第36話:叙爵政策・フローラ視点
「君達が不安に思っている事は、母国にいる家族の事ではないかい。
このまま順調に成長すれば、君達は貴級の魔術が使えるようになる。
だがそうなれば、どこの国が君達を叙爵して迎えいれるか分からなくなる。
母国もそれなりの待遇をしなければ君達を国に残せなくなってしまう。
だがそれを惜しいと思う者や、元平民と同列に扱われたくないと思う者があらわれると、やることは一つだ。
特級の内に家族を人質にとって平民扱いで利用できるだけ利用する。
君達はそれが怖いんじゃないかい」
パーティーメンバー達が悔しそうな顔をしています。
努力して能力を得た者を正当に評価せずに奴隷のように使役する。
なんて酷い話なんでしょう。
でも学院に来てから初めて知りましたが、それが当たり前のことのようです。
不当な扱いを回避する方法があるのなら万難を排して行うべきでしょう。
でもそれがフレイザー公爵家が独立戴冠する事とどう関係するのでしょうか。
「だから今の内にフレイザー王家に叙爵してもらうんだ。
叙爵してもらってフローラ嬢の側近に取り立ててもらうんだ。
領地も俸給もなくても、パーティーメンバーとして狩りに行くだけで、莫大な販売益が手に入る。
家族を人質に取られて強制的に母国に戻されて最低の報酬で使役されるのと、どちらが自分や家族の為になるかは考えなくても分かるだろ」
本当にそんな事でパーティーメンバーを護れるのでしょうか。
領地も与えず俸給も与えずに叙爵だけする。
あまりにも不当過ぎるような気がするのですか。
「フローラ嬢は余りよく分かっていないようだが、そもそも普通は叙爵されるには国や王家に多大な貢献をしなければいけない。
貴級魔術士が叙爵されるのは、貴級魔術士が国にいるだけで他国に対する威圧になり、国に多大な貢献をするからだ。
まあ、その辺の事は気にしなくていいよフローラ嬢。
爵位を与えるのはパーティーメンバーが家族を学院領に呼び寄せるまでだ。
本人達がそのまま爵位が欲しいと望むならそのままにすれればいい。
爵位を返上して学院で教師になりたいと言うのなら返してもらえばいい。
フローラ嬢は助けて欲しいと言われたら叙爵してやればいいんだよ」
ロイド君はそん風に言いますが、叙爵はそんな軽いものなのでしょうか。
そもそもロイド君が言う通りに父上や母上が独立戴冠するとは思えません。
でも、ドロシー嬢もピエール君もシモン君も乗り気のようです。
ロイド君の言うように彼らには役に立つ利のある話のようです。
これだけ期待させておいて、父上と母上が拒否したらどうするのでしょうか。
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