召喚された勇者はぐれている

祭壇の間。


魔王軍からの侵攻を抑えるために国の上層部は異世界から勇者と呼ばれる者の召喚の儀を行うこととなった。この召喚の儀に任命された神官は世界各国から魔力のこもった石、魔石を集め数年の歳月を経て今宵、新月のよる魔力の循環が最適なこの夜に勇者召喚の儀を執り行ったのだ。




この召喚の儀には多大な犠牲を払った。強力な魔石を集めるために何人もの騎士が魔物によってこの世を去った。上層部や国王のあの無茶ぶりに対して高名な神官は何度切れたことか。なにが早くしろ!だ。何が時間がない!だ。そんなことを口で言うぐらいなら魔王の討伐に行ってくれってもんだ。 


・・・神官はこの数年で性格が変わってしまったようだ。




それも今や昔の話。この召喚の儀さえ成功することができれば人類を救うことができる!世界を救うことができる!そう信じてここまでやってきたのだ。この儀式の祝詞もあとわずかだ。最後まで集中を切らさないように今までの努力が水の泡とならないように全力を注いでいく。




周辺で補助していてくれた神官の部下たちはみな魔力欠乏症により倒れてしまった。あとは私だけだ。残りの暗記した祝詞もあと一行、最後まで集中を切らさない。




神官が唱え終えると祭壇に描かれた魔法陣が目も開けられないほどに輝きだした。その光は徐々に徐々に増していき唐突に消えさり静寂が訪れた。




神官は恐る恐る目を開ける。儀式は失敗してしまったのか?またあの地獄の数年間を送らなければならいのか?もううざいからバックレてもいいよね?やっちゃってもいいよね? 


・・・神官の精神はもう崩壊しているようだ。




目を開けた先には一人の人物がたっていた。その者は、黒髪黒目。身長はそこまで高くない。顔が平べったく鼻がそこまで高くない。服装は全身黒。何やらコートのようなものについているボタンは今まで見たことのない装飾が施されている。




その者は、神官に視線を向けると




「ちっ」




舌打ちをした。




・・・




・・・・・・




・・・・・・・・・




はい? 神官は呆然としている。その者は神官の反応にイラついてきたのか足をせわしなく動かしている。




「で、なんで召喚したんだ?」




「あ、ああ、はい。 私はこの国の神官を務めさせていただいておりますハー・・・」




「前置きはどうでもいい どんな理由で勇者召喚なんてものをしたんだ?」




その者は神官の言葉を遮り人外の威圧を放ちながら質問してきた。




「こ、ここ、、これは、申し訳ありません、、、 ま、魔王の軍勢の侵攻を食い止めていただき、ま、魔王の討伐をお、おねがいした、、、!!??」




威圧がさらに増したことに神官は何もしゃべれなくなってしまった。




「はぁ~ 嘘はいけないよ~ 今は侵攻されているみたいだけどもとはと言えば自分たちの欲が原因じゃないか それを棚に上げて勇者にすがろうだなんて・・・」




神官は知らなかった。この王国が領土拡大を狙って侵攻を始めたのが原因であることを・・・




「・・・ん~ そっか もういいや、ありがとう あなた方は純粋に人類を救うために行動していたみたいだ なら、あなたたちは救おう この王国はダメだけど」




その者はそう言うと目お閉じてしまった。しばらくすると目を開け指を鳴らした。その音は大きくもないはずなのにやけに遠くまで響き渡った。




「はい、お終い 魔王と王国の国王、幹部、貴族、その他諸々消しといたからミッションクリアってことで帰ります さらば!」




「・・・・・・・・・へ?  あ、ちょっ・・・」




神官が最後まで言い終わらないうちにその者は消えてしまった。呆然自失から立ち直るには数日かかったそうだ・・・






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木々が生い茂る深い森の中。その奥は、普通の者であるならばただの切り立った崖が見えるであろう。普通の者でない者、例えば非常に高密度の魔力を保持する者、そんな魔力がなかったとしてもトラップなどを看破するスキルを最高レベルで取得しているものなどが見たらそこに崖だけを見ることはない。そこにあるのは、小屋だ。小さな小屋、一人暮らしには最適であろうサイズの小屋だ。




その小屋の中では、今にも死にそうな人族のご老人が一人住んでいる。御年250を過ぎるご高齢だ。この者は数百年前には賢者としてその名を馳せていた方だ。賢者と呼ばれるその知識で寿命を無理やり引き延ばしこの年までひたすらに魔法の神髄を追い求めた馬鹿だ。




そんな馬鹿でもさすがに無理が祟ったらしい。自身の寿命を理解し自分が成し遂げたことの虚しさを理解した。せめても今までの知識が無駄にならないように後世に残そうと考えたが託すものがいない。そこで賢者という大バカ者は他世界から人を召喚し託そうと考えたらしい。賢者は以外にも豆な人物だったらしく召喚し知識を託せたときその者を元の世界へ返す術式を書いていた。




「なるほど で召喚したのが目の前で完全に成仏してらっしゃる馬鹿だと・・・」




そんなような説明文を書いた賢者は魔法を唱え切ると力尽きている。




「まさか、この本を全部読めと? めんどくさいな ちっ」




最後に舌打ちをしたのは召喚された者だ。




「はぁ~ えーと。。 ふむふむ・・・」




その者は目を閉じ部屋全体に魔力をめぐらしていく。この小屋を看破できる者が見たら震えあがり何もできなくなるであろう。そんな高密度の魔力で満たされていく。




「ん? 地下にも・・・ はぁ? 何階層あるんだよ! しかも拡張されてるし!! はぁ~」




この小屋には地下にも空間があったようだ。その者は文句を言いながらもさらに魔力の範囲を広げていく。しばらくするとその者の足元が光り出した。




「・・・ん よし 終わりだな この爺さんは、椅子に座らせておくか うん」




賢者の遺体を椅子に座らせ終わると足元の光が消えると同時にその者もいなくなった。






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キーンコーンカーンコーン






今日の授業の終了のチャイムが鳴っている。毎回思うのだがこのチャイム音は誰が作ったのだろうか?このチャイム音はある意味すごいと思う。キーンコーンカーンコーンとなれば誰でも学校を連想するのではないだろうか?誰も不思議がることなく普通に受け入れてしまってるところが怖いと思うこのころ。




なんで、こんなくだらない思考をしているかというとチャイムが鳴り終わると同時に風景が色素が落ちたかのように灰色がかっているからだ。俺にとっては、もう何十回目となる光景になるのでなれって怖いよね?みたいな思考に陥っていたのだ。俺は、冷静でも周りはそうとは限らない。




みな突然のことに驚いていたみたいだが次の瞬間に俺以外は光に包まれて消えてしまった。




「ん? あー 女神様の配慮かな? 俺だけ別か~ 個人面接みたいだな~」




そんな事を呟いてるとしばらくして俺も同じように光に包まれ目を開けるともう顔見知りになりつつある異世界転移担当の女神様が目の前にたたずんでいる。




「相変わらず真っ白な部屋ですね~」




「また来たのですか? 貴方も物好きですね」




「いや 俺のせいじゃないですよね? あっちが召喚するから召喚されちゃうんですよね? もうやめてくれませんかね~」




「私が召喚を止めることは無理です 世界などそれは無数にあり把握するだけでも困難なのですから」




「ですよね~ 前も同じこと言ってましたものね~ はぁ~」




「では、本題に 今回の召喚方法は勇者召喚です 召喚を行った国は魔族領に喧嘩を売って返り討ちにあってもうダメムリってなってるバカ者たちがいるところです」




「え、え~と 大丈夫ですか? だいぶ言動が無茶苦茶になってますけど・・・」




「ええ 大丈夫です もう嫌気がさしているだけですので問題ありません 最近はこの手の召喚沙汰が多くてうんざりしていましてやめて欲しいですよね」




「ごもっともです」




「毎回、毎回 間を取り持つ身にもなってくださいよ どんどん、どんどん人数増やして10人ならまだしも1000人とか意味わかりません!! それぞれに話す時間がないから何も理解させてあげられずに渡っちゃうことも最近多いんですよ? そのたびに上司に怒られるし せめて転生神の人数増やせよ ボケが!!!」




「ほんと大変なんですね 無理言って申し訳ありませんでした」




「へ? はっ! いえ、違います 貴方に問題があるわけではないんですよ? 昨今の状況が理不尽なだけでストレス溜まってるだけで」




「はい 大丈夫です わかりました えーと どうしますか?」




「・・・話し戻しますね 異世界への召喚の際には世界から世界への間で増幅されるエネルギーをその者の才能にあったスキルとして発現するよう調節しています この調節がないとボンッですから」




「はい 覚えています 軽く言いますね」




「ええ 二度目の召喚でもそれは変わらないのですがあなたは大丈夫ですよね 片足突っ込んじゃってるようですし問題ないでしょう スキルに関してはいつものように習得してください」




「え? あ、はい わかりました」




「今回の帰還条件は半年間の滞在です 本来の世界の時間は止めておきましたので自由にお過ごしください また、他の皆さんには条件を知らせることができませんでしたので王国に知られないようそれとなく教えてくださればうれしいのですが大丈夫でしょうか?」




「あー わかりました 夢の中に天の声的な感じで教えれば大丈夫ですかね?」




「はい そのような形で問題ありません ・・・よろしくお願いします」




「了解です では、いってきます」




「ふふ いってらっしゃい」






女神様との話も終わりまた光に包まれる。目を開けると視界には俺と同じ高校の服を着ている男女がうるさくしていた。場所は石造りの神殿のような場所らしい。ぱっと見で1000人ほんとにいるみたいだ。学校丸ごと異世界転移に使われたらしい。俺はてっきりクラスだけだと思っていたから女神様も大変だったんだな~って聞いてたけど今回のが1000人召喚されていたと・・・




「そら~女神様も愚痴らずにはいられないわけだ うん」




そんな俺の声は喧騒の中に掻き消えて誰の耳にも届くことはない。それは置いといていつもの確認だ!今回は誰が召喚したのかなっと・・・




「ちっ」




また、おっさんだよ。今日はおっさんデーなの?なに?最近は召喚するやつはおっさんて決まってるの?呪いなの?普通かわいい子がやるもんでしょ?その王国の第一王女とか王妃とか女魔導士とかさ。せめて若い人にしようよ~。汗だくだくのおっさんて誰得なのよ。それ!




そんな事を心の中で話していると汗だくのおっさんの後方に待機していた騎士数十名が音を立てて剣を抜くことで先ほどの喧騒が嘘のように収まった。するとさらに後方にいた煌びやかなドレスに身を包んだ女性が姿を現し話し始めた。




その女性の話によると魔王が率いる軍勢に攻め入られて人類がピンチだから助けて的な感じで大事なところを省いたような説明だった。もちろん、こちらから攻め入って返り討ちにあっていることは隠して話している。帰る方法は?的なテンプレな会話もあったが魔王を倒せばもしかするとってやつだ。




さて、俺はどうしようか?今日は夜に夢の中に化けて出なければならないから仕事が終わったら転移で逃げればいいか。うん そうしよう




さっきの女性は王女だったらしい。長々とした話が終わると次は能力の確認をするのだとか。占い水晶みたいな物に手をかざすとその者が保持しているスキル、ステータスを確認できるんだとか。やばいな、まだスキルにしてないよ。何のスキルにしてしまおうか。う~む、欲しかったスキルは持ってるんだよな~ なんか極端なスキルに今回はしてみようか?バックステップ時どんな攻撃も無効なんかどうかな?よし、これにしよう・・・できた!あとは、他のスキル、ステータスを偽装隠蔽して・・・ 完成!! 




しばらく並んでいると俺の番になり騎士に声をかけられる。




「次、手をかざして・・・ また、新しいスキルだな ばっくすてっぷ?」




「バックステップみたいですね ありがとうございます」




お礼を言いすぐにその場を離れる。ふと、周りを見てみるとスキルに一喜一憂している人もいればいまだ状況が飲み込めずおろおろしている人、はたまた、絶望にくれたような雰囲気の場所もある。大半の人が動けるようになっているみたいだけどまだまだ時間がかかりそうだな。






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全員のスキル確認が終了すると召喚された者たちの中から代表で教師の半数ぐらいが謁見の間へと通されていった。たぶん、これからのことやさらに詳しい話をするのであろう。俺は、女神様から任された仕事を済ませたら別行動をするつもりだから関係ないであろう。少しくらいは話を聞いた方がいいかな?う~む、臨機応変にでいいよな。




こんな風にずっと独り言のように黙考できているのは俺にあまり親しい友達がいないからだ。この言い方だと語弊を生むかもしれないから付け加えよう。週に何回も異世界なんかに飛ばされてしまってるから休みの時間に話しかけてくる奴が徐々にいなくなってしまったのだ。俺から話しかければ普通に話してくれるからハブられているわけではないと思うのだが最近の学校生活は休み時間になるとよく突っ伏していた。非常に眠たかったのだよ。時折深夜に召喚させられてジャージ姿で召喚されたときはあきれてしまった。未意識に威圧を放っていたためか召喚された先の重鎮らしき人物たちがそろって失禁していた。それは置いといて徹夜したくもないのに徹夜させられることがあったのだ。連続で同じ国に召喚されたときは切れてしまった。どうなったかは割愛させていただきます。




まぁ、特に話しかけられることなく暇をしているのだ。散策してこようかと考えたが召喚された時間帯がだいたい夕方ぐらいだったらしくそのあとに説明、1000人のスキル確認とだいぶ時間がたってしまい夜遅くになってしまった。夜目の利くスキルもあるので不自由はしないが今日は疲れたのでめんどくさい。腹も減ってきたし夕食にならないかな~と思いながら待っている。




しばらくすると執事やメイドが食事の準備ができたとのことであり食事となった。さすがにこれだけの人数が入る食堂はないらしくいくつかの部屋に別れて食事をすることとなった。食事の際に謁見の間に通された教師が今後どうするかの説明があった。魔王討伐は希望する者だけになるらしい。そのほかの者は往生に滞在を許されるらしい。基本的に単独行動はしないように班に分かれるとのことらしい。班決めは明日発表とのこと。




この話を聞いて俺は仕事を終えたらすぐにこの城を出ることに改めて決めた。班なんて組まれたら自由に行動できないしね。




食事を終えると部屋へと案内された。普段は一人部屋の様だが急遽ベットをかき集め一つの部屋10~20人ずつの部屋にしたようだ。ほんと大変でしたな~執事さん方。部屋に通されるとみなこの状況につかれていたのか自分のベットを決めるて寝てしまった。




さてここからが俺の活動開始です!まず、自分の声を女神様の声に買えます。次にすべての人が深い眠りにつくように丁寧に隠蔽した眠りの魔法を場内に拡散させます。ちゃんと寝静まったかを確認したら悪夢を見させる魔法の応用で女神様を召喚された人に見させます。最後に夢の中の女神様の声と俺の声をリンクさせたら話すだけ! さぁなんて話そうか?




『勇者の皆さん この度は何も説明のない中異世界へと送ることとなり誠に申し訳ありません 伝え忘れていたことをお伝えいたします 皆様は今回の魔法の契約により半年間の滞在の後に元の世界へと帰還することとなります 元の世界の時間は停止していますので心配には及びません また、王国の方にはこのことを知られることの無きよう気を付けてください この度は誠に申し訳ありませんでした』




こんな感じで大丈夫だろうか?話し方が女神様と違うような気がするが・・・伝えることは伝えたから問題ないであろう。では、とりあえずこの国を出るか。おっと、声戻さないと・・・




俺はスキルを使い城壁の外へと転移した。その日は、次の街の近くまで移動したら木の上で野宿をした。途中魔物に遭遇したが問題なく討伐し回収~ 今後の資金とすることにする。






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翌日は、早朝にその街へと入った。もちろん転移で。




「よし とりあえず、脱出することはできたな」




さて、これからどうするか?街をスキルで見た感じだと冒険者ギルドみたいなのはあるみたいだからお金稼ぎはそれにするとしてしばらくはこの街に滞在だな。なら、ギルドに登録したら宿屋探して適当にクエストでも受けるか。その前に黒髪黒目は珍しいみたいだし変装だな。何がいいか?騎士団の人も執事も全体的におじさんばっかりだったんだよな~。一人ぐらい若い奴がいてもいい気がしたのにいないし参考にならん。かといってこの街の人の容姿で変装したらドッペルゲンガーだし・・・。仕方ない、メイドの中から普通っぽい容姿の人を選んで髪と目の色をまた違う人のにしよう。




ということで へ~んしん! とう!




髪はショート、色は赤っぽい感じで目も同じような色になり全体的にスレンダーな感じになりました。服は、今はローブでも羽織っておこうか。スキル、インベトリーから旅人が使うような茶色のローブ取り出し羽織る。学ランは脱いで適当な服に着替えておく。




準備はオーケー。早速、冒険者ギルドへと向かうことにした。






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冒険者ギルドではちょっと絡んでくる人もいたが眠らせて問題なく進めることができた。登録の際に費用が掛かったが一か月以内の後払いであれば大丈夫らしい。ギルドはランクによって受けられるクエストが変わるらしく初めはGランクからだそうだ。ランクの上げ方はクエスト受けたり素材の換金したりとそういった総合的な評価から勝手に上がるらしい。ランクの証明書はカードみたいなものででかでかとGと書いてあり名前が書いてある。このカードに活動が記録されていくんだとか。ちなみに名前はシシリーにしといた。ステータスもその名前に偽装しておいた。




そのあとは無一文なので来る途中に回収した魔物を換金する。換金の際に高ランクの魔物が数匹いたらしくしばらくは飢えなくて済む程度にはお金を確保することができた。ひと悶着あったがめんどくさいのですべてスルーする。登録の費用をすぐ支払い、あらかじめ受付の人に聞いておいた宿屋へと向かい確保した。今はその宿屋にいるところだ。




「意外だったな~ あのでっかいイノシシ強かったんだな~」




高ランクモンスターというのがでっかいイノシシだった。三、四メートルぐらいある体格のイノシシだ。討伐依頼の出ていた魔物だったらしく被害が酷かったらしい。俺は顎をけりぬいて脳震盪でぶっ倒したから簡単に倒してしまった。まぁ、周りにそのイノシシよりは小さ目のイノシシがたくさんいたからめんどくさかったけどな。




さて、お金がないからクエストでも受けようと思っていたのに以外にもお金を手に入れてしまった。う~む、半年後には帰ることになるし転々と旅をするのがいいかな?この世界を気ままに見て回るってことでいいな。そうと決まれば、この世界の地図でも探してくるか。




その日は、本屋へと行き面白そんな小説をいくつかと魔物などの図鑑、地図を購入した。印刷技術があるらしくそこまで高価ではなかった。そのあとは食材をいろいろ、服屋行き衣服を数着、雑貨屋で必要な物を適当に購入。あとは、ぶらぶらと観光をして回り宿屋へと戻った。




翌日、その街を後にした。






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「風呂に入りたい・・・」




出発して数日目にして風呂に入りたい衝動に駆られています。途中水浴びや魔法で温水作ってシャワー、生活魔法で綺麗にみたいなことはしたからそこまで汚くはないはずだ。でも、湯船につかりたい。少し熱めのお湯の中でゆっくりとしたい。




「魔法で即席風呂でも作ってしまおうか・・・」




でも、そんなことをすると湯気が目立って魔物やらがうじゃうじゃ来そうでいやなんだよな~壁で囲えば問題ないかな?道を外れた森の中なら人にはわからないだろうし・・・大丈夫だよね!




ということでまだ昼ですが道を外れて森の中を突き進みます。スキルで遠くを見た感じだと断層みたいになっている崖があるみたいだからそこへと向かうことにした。数分後、その場所へとたどり着く。




「この崖に洞窟風呂でも作ろうか 登録しておけばいつでも転移で来れるし」




そう言うと崖の表面を土魔法で穴をあけていく。しばらく掘り進めたら広い空間にしていく。湯船を作ったら錬金で穴がないように補強する。崩れないように全体を補強しながら掘っていたのでだいぶ時間がかかった。




外に出てみると日もだいぶ落ちていた。




「ちょっと時間かかり過ぎたかな?」




まぁ特に気にすることもなく。作った湯船の底にお湯のでる魔法陣を書いていく。一定の温度の水を魔力を流すと出てくるように作る。最後にこの場所がわからないように入り口を偽装して完成!この作業にも時間がかかってしまい終わるころには暗くなっていた。




「風呂に入ったら今日はここで野宿でいいか」




そのあとは、魔力を流して湯船を溜めたら風呂へと浸かった。久しぶりで気持ち良かったので眠ってしまっていると誰かの気配を感じ目を覚ました。




崖を観察しているな。洞窟の中に・・・入ってきたか。荷物はインベトリーにしまってあるから問題なし。気配遮断でもしてこのまま様子を見るか。




しばらくすると足音が聞こえてきた。だいぶ警戒しているらしく歩みは遅い。少しすると褐色の肌の女性が現れた。全体的にグラマーな方だ。布地の薄い服を着ており目の保養になります。ハイ。頭には角らしきものも確認できる。たぶん、魔族というものではないだろうか?鑑定!魔族やね!




「なんだ、ここは・・・風呂か? この前来た時にはなかったぞ? それとも私が見つけられていなかったのか? いや、しかし、確かに高度な隠蔽ではあったが触れればわかるものであったのだぞ?」




どうやらこの魔族のお姉さんはこの崖によく来るらしい。混乱するのも仕方ないと思いますよ?だって、さっき作った場所だし・・・




「魔力で調べた感じでもこの風呂しかないようだな ただ待つのも暇か あいつらが来たら出れば問題ないだろう」




そう言うと魔族の方は服を脱ぐ・・・のではなく消して湯船へと入った。




・・・おい、この状況どうしようか?風呂の文化ってこの世界にあるのか。相手さんは俺のことに気づいてないみたいだが・・・まぁ、目の保養になるしいいか。ゆっくりお姉さんと風呂に入るのもいい物やね~




その後も特に気づかれることもなく風呂につかり数分ほど経ったぐらいに外に数人の気配を感じた。




「来たようだな」




その一言を最後にお姉さんは風呂を上がり外にいた一人とこの場を後にしたようだ。




「さっきの魔族はなんだったんだろうな~」




その日は、作った洞窟で夜を明かした。






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あれから、一か月ほど経った。洞窟風呂には定期的に入りに行っており運がいい時?には魔族のお姉さんが時々いることもある。魔族のお姉さんもたぶん気に入ったんだろうな~。魔族のお姉さんに気づかれないように洞窟を拡張し秘密の小部屋のような空間も作った。最近は、宿がない時にはこの小部屋で寝泊まりしている。因みにこの空間は扉がないため壁を物理的に壊すか転移でしか入ることができないようになっている。物理的にしても異常な強度の壁にしている為、実質転移でしか入れない。




俺はあれから途中盗賊やら魔物やらを討伐していきながら旅をしていたので懐はなかなかに暖かい。転々と街へ行き換金してその街を観光と一人気ままに旅をしている。いつの間にか冒険者ランクも上がりⅭランクになっていた。Ⅽランクがどれだけすごいのかわからないが時々、門番に驚かれる。




今日は、試しにⅭランクの依頼を受けてきた。コモドオオトカゲを大きくして口から火を吹いたり毒を吹いたり石化させてきたりしてきた魔物だ。たぶん、バシリスクなのかな?この世界の名前は読みにくいし覚えにくいしであきらめた。本物?のバシリスクを見たことがないから何とも言えないけど俺的にはそこまで強くなかった。




目が危ないらしいから戦闘開始と同時に盲目にさせた。口から火を吹いたり毒を吹いたりしてくるみたいだけどそもそも俺に攻撃が届かない。念の為、口は縛っておいたけど・・・。そうするとトカゲは何もできなくなってしまって逃げ出したのだ。目が見えなくてもぶつからずに走ることができるらしい。逃がさないようにすぐにとどめをさしましたよ。




そのあとは街に戻った。途中なんか真っ黒い西洋の竜と戦うことになったが問題なく街へと着いた。門番に冒険者カードを見せて中へ入りギルドへとクエストクリアの報告と換金しに行った。換金の際に黒い竜を出したもんだからいろいろ聞かれてギルドマスターに呼び出されそうになったが無視してお金をサクッと貰い受けギルドを後にして街をぶらぶら。今ココ。もう少しで日が落ち始めるかな?




「真っ黒な竜ってレアモンだったんだな~」




クエストのクリア報酬よりも黒い竜の方が金額の桁が二桁違ったのだ。これにはすごく驚いた。まさか名乗りの途中でブッ飛ばしてしまった竜の方が報酬が大きいとは意外や意外。




「にしても最近は呼び出されることもないしいいね~」




そんな事を言ったのが間違いだったのか、街を歩きながら「ん~」っと目をつぶって背伸びをして目を開けると真っ白い部屋にいた。例のごとく女神様も・・・




「お久しぶりです」




「・・・・・・・・・   ジーザス!」




「そんなこと言っても召喚の事実は変えられませんよ?」




「ですよね はい はぁ~」




異世界にいたとしても召喚されるようだ。最初の頃はこんなに頻繁に呼ばれることもなかったのにな~。それこそ年に数回ぐらいだったし日常の中に時折のスリルみたいで楽しかった。もう過去のことだが・・・




「今回はどういった召喚ですか?」




「今回の召喚は魔王による召喚です 現状の危機を打開しようと知恵袋として召喚の儀を行ったようです 帰還条件は助言をすること 召喚を行った理由も理由ですし簡単に終わると思いますよ」




「そうですか とりあえず行ってみます スキルはいつも通りでいいですか?」




「はい 問題ありません」




「では、行ってきます」




「行ってらっしゃ~い」




最後だいぶ砕けた感じの挨拶してたな。満面の笑み付きで。またストレス溜まってるのかな?溜まってるんだろうな~初めのころの固さがなくなってるからきっとそうなのだろう。うん。




一瞬のあと目を開けると目の前には簡素な玉座の間にいた。全体的に灰色な色合いで大きめの玉座と机しか置いていない。その玉座に座る角の生えた細マッチョな男性が魔王なのであろう。




「ちっ」




あっ、反射で舌打ちしてしまった。




「今のなしで」




「・・・・・」




魔王さん無言!ちょっと威圧を感じるから怒ってるぽいんだよな~




「魔王様? 今回の召喚はどういった理由でしょうか?」




「・・・・・ お前を呼んだのは情報収集のためだ」




ふぅ~話してくれたぜ~




「何が知りたいのでしょうか?」




「一か月ほど前、人間のある国に膨大な力の反応を感じた 十中八九勇者召喚だろう 我が行ったことはその勇者の一人を召喚すること お前は勇者なのであろう?」




なるほど、だから女神様は簡単に終わるって言っていたのか。




「そうなりますね ですが今回の勇者は召喚から半年後には元の世界に帰ることになっています 半年ならまだ成長途中ですし脅威にはなりえないと思いますよ?」




「・・・・・ ふむ・・・ ならばお前はなんなのだ」




「え? 人です」




「そんなでまかせは・・・」




「人です」




「いや、だから・・・」




「人です」




「・・・・・」




「もういいですよね? では、帰りますね」




「は? いや、ま・・・」




何か言いかけてたけど無視して帰る。光に包まれると元の街へと戻ってきた。そういえば、玉座の一番近くにどこかで見たことがあるようなお姉さんが・・・




「あ~ あの魔族のお姉さんか あの人魔王の側近なんてやってるんだ~」




終始何もしゃべらずにずっと固まってたけど大丈夫だったのかな?まぁ特に外傷があるわけじゃないし大丈夫であろう。うん。




「もう遅いし今日は帰るか」




空の色が変わり始めたので夕飯を外食で済ませて今泊まっている宿屋へと帰って行った。






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召喚されてから三ヶ月ほど、俺はいつも道理気ままな一人旅をしている。今日までは迷宮探索なんかをよくしていた。迷宮都市にある巨大迷宮を一週間で深層まで踏破して裏迷宮も一週間で踏破した。あれはなかなかに楽しかった。上層、中層、深層と雑魚ばかりで初めは退屈していたが様々な道具が手に入った。深層の最奥のボスを対した後、強制転移で裏迷宮に招待されたときは驚いた。門に説明みたいなのが書いてあってなんでも強者のみ挑戦できる迷宮なんだとか。面白そうということで挑戦した。なかなかにいやらしいトラップや異常なエンカウント率には疲れたがその分、珍しい道具や宝石、魔物に出会うことができた。裏迷宮の最下層には幻想的で美しい景色を堪能することもできたしほんとに楽しかったよ。




その迷宮以外にも大小の違いはあるが道中で見つけた迷宮なんかも潜っていた。俺のインベトリーに何が入っているのかもうよく分からなくなっている。そろそろリスト化しようかと考えているところだ。ランクの方はいつの間にやらAに上がってた。




最近では黒髪黒目、全体的に黒の服装の見た目にそぐわない強さを持ち合わせた奴の噂をよく聞くようになった。一緒に召喚されたクラスメイトやらだろう。いくつかのグループに分かれているのか様々な街で噂されている。治安活動でもしているのか盗賊を壊滅させたやら悪い噂の多いい貴族を捕まえたやらそんな噂が多いようだ。ほんと何してるのかね?もっと静かに生きようよ静かにさ~。




そんな感じで今は、街中を観光中。今いる街は海に近いということもあり海産物が豊富なところだ。魚市場ではこの世界ならではの魚が多いい。一見毒を持ってそうな紫色をした魚やどうやって捕獲したのか聞きたいくらい巨大な魚などなど品数は豊富だ。見るよりも食べ歩きしながら観光している。当たりはずれがあるが比較的当たりの方が多く気分はいい感じ。




食べ過ぎたので運動がてら依頼でもこなそうと冒険者ギルドへと向かうことにした。まだ昼ぐらいだし時間はかなりある。あの見た目であの旨さは反則だと思うんだよな~なんてことを思いながら歩いていると。 




「ん?」




冒険者ギルドの入り口で見覚えのあるようなないような五人組の冒険者がガラの悪そうな冒険者複数名に絡まれていた。いつもなら無視して横を通り過ぎようとして絡まれそうになるのをブッ飛ばすのだが今回は絡まれている方の冒険者が気になったのだ。




えーと、男三人に女が二人、黒髪黒目で装備の下に着てるのは制服か?あー、そら見覚えがあるわけだ。もやもや消えたしすっきりやね!




ということでもめているところを無視して通り過ぎる。




「おい、姉ちゃん 見てわかるだろ今取り込みty・・・」




男に絡まれそうになったのでデコピンしておく。男は地面と平行に飛んでいきやがて後頭部でスライディングを始めた。




「おま、なにしやg・・・」




また絡まれそうだったので同じように・・・




「こいつ、やt・・・」




「あ、ありg」




以下略




全員スライディングさせたのを背後に中へと入り依頼掲示板の方へと向かおうとしたのだが・・・




「なんで僕まで飛ばされたんですか!!」




流石勇者というべきか耐えたらしい。




「両成敗?」




「意味わかりません!!」




ですよね~俺も何となく流れでデコピンしちゃっただけだからな~




「まぁ すまんな 許せ」




「こいつっ~~~~~」




声にならない声で怒ってらっしゃいます。男なら水に流せよ。もうめんどくさいな。無視するか。




ということで無視して依頼掲示板の方へと向かった。後ろでなんか喚いているが他の仲間が抑えているらしい。ざっと依頼を見た感じあんまりいいのはないようだ。オーク狩りでもすることにする。




依頼を受付に渡し依頼を受ける。冒険者ギルドを出ようとするとまた、後ろでなんか喚いていたが無視を決め込みその場を後にした。ギルドを出てからも方向が同じらしくしばらくうるさかったが俺が適当に返事をしているとあきらめたようだ。街を出たところでやっと別れることができた。




手っ取り早く依頼を完了するために森にあるオークの住処を見つけすべて討伐し回収した。特に苦戦することもなく食後の運動ぐらいにはなった気がするので街に帰ることにする。森をしばらく歩いていると・・・




「行きはいなかったよな? さっき行き倒れたのか?」




行き倒れと遭遇した。それも黒髪黒目、顔立ちから明らかに同郷の者だ。顔を見た感じギルドで絡まれていたのとは違うらしい。知らない顔の女子だから同じクラスではないだろう。




「今日はなんでこんなに会うんだ? はぁ~」




仕方ないので縛られていた手をほどいて担ぎ上げる。なんか汚かったので魔法をかけておく。ギルドに連れて行って連中にでも渡せばいいだろう。周りを調べた感じでは他はいないみたいだ。




「全く状況がわからんな」




考えるのをやめることにして街へと帰ることにした。門のところでは面倒ごとはうんざりなので担いでいる女子を偽装して通った。ギルドに着き依頼の完了報告を終えたあと行き倒れは椅子に座らせて連中が来るのを待った。その間、周りに変な目で見られるが仕方ない。




日が落ちる少し前ほどに連中がギルドに来たので「任せた」と肩を叩きながら親指で後ろをさしながら言うとその場を後にした。何か喚きそうにしていたが聞かれるのも面倒なのでギルドを出たと同時に姿を消し洞窟風呂へ転移した。




その日は、ゆっくりと風呂につかり小部屋で夜を明かした。






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翌日、次の街に行こうと思い消耗品を補充していると・・・




「なぁ 昨日のことで話を・・・」




道中は何を食べようか?この年ならではの食材がいいよな~。お手軽に食べられる食材ならフィッシュサンドが一番かな?でもでも、肉は欠かせないし~・・・




「なぁっ! 昨日のこ・・・」




インベトリーもあることだし両方買うべきだよな。初めの頃みたいにお金に余裕がないわけではないのだから好きに買うべきだね。あっ・・・ そういえば、戦闘で服を一つダメにしたんだったか。ここなら大きい都市だしいい物がそろっているはずだ。食料を揃えたら服屋に行こうか・・・




「なぁっ!! 昨日n・・・」




「うるさい」




デコピンをくらわす。案の定かわせずにスライディングをはじ・・・おっ?すごいなあそこから体制を整えたよ。さすが勇者。




「っ~~~~~ いきなりなんですか! 無視したのはそっちでしょうに!」




「いや、だって面倒ごとの匂いしかしないじゃん」




「こいつっ~~~~~!!」




おーおーキレてるね~。俺に飛び掛かろうとしたところを後ろから男に羽交い締めされ一人ではムリだったのか二人係で抑えている。そんな横を苦笑いをしながら一人の女が通り過ぎ話しかけてきた。




軽く挨拶をすましここで話すのもなんだからと喫茶店へ行くこととなった。俺はサンドイッチとコーヒーを頼み話をする。軽く昨日の行き倒れの件の経緯を話し終えサンドイッチを食べる。おっ!このサンドイッチシンプルで美味しいな。




「では、なぜ?彼女を私たちに託したのでしょうか?」




そういいながら手で昨日の行き倒れを示す。




「た、助けていただきありがとうございました」




「あー 敬語なんていらないから気楽に気楽に 俺らタメなんだし」




そういいながら変化を解く。一瞬にして元の見た目へと戻った。




「「「「「「え?」」」」」」




余程意外だったのかそれ以降皆さん動かなくなってしまった。周りの人はとくに驚いた様子はない。それもそのはず俺が予め会話を聞かれないように注文がすべて届いたあたりからこの席だけ隔離しているからだ。具体的には音が漏れないように風を操り、周りから見た俺たちの状況を偽装し、魔法が使われていることがわからないように隠蔽し、注目されないように気配を遮断、念のために結界も張っておいた。まだ他にもしていることはあるが割愛する。さて、そろそろ復帰してもらおうかな?




「これが託した理由だよ」




「い、生きてたのか?」




「は?」




話を聞くに俺は行方不明の扱いになっていたらしい。なんでも初めの日の晩に集団睡眠に会いその隙に俺を含めた数人が行方不明になっていたのだとか。国は総力を挙げて調査した結果俺以外の居場所の特定には成功した。それを聞いた友人の生徒が無断で行動を起こしミイラ取りがミイラになったのだとか。その後の活動により何とか生きて救出することができた者もいるがまだ、難航しているらしい。その中で俺に関してはどこにも情報がないことから死亡したとして扱われていたのだとか。




なるほどね~まぁ、この通りピンピンしているわけだが・・・まさか俺のせいでそんな大変なことになっているとはな。・・・調べてみるか。ついでだしこの前の召喚のエネルギーを探知の強化にすべて使ってしまおうか。あれから質問されたことに答えただけなのだが魔王は納得していないらしく何度か召喚されたのだ。すぐに帰ってやったが・・・そのおかげで無駄にエネルギーが余っている。この際だからそのエネルギーをすべて探知スキルの強化に回そうと考えたのだ。うん。えーと、これをこうして・・・よし!ではでは探知開始!




ふむふむ、五人以上のグループで行動をしているのはこいつらみたいに救出にむかっている者達だろう。他国にとらえられているのは・・・数人か。あとは、魔族に数十人とらえられているみたいだな。




・・・・・・ちっ




「おい ここを移動する 泊まっている宿屋は?」




「ひっ こ、こっち」




「案内してくれ」




俺は案内された宿屋にたどり着くと六人は外で待機してもらう。随分と素直に従ってくれたのでありがたい。始めるとしようか。さっき探知したとらわれている者をすべてこの場に転移させる。特に問題ない者には外の六人組の側に転移させ、ひどい状態の者をこの場に転移させる。




「ちっ 下種が」




外傷のひどい者は再生させ、壊れてしまっている者には記憶の消去、改変を行う。それと同時に矛盾しないように召喚されたときの健康な状態に戻す。勇者ということもあり死者がいなかったことが不幸中の幸いだ。生き返らすことはできるが代償と人としてありえない年月を生きなければならなくなってしまう。人によってはうれしいことかもしれないが人外になるということはあまりいいことではないだろう。




さて、一通りの処置は終えたから次に移ろう。外で待機している六人にすべて救出したことと他をまかせることを伝え、すぐに転移した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「おい、魔王説明しろ」




転移と同時に書斎で仕事をしていた魔王に質問する。




「・・・・・」




「なぜ、魔族は勇者をとらえ人体実験をしていた?」




「・・・・・」




記憶を見た感じだと魔王はかかわっていないようだ。宰相あたりが怪しい動きをしていたが詳細をつかめていない状態のようだ。




「そうか、すまなかった 首謀者は消すがいいよな?」




「・・・・・」




魔王は何も答えなかったがどちらにせよ俺は行動を起こすつもりでいたから問題ない。探知をめぐらし同時に記憶からすべての関係者にマークをつける。十分の一が消えるな。まぁ問題ないか。最後にフィンガースナップを行い。マークしたすべての者が砂となった。




「終わった 仕事中に来てすまなかったな」




俺はそういって宿屋に転移する。




「・・・・・」




魔王は最後まで無言だった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






宿屋に戻ると質問攻めに会いそうになったがもう、めんどくさかったので一人を残して他を王城に転移させた。




「は?」




「手短に言うぞ 俺は気ままに旅をしているから心配は無用だと伝えてくれ じゃあ、またな」




「え? へ? ちょ、ちょっと待って話を・・・」




問答無用で転移させる。荷物も一緒にすべて転移させた。転移させるときに俺の能力に関しての記憶を改ざんさせてもらったし問題ないだろう。助けた生徒の中に転移スキルもちもいたことだし怪しまれることはないはずだ。




その日は、転移で洞窟風呂へ向かいいつもよりも長めに風呂に浸かった。予想よりも疲れていたらしく布団に入るとすぐに眠りに落ちた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






召喚されてから五か月ぐらいがたった。今日も今日とて一人気ままに旅をしている。最近はこれといった目立った活動もいていない。時々迷宮に潜ってみたりだとかなんか岩に刺さっていた美しい剣があったから売れると思って回収してみたりだとかぐらいでこれといった活動は表ではしていない。




じゃあ、裏で何かしているのかといっても勇者誘拐の件に関わっていた人族を俺が納得できる証拠を集めてすべて砂にしたくらいでたいしたことはしていない。俺のせいで魔族と人族に戦力の差が出てしまうのも申し訳ないので真っ黒確定な人族を片っ端から消していたぐらいだ。




まぁ、こんな感じで特に目立った活動はしておらず、気ままに旅をして疲れたら洞窟風呂に入るといった快適な旅を満喫していました。




探知で勇者のその後を調べた感じでは初めは戸惑っていたみたいだが特に問題なさそうなので放置している。時折、すれ違うこともあるが俺だとはわからないようだ。まぁ、あと一月もしたら戻ることになるし大抵の者は自身の非日常的な記憶を疑い時間とともに忘れることとなるから問題ないであろう。




それにしてもあと一月どうしようか?この大陸は粗方めぐり終えてしまったし隣の大陸に行くにいてもだいぶ海を越えなければならないみたいだから面倒だ。そうなるとやることがなくなってしまったな~




『おい、貴様』




もうダンジョンでも作って稼いだお金でも隠してしまおうか?モンスターはどうしようかな~。全部スライムにしてしまうとかどうだろう?液体に近すぎるジェル状のスライムだとかオリハルコンでも混ぜて以上に硬いスライムだとか通路を塞ぐほどにデカいスライムだとか・・・




『聞いているのか? 貴様』




よしよし、お宝は銀貨、金貨、白金貨ぐらいだし二階層くらいでいいかな?お宝はボス部屋に置くとしてトラップはどうしようか?スライムダンジョンだし水系のトラップがいいよな~。あ、ボス部屋には落とし穴のトラップでしか入れないようにしてしまおうかな。なら、ダンジョンはあの場所に・・・




『私が話しかけているのだぞ? 無視するとはいいどk・・・ぎぎゃギャアアアアァアァッァ』




「うるさいんだよ 直接頭に話しかけるなんて気持ち悪いんだよ」




目の前で真っ白な羽を広げてわざわざ頭に直接話しかけてきていた天使?みたいなコスプレ馬鹿を砂にしたところだ。最近はこんな感じで突然目の前に現れては偉そうにしゃべったあと砂になって消えていく意味の分からない活動が流行っているらしい。いつぐらいからだろうか?たぶん、人族の下種どもを一通り消した後だったかと思う。消したのが一か月前ぐらいだし鬱陶しいたらありゃしないのよ。ふん!このキャラはきもいなやめようか。あ、また来た。




『貴様か! 我らに仇なす不届きn・・・ぎゃああああぁああぁあああぁ』




「だからぁ~ うざいんだってぇ~」




『おのれ~ またs・・・ぎゃああああああああああああああああぁぁぁああぁあぁあぁ』




「さっきの奴よりもうるせぇよ」




以下略




面倒なので後に続いていた数千弱も一緒に消しておいた。他にはいないかな・・・おいおいなんかものすごい笑い方してるやつがいるぞ?頭大丈夫か?腹抱えて転げだしたぞ?




「ははは こんな奴が人族にいるとはもはや化け物だ 我の部下にならぬか?」




「え、面倒だからいい」




「・・・まぁよい 我の部下になるのならば見逃そうとも思ったが致し方ない 消えろ」




「・・・・・ ん?」




何かしたらしいが俺には効かなかったらしい。その間に記憶を漁った感じだと此奴はこの世界の神らしい。今までは善良な神として活動していたみたいだが嫌気がさしたらしく活動を放棄しこの世界で遊び始めたらしい。その一つが魔族と人族の戦争、勇者召喚などなど上げたらきりがないな。なんでこんなところにいるのかというと俺が原因らしい。簡単に言うなら此奴が将棋をしている横で俺が駒を片っ端から取っていったかららしい。何ともくだらない。何とも大人げない。で、切れた此奴が手下をここ一か月送り込んでいたと・・・ 全部此奴のせいか!




「は? なぜ効かぬのだ! 我は神であるぞ! なぜそのような平気な顔でいられる!」




「知らねぇよ 次俺な」




「ぎゃああああああああぁああぁぁぁああぁあぁぁぁあぁぁぁぁあああぁああぁぁぁっぁあぁぁああぁあ」




なんで最後のラスボス雰囲気出してるやつの悲鳴が一番デカいんだよ。でも、これで最近うざかったコスプレどもはもう来ないってことだよな。安心安心。さて、最後にダンジョンでも作りますか。




俺は、ダンジョンを作るためにその場から転移した。あとに残ったのは白い砂の山だった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「お疲れさまでした」




「どうも、女神様」




あれから俺は、一か月でダンジョンを作り上げた。まぁダンジョンというよりもスライムの住処みたいになってしまったが気にしない気にしない。




「今回はこれで契約終了で大丈夫ですか?」




「はい、問題ありません 他に召喚された皆さんも順次帰還されています 全員の帰還と同時に時間を動き出すようにしていますので貴方が最後となります」




「そうですか」




「今回の旅はいかがでしたか?」




「好き勝手させていただきました あの神は消してしまいましたが問題ないでしょうか?」




「問題ありません 次の神への引継ぎも完了しましたので大丈夫です」




「そうですか 後処理ありがとうございます ・・・そろそろ時間ですね」




「そうですね では、またのお越しを心よりお待ちしています ふふふ」




「あ~ はい 失礼します」




ここは企業か何かだっただろうか?気にしたら負けのような気がするので気にしないでおこう。いつものように視界が真っ白になり次に目を開けるといつもの教室の自分の席に座っていた。周りの皆も突然のことに驚いているのかしばらく静かであったがしばらくすると学校中から歓声が聞こえてきた。一部の者は生きて帰れたことに気が緩んだのか泣いている者もいる。




「帰ってきたか」




俺は自分の席に座って窓から夕焼けに染まる空を眺めていた。
























「こんばんは!」




「・・・・・・いい加減にしやがれ!!!」








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