第19話:奥地に・フローラ視点

 全員が凄く緊張してるの伝わってきます。

 前回よりも少し奥に入るのですから仕方がない事です。

 ですがロイド君の指導で、できる限りの準備は整えています。

 何度か斃した貴級魔獣の牙や爪を使って護衛の武器を作りました。

 貴級魔獣の皮をなめして骨で補強した鎧も作りました。

 王級の魔獣に挑戦する準備は整っているはずです。


 魔獣の強さを基準に、その魔獣を狩れる魔術と剣術を初級、中級、上級、特級、超級、貴級、王級、帝級、神級の九段階に分けています。

 冒険者や狩人になるのなら初級でも構いませんが、国や貴族に徒士や騎士として仕えるのなら、より強い術を学ばなければいけません。

 最低でも徒士なら中級、騎士なら上級の強さが必要でしょう。

 

 特級になれば国に仕える騎士の中でも有数の強さを誇り、戦略や戦術の才があるなら将軍や団長に任じられます。

 個の強さだけの才能ならば名誉な先駆けの役目や王族の護衛役を与えられます。

 超級ともなれば人を超えた強さと称えられることになります。

 貴級の実力があるのなら、氏素も関係なしに貴族に封じられるでしょう。

 王級の実力者なんてこの大陸にも数えるほどしかいないはずです。


 妹のエレノアは火属性だけなら帝級魔術が使える大天才です。

 母国では火炎の聖女と称えられています。

 他の属性も圧倒的な魔力で最低でも貴級が使えます。

 そんな妹に負けまいと努力してきた事が、周りの者には滑稽に思えたのでしょう。

 特にウィリアム王太子には私が愚者に思えたのでしょうね。

 

 ですが神々は私の努力に報いてくれたようです。

 魔境の中だけとはいえ、少なくとも貴級の魔術が使えるのです。

 ロイド君の見解では王級魔術も使えるだろうという事です。

 ですが王級魔術を使うには最低でも貴級魔獣の素材は必要になります。


 エレノアなら有り余る魔力で素材なしに王級魔術を発動できるのかもしれませんが、私が王級魔術を発動させるには素材の力を借りなければいけません。

 それに前詠唱と前結印、本詠唱と本結印、後詠唱と後結印をしっかりとやらなければいけません。


「はい、はい、はい、はい、物思いも心配もそこまでだ。

 君達はしっかりと準備してきた。

 その努力は必ず報われる。

 この二カ月間の努力で格段に実戦力が向上している。

 もうお金の心配をして素材をケチる必要もない。

 使った素材は安全な外延部で狩り集めればいい。

 今日は採算を度外視して王級魔獣を狩って称号を手に入れる。

 いいね、分かったね。

 ドロシー嬢、今日は節約は考えない、了解したね」


 ロイド君の言う通りです。

 今日は採算を考えずに王級魔獣を狩るのです。

 そうすれば生徒でも導師格が得られるのです。

 執行導師格まであと一歩の所にまでたどり着けるのです。

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