失われた古代魔法を、世界で俺だけが使いこなす――
「オリオン! 貴様は今日かぎりでクビだ!」
ある日のこと。
オリオンは、勇者パーティのリーダーであるオリバーに、突如クビを宣告される。
「オリバー、いきなりどうしたんだ? これまで一緒に頑張ってきたじゃないか!」
「黙れ、この寄生虫が! ろくに基礎魔法すら使えない。これまでパーティに居られたことをありがたく思え!」
この世界の魔法は、炎・水・土・風・闇・光の6属性に分類される。
そしてオリオンの使う魔法は、その6属性魔法のいずれにも属さない固有魔法である。
それはギルドでは評価されない力。
それでも修練を積み、支援魔法に攻撃魔法と、パーティの戦力として十分役に立ってきた。
「本当に良いのか? このパーティーで、魔法はすべて俺が担ってきた。俺の使う支援魔法が無ければ戦力は大きく下がる。それに魔法攻撃しか効かない相手が出てくれば――」
「はっはっは。役立たずのおまえに代わって、すでに優秀な魔法使いをスカウトしている!」
高笑いするオリバー。
そうしてオリオンは、パーティを追放されることになった。
しかしオリオンの使う固有魔法は、実は、当の昔に失われたとされる【古代魔法】であった。
その力は、従来の6属性魔法とは比べ物にならず、まさしく魔法の常識を塗り替えるものであった。
やがてオリオンの作りあげるパーティは、最強の名をほしいままにしていく。
一方、勇者パーティには破滅が待ち受けていた。
独断でオリオンを追放したことで、メンバーからの信頼はガタ落ち。
依頼は失敗続きで、徐々に社会的信用も失っていく。
――勇者パーティには、どこまでも暗雲が立ち込めているのだった。