俺だけ使える古代魔法~実は1万年前に失われた伝説魔法らしいです。え、俺のこと基礎魔法すら使えない無能だって追放しませんでしたか? 今さら助けて欲しいとか、何の冗談ですか?~
2.古代魔術師、天才少女に弟子にしてくれとせがまれる
2.古代魔術師、天才少女に弟子にしてくれとせがまれる
「これからどうするかなあ」
勇者パーティを追放された俺は、これから何をするか考えていた。
魔術師として、ギルドでの俺の評価は『ランク外』だ。6属性魔法の基礎魔法を扱えないために下された評価だった。
「ランク外の冒険者と、パーティを組みたい奴なんて居ないよな。それに当分、パーティは良いかな……」
4年間も共に過ごした仲間のことですら、理解できていなかったのだ。またパーティに入り直し、イチから人間関係を築くのは少しばかり面倒だった。
「良し、決めた。しばらくはソロで行こう! これまでは勇者パーティの一員として使命に追われる日々だった。気ままに冒険するのも良いなあ」
勇者パーティは、国内で様々な恩恵が得られる代わりに、求め得られる戦果の要求も高かった。
モンスターとの戦いには率先して駆り出された。気楽に依頼を引き受けまくるオリバーのせいもあって、休む暇もなく働かされたものだ。
だがそんな日々も、今日で終わり。
俺は冒険者として、世界各地をのんびり旅するのだ。
◆◇◆◇◆
そう決めて、旅をはじめた矢先。
「きゃああああああ!」
街道を歩いていると、何やら少女の悲鳴が聞こえてきた。
「これも何かの縁かな?」
冒険者とは助け合いの職業だ。自然と声の方に、体が動き出していた。
向かった先には、小型の馬車が立ち往生していた。どうやら犬型モンスターに囲まれているようだ。
「大丈夫ですか?」
「冒険者の方ですか!? ちょっと相手の数が多すぎて苦戦していました」
俺に返事を返したのは、赤毛の小さな少女だった。
護衛として雇われた冒険者なのだろうか?
杖を握りしめ果敢にモンスターに魔法をぶつけていたが、多勢に無勢。
「あの、出会ったばかりで恐縮なのです……。少しだけ力を貸していただいても、よろしいですか?」
「もちろんだ!」
そう言って俺は、犬型のモンスターに向き直る。相手はバウンス・ドッグと呼ばれる、この辺りではよく見られるモンスターだ。
ぱっと見、その数は10体以上。
(一体ずつ相手にはしていられないな……)
「風のエレメンタルよ、拡散せよ!」
俺は、大気中を漂う風のエレメントに働きかける。
凶悪な風の刃がいくつも発生し、一瞬にしてあたりのバウンス・ドッグを打ち抜き、モンスターの群れを無に返した。
「は、え? ――無詠唱魔法? あれほどいたバウンス・ドッグを、一瞬で!?」
少女が杖を持ったまま、ぽかーんと口を開いた。
「お兄さん、もしかして凄い高名な魔法使いでいらっしゃいますか?」
「俺はオリオンだ。ついさっきパーティをクビになったところでな。ギルドでは『ランク外』の魔術師だよ」
自嘲気味に言うが、
「あ、あなた様がオリオン様なのですか!?」
どういうことだろう?
何故か少女は目を輝かせて、そんなことを言ってきた。
「『ランク外』でありながら、どんな魔法も使いこなす最強の魔術師。勇者パーティの魔法能力を、たった1人で支えていた――実在してたんですね!?」
「俺はオリオンで、たしかにランク外だが。人違いじゃないか?」
「いいえ! ウィンドカッターとはいえ、無詠唱で11個も同時に発動するなんて! まさしく神業です。間違いなくあなた様に違いありません!」
あどけなさの残る少女は、グイグイっと身を乗り出してきた。その瞳は、興奮からかキラキラと輝いている。
「あー、あれはウィンドカッターではなくて……」
「オリオン様。どうか、私のことを弟子にしてください!」
そうして少女は、そんなことを言うのだった。
「あー、その……。悪いな。しばらくは、1人で旅をしようかと思っていて――」
「そこを何とか、お願いします」
やんわり断ろうとするも、少女はまったくめげた様子もなく。
少女は深々と頭を下げる。
「改めて自己紹介させて下さい、私はアリスです。こう見えても火・土・風の3属性が使えて、4つまで属性を重ねられるクワッド・エレメンタルです。決してオリオン様の足は引っ張りません!」
「その年でクワッド・エレメンタル? それは凄いな……」
魔術師のランクは、重ねられる魔法の属性の個数で決まる。1つならシングル、2つながらダブルといった具合で、クワッドは4つ属性を重ね合わせることが出来るのだ。
ちなみに1属性でも基礎魔法が使えることが、シングルに認定される条件だ。
クワッド・エレメンタルに認定されている魔術師は、そう多くはない。この歳でクワッド・エレメンタルに認定されているとなると、まさしくこの少女は天才なのだろう。基礎魔法が使えないせいで、未だに『ランク外』の俺とは大違いだ。
「私なんてまだまだ未熟です。どうかオリオン様のお傍で、勉強させて下さい!」
「そう言われてもな……」
そんな天才少女に、俺が何を教えられるというのか。
「それならせめて、今回のことをお礼させて下さい!」
「まあ、それぐらいなら……」
俺が言い淀んだのを見て、アリスはすぐに話題を転換。そうして俺は、気が付けばアリスと共に行商人の馬車に乗り込むことになっていた。
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