第20話:表彰式・ロイドことローレンス視点
講堂に集まった全学院生がザワザワと噂話をしている。
中には不信の表情を浮かべている者がいる。
まあ、そんな連中は身分意識差別意識の凝り固まった貴族子弟や子女だ。
あまり騒ぐようなら学院から追放してやる。
貴族派の執行導師が反対するなら、反対する執行導師を一人殺せば黙るだろう。
「静まれ、これ以上騒ぐと追放にするぞ。
自分ができない事を成し遂げた者がそんなに目障りか。
才能もなく努力もせず、家柄だけを誇って有能な魔術士の前途を阻む者は、学院長の私が絶対に許さん。
お前達の責任を問い、母国に天変地異を引き起こすぞ」
ダンカン学院長が珍しく激怒して貴族子弟子女を脅迫したな。
俺が思っている以上に執行導師達が腐っているのかもしれない。
ここは詳細に調べて三人くらい暗殺するか。
いや、警告も含めて平導師の中にいる貴族派を殺しておこう。
貴族派の執行導師を殺しても後任が貴族派では意味がない。
「今から王級魔術を実戦で使いこなして王級魔獣を斃した生徒に称号を授ける。
同時にその能力に応じた役職を与える。
まだまだ学ばなければけない点もあるが、同時に学院生に教えてもらいたいところも数多くある。
現実に学院の教員よりも強力な魔術を使いこなすのだ。
実力で劣る教員が偉そうに教えるなど噴飯モノだ」
ダンカン学院長の苛立ちが伝わってくるな。
学院を維持するためには大陸の王侯貴族からの寄付金に頼らなければいけない。
だが寄付金に頼った状態では学院の独立性が失われてしまう。
寄付金に頼らずに運営しようと思えば授業料をあげるか、生徒の狩った魔獣を売る時の手数料をあげることになる。
しかしそんな事をすれば、今でも才能のある平民が授業料を払うことができずに学院に来れないのに、もっと来れなくなってしまう。
それこそ学院生が全員裕福な貴族だけになりかねない。
学院長も打開策がなくて苛立ちばかりが募るのだろう。
そんな中でフローラ嬢が王級魔術士に称されるのは、久しぶりに痛快なできごとなのだろうな、その気持ちは俺にもよく分かる。
「フローラ嬢、壇上に上がってきなさい」
学院長がそう言うと貴族子弟子女が複雑な表情をした。
学院の建前として家名は呼ばないが、フローラ嬢が公爵令嬢なのは誰もが知っているから、同じ貴族が平民より優秀だと称されるのはうれしいのだ。
だがフローラ嬢は貴族子弟子女の集まりには参加せず、平民の集まりに参加して、平民とパーティーを組んで今回の壮挙を成し遂げている。
それが複雑な心境と表情となっているのだろう。
「ドロシー嬢、シモン君、ピエール君、ライル君、壇上に上がってきなさい」
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