第23話:劣等感・ロイドことローレンス視点
やれ、やれ、フローラ嬢にも困ったものだ。
自分の価値に全く気がついていないとは、鈍感にもほどがある。
バカではない事は、学び覚えている魔術と知識で明らかだ。
それなのにこんな簡単な事に気がつかないというのは、超がつくほどの鈍感なのか、それとも刻み込まれてしまった劣等感の影響だろうな。
「フローラ嬢、今から説明する事をよく理解してくれ。
それができないようなら、何時まで経っても導師格に推薦できないぞ」
「え、あ、はい。頑張って理解するようにします」
本当に頼むよフローラ嬢。
フローラ嬢が執行導師格になってくれたら学院の運営が楽になるんだ。
貴族派の連中もフローラ嬢の執行導師格就任は反対し難い。
貴族出身の良識派が増える事は学院の未来を左右するほど大きな事なんだ。
ダンカン学院長などは涙を流さんばかりによろこぶだろう。
俺もいつまでもここにいられるわけじゃない。
良識派をフローラを中心にガッチリと固めておきたい。
「フローラ嬢が自分の事をどう思っているかは全く関係がない。
フローラ嬢の両親がフローラ嬢の事を愛していればそれでいいんだ。
フローラ嬢に何かあれば親として全力で復讐すると分かっていればいいんだ。
同時にフレイザー公爵家の利益になるのなら、難癖と思われようが相手の非を突いて戦争を仕掛けると思われていれば、それでフローラ嬢の関係者は安全なんだ。
ここまでは分かるかい、フローラ嬢」
「ええ、それは分かりますが、でもそれは私が両親に愛されている前提ですよね。
キャンベル王国がフレイザー公爵家を大切にしている前提ですよね。
私の場合はその前提が整っていないと思いますよ」
「あのね、フローラ嬢。
ご両親がフローラ嬢の事を愛していないのなら、そもそもフローラ嬢は学院に来ていないし、学院外にあれだけの兵力を常駐させて護ろうともしていないよ。
それにキャンベル王国王太子の婚約者はフローラ嬢の妹だよ。
しかも火炎の聖女と称されるほどの帝級火炎魔術の使い手だよ。
フレイザー公爵家を怒らせて分離独立でもされたら、キャンベル王国は周辺国から攻め込まれて亡国一直線だよ」
「ええっと、私は妹のエレノアとはあまり仲がよくなくて……」
「ふぅうううう、それはフローラ嬢の誤解だよ。
僕の実家は商売のために各国の情報を詳細に集めて分析しているんだ。
エレノア嬢はフローラ嬢の事を間違いなく慕っている。
それにもし万が一慕っていなくても、フレイザー公爵家の令嬢としてフローラ嬢の事は大切にするよ。
それは間違いないよ。
もしかしてそんな事も理解できていないのかい」
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