第5話:課題

「そうか、ロイド君の意見は分かった。

 だが担任の私一人で決められるような問題じゃない。

 ひとつ間違えば大陸の戦力バランスを変えてしまう事になる。

 学院でも隠し図書の内容を伝授されたのは執行導師達だけだ。

 私だって教えてもらえないのだ。

 フローラ嬢に伝授するのはまず不可能だ。

 だが私が功績のあるロイド君の提案を握り潰すわけにはいかない。

 執行導師会に提案はしておくが、期待はしないでくれフローラ嬢」


 ロイドに連れられて学級担任に伝授願いを出しに来たフローラだったが、余りの話に驚愕するばかりだった。

 級友達だけではなく、学級担任教師ですら教えてもらえない秘伝。

 そんな秘伝を入学して一カ月しかない自分が伝授されるわけがないと思った。

 だが隣に立つロイドは何も気にせず飄々としている。


「そんな事は分かっていますよ、先生。

 でも先生、本気で学びたいと思っていると伝えないと課題も出してもらえません。

 目標もなく学んでいても結果は出せません。

 本当に自分が手に入れたい目標を明確にして、それに向かって努力する。

 それが大切だと思うのですよ」


 隣で聞いていたフローラはその通りだと思っていた。

 自分が本当に学びたい目標がはっきりした方が努力できる。

 そもそも努力するのか諦めるかの判断ができるようになる。

 魔力増強法や魔力貸与法は、今までの努力を無にするか、それとも実らせられるかの大切な分岐点になる。

 何が何でも学びたいとも思っていた。


「そうだな、確かにその通りだ。

 私も心から学びたいと思っている。

 今まで努力してこなかったわけではないが、あの知識や技を知ることができると分かって、今まで以上に努力できるようになった。

 何としてでも執行導師にまで登り詰めてみせるぞ」


 担任の決意を込めた言葉を聞いてフローラはハッとした。

 少なくとも一つの方法がある事がはっきりしたのだ。


「先生、大陸連合魔術学院の先生になって、執行導師にまでなれたら、ロイド君が見つけた隠し図書の内容を学ぶことができるのですか」


「ああ、それは確実だ。

 元々大陸連合魔術学院には危険な魔術関連の図書が数多く保管されている。

 だから危険度によって閲覧できる図書が資格によって変わってくる。

 生徒でも一般生徒が閲覧できない、級長や級長格だけが閲覧できる図書がある。

 級長のなかでも特に選ばれた者だけが閲覧を許される図書がある。

 生徒では絶対に閲覧を許されない図書もある。

 先生になっても役職によって閲覧できる図書が限られるのだ。

 ロイド君のように、生徒でありながら執行導師格の待遇を受けている者など、大陸連合魔術学院創設以来初めてだよ」


 フローラはまたとんでもない事を聞いてしまった。

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