第35話:独立・シモン視点
「昨日エレノア嬢から相談があって色々考えたんだが、ひとつ方法があった。
これはフレイザー公爵家の問題なんだが、他のパーティーメンバーにも役に立つ話なので、一緒に聞いてもらうことにした。
別に無理に参加する必要はない。
ただ俺から見れば利用した方が便利だし危険も回避できると方法だと思う」
昼食後の休憩時間にロイド君が話しだした。
フレイザー公爵家の問題にはできるだけ関わり合いになりたくないのだが、俺達にも利があるだけでなく危機回避につながるという。
ロイド君が改まって話す以上とても重要な話しなのだろう。
聞きたくないが聞くしかない、これもロイド君の思惑通りなのだろうな。
「実はフローラ嬢を狙う連中がいる。
王級魔術士となったフローラ嬢を王太子妃や王の側妃に迎えて、隣国に対する備え、もしくは圧力に使いたいのだ。
フローラ嬢を手に入れればもれなくエレノア嬢もついてくるからね」
ロイド君がとても怖い事を言いだした。
やはりキングセール王国のチャールズ国王以下の千余人を焼き殺したのは、エレノア嬢だったのだな。
僕は最初からそうだと確信していたけれど、学院生の半数は可憐な美女に見えるエレノア嬢がそんな事をするはずがないと言っていた。
まあ、俺達パーティーメンバー以外はエレノア嬢が魔術を使う所も、フローラ嬢に近づく人間を射殺さんばかりの視線で睨んでいる事も知らないからな。
最近でこそ目は睨まなくなったけど、胸や腹や手足を睨まれるから、悪くもない胸が苦しくなったり、腹の調子が悪くなったりする。
他のクラスの連中も同じ苦しみを味わえば噂が本当だと分かるだろう。
「まあ連中も手荒な事は極力控えるだろうけど、晩餐会や昼食会やお茶会を開いてフローラ嬢を口説こうとはするだろう。
その時に媚薬を飲まそうとしたり、魅了効果のある魔術をかけようとしたりする。
それを防ぐためには、誰かがフローラ嬢の前に立って盾にならなければいけない。
相手が貴族ならエレノア嬢が前に出て盾になることができるんだが、皇族や王族が相手だとさすがに前に出て邪魔するわけにはいかない。
そこでフレイザー公爵家にはキャンベル王国を離れて独立する事を提案する。
フローラ嬢が王太女なら、相手が王族でも取次役という名目の護衛が前に出ることができるからね。
イザベルに宮廷貴族の爵位を与える事もできるしね」
ロイド君は本当にとんでもない事を思いつきますね。
確かにフローラ嬢を護るためだけならそれが一番いかもしれません。
ですが周辺国がフレイザー公爵家の独立と戴冠宣言を承認するでしょうか。
少なくともキャンベル王家は反対するでしょうし、下手をすれば討伐軍を送るかもしれません。
そんなことになったら、家を護るためにフローラ嬢とエレノア嬢は学院を去らなければいけなくなります。
二人の力ならキャンベル王国軍を撃退できると思っているのでしょうか。
でもフローラ嬢の魔力は魔境内限定のはずです。
それともロイド君はフローラ嬢に失伝していた秘術を教える心算なのでしょうか。
興味は尽きませんが、それよりもこの話の何処に私達が関係するのでしょう。
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