば経験値など発生しない魔物が召喚されるが『スライムテイマー』の影響でスライムであればどんなスライムでもテイムし使役することができる。これに時間制限はないため生物として認識されるのか経験値が発生した。物は試しと試して本当に狙い道理になって驚いている。
これの御蔭でメタルバブルスライムを召喚、使役、討伐を繰り返すことで効率よく経験値を獲得できるようになった。ここから先はただ、繰り返す。レベルを上げてレベルを下げる。これを繰り返し続けた結果がこれだ。
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Lv:1000【100×10】
HP:9999(9999×10)
MP:9999(9999×10)
攻撃:999(999×10)
魔力:999(999×10)
防御:999(999×10)
精神:999(999×10)
敏捷:999(999×10)
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うん、また半年がたち年が明けていた。人目につかないところでやっていたがだいぶ奇異の目で見られるようになってしまった。でも、後悔はしていない。達成感はあるしステータスはカンストされて表記はされていないが能力は上がっている実感はある。ここから先は徐々に身体に慣らしていこうと思う。前回の訓練の時点で十分能力があることは分かっていたので焦る必要もないように感じている。
訓練が終わってからは探索者としてお金を稼いでいる。近隣の手ごろな魔物を倒しては換金してお金を稼ぎ空いた時間で自信を限界まで強化していた。このステータスまで来たら一まず満足だ。あとやりたいことと言ったらスキルの実践ぐらいだろう。スキルの数が膨大なため結構な数のスキルが死蔵している。他に有用なスキルがないか確かめたい。
他にやりたいことといえば、前世からの夢の世界旅行だ。気の向くままに世界を旅する。これだけのステータスとスキルがあれば危険は全くと言っていいほどに無いだろう。前世は図書館の虫となる人生だったが今世は広大な世界をその目で見てこようと思う。その、合間合間にスキル確認なり記憶整理なりをすればいいだろう。
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自身のステータス上昇に満足してからそれなりの年月が経っている。俺が生まれ変わった時代は前世である『記憶の書庫』を獲得した時代とそう変わらないようだ。
輪廻転生の中に時間の流れはないのだろうか?過去の様々な記憶を確認した限り、順番もバラバラであり統一性がない。新たな生命が生まれる場所に無作為に生まれているように感じる。それでいて同じ時間に同じ魂が存在しないようには操作されているように感じる。
俺は旅の途中、馬車の中などで記憶を時系列順に並び変えている。様々な視点から見る時代の流れの様で下手な歴史書よりも楽しい。書庫に記録されていた歴史の知られざる面が意外な記憶から明かされるのはとても面白い。所々穴があるのは仕方がないが今生きている時代までの歴史は完成させることができた。まぁ、この記憶も多分に主観が反映されている為正しいと言えないがそれは仕方ない。
スキルに関しても一通り確認した。確認して思ったことは多すぎて扱えないということだ。自身を強化させるスキルでも強化方法がそれぞれ違い、利点、欠点も同様に多種多様だ。この世界のスキルは一つのスキルで完結している影響だろう。
そこで『合成』スキルを駆使して効果の似通っているスキルをまとめることにした。だらだら話すよりも結果を見てもらった方が早いだろう。
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Lv:1000【100×10】
HP:9999(9999×10)
MP:9999(9999×10)
攻撃:999(999×10)
魔力:999(999×10)
防御:999(999×10)
精神:999(999×10)
敏捷:999(999×10)
スキル
『記憶の書庫』
【ステータス確認】【本棚】【速読】【自動記録】【記録整理】【記録検索】【記憶強化】【映像記録】
【瞬間記憶】【思考加速】【事象記録】【知覚拡大】
『重ね』
【二重】【三重】【四重】【五重】【六重】【七重】【八重】【九重】【十重】
『合成スキル』
【強化合成】【基礎ステータス強化】【使役召喚】【自己強化】【オールバフ】【オールデバフ】【吸収】
【異能魔法】【無限収納】【転移】【ヒール】
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最後まで残ったスキルは『記憶の書庫』と『重ね』のみ。他のスキルは全て合成した。合成系統のスキル、束ね合わせて強化するようなスキルを合成することで【強化合成】に。
【レベルダウン】と【代償強化】、その他デメリットとメリットを合わせたスキルを全て合成することで【基礎ステータス強化】になった。【レベルダウン】と【代償強化】の組み合わせたときと能力はそこまで変わらない。
【召喚】と使役系のスキルを全て合成することで【使役召喚】。
常時発動する強化系を全て合成して【自己強化】にまとめた。常に全体的に身体能力が上がっている状態になる。手加減なども意識しだいで問題なくできた。
【オールバフ】【オールデバフ】それぞれ魔力を消費して対象を強化、弱体化するスキルを合成することでできた。
【吸収】は耐性系を全て。【異能魔法】は魔法系、異能系を全て。【無限収納】も同様。
【転移】は移動系のスキルを集め魔力消費無しで発動可能に、長距離の場合は魔力を消費することで可能になった。
【ヒール】は回復系統を全て集め、自動回復系のスキルも全て合成したため、パッシブ、アクティブ、両方で回復技能が発動する規格外なスキルとなった。
以上が合成の結果だ。全体的にすっきりとしたがそれぞれの能力が規格外なものになったように思う。特に【ヒール】は突出しているかもしれない。吸収しきれない怪我をしても瞬時に回復する異常な性能を誇る。
このスキルの御蔭で何も心配なく旅を続けている。今のところ障害となる事柄もなく順調に旅時は進んでいる。前世の夢どうりに自分のペースでゆっくりとこの世界を隅々まで楽しもうと思う。
身体も徐々に慣れつつある。上げ過ぎたステータスによる煩わしさがあるかと思っていたが合成して整理したスキルは外見からは判断しにくい形に収まった為、面倒事に巻き込まれることは自分から首を突っ込んだ時ぐらいだ。
この世界の一種の不具合のような形で力を手に入れてしまったがこれはこれでよかったのかもしれない。
だってこんなにも楽しいのだから。
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