第21話:称号と鬱憤・フローラ視点
「ドロシー超級魔術士殿、明日の放課後食事にでも行きませんか」
またライル君が悪乗りしています。
物凄く悪い表情をしています。
そんな事ばかりやっていると本当にドロシー嬢に嫌われてしまいます。
「ふざけるのは止めなさい、ライル。
調子に乗っていると足元をすくわれるわよ。
貴族の連中が私達の事を狙っていることくらい分かっているでしょう。
隙を見せたら陥れられて学院から追放されるわよ。
学院を追放されたら冤罪を着せられかねないんだからね。
学院を出るのは狩りの時だけにしなさい」
哀しく情けない事ですが、ドロシー嬢の言う通りです。
学院に来た当初は気が付きませんでしたが、今ではわかります。
学院には表の顔と裏の顔があるのです。
表向きは学院生は平等という事になっています。
ですが現実には明らかな身分差があります。
差別意識があり平民出身の学院生を下に見ています。
特に私達が称号を受けた事でその傾向が顕著になってしまいました。
「そんな事は分かっているさ。
だけどようやく懐が温かくなって少しは贅沢できるようになったんだぜ。
金の心配をせずに好きな物が食べられるようになったんだぜ。
たまには学院の外に出て美味しい飯くらい食べたいじゃないか」
さっきまで悪い表情をしていたライル君が情けなさそうな顔をしています。
私には実感がありませんが、平民学院生の共通した気持ちなのでしょう。
さっきまで厳しい事を言っていたドロシー嬢がなにも言わなくなりました。
何か言って雰囲気を変えたいのですが、公爵令嬢の私には何も言えません。
ピエールとシモンも黙ったままです。
「はい、はい、はい、はい、雰囲気が悪いぞ。
確かにドロシー嬢の言うように学院の外は危険だから出ない方がいい。
ただしっかりとした後ろ盾があれば別だ」
いつの間にかロイド君が教室に入ってきていました。
私達はもちろん、私達の話を聞いていた級友達まで悪い雰囲気になっていました。
それを明るい調子の言葉で一気に払拭してくれました。
それに打開策があるとまで言ってくれています。
ロイド君には後ろ盾になってくれる王侯貴族に心当たりがあるのでしょう。
流石は大陸中に支店を持つ大商人の息子だけありますね。
「ロイド君はそう言うけれど、そう簡単に後ろ盾になってくれる貴族はいないわ。
たいていの貴族は平民を道具としか思っていないのよ。
最初は調子のいい事を口にしていても、結局は私達を使い捨てにするわ。
それに私は学院に残って魔術の研究をしたいのよ。
そんな私に、何の見返りもなく後ろ盾になってくれる貴族などいないわよ」
ドロシー嬢が凄く哀しそうに吐き捨てます。
私には思い当たることはありませんが、ウィリアム王太子や取り巻き貴族の言動を思いだしたら、そうなのかもしれないと思ってしまいます。
ロイド君の伝手でいい貴族家を紹介してあげて欲しいですね。
「フローラのパーティーメンバー」
ピエール:男性・特級木属性魔術士
シモン :男性・特級治癒魔術士
ライル :男性・特級金属性魔術士
ドロシー:女性・超級水属性魔術士
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