第11話:宝石・ロイドことローレンス視点
美しい、微塵の翳りもない宝石以上の輝きを持つ心。
忠誠心から美しく輝く心は見た事がある。
常に側に控えてくれている守護騎士も美しい心ではある。
だが一点の曇りもないかと言えばそうではない。
「御恩と奉公」が騎士や貴族の忠誠心だ。
恩賞なしの忠誠心などありえないのだ。
だがそれが仕方がないことだとは私にも分かっている。
忠誠心を持って主君の仕え戦うには、それなりの収入が絶対に必要なのだ。
子孫にも同じ忠誠心を持たせるには恩賞は必要不可欠なのだ。
その分だけ輝きが鈍いし翳りもある
だがそれでも欲望まみれの王侯貴族よりもはるかにましだった。
とてつもない苦しみを伴う事になったが、魔力と本性を見抜く力があったからこそ、傅役や乳母以外にも信じられる家臣を見つける事ができた。
彼らの協力があったから皇国を出て学院に来る事ができた。
そのお陰でフローラと出会う事ができたのだ。
「分かった、フローラ嬢。
だったら今日から勉強に励まないといけない。
寝食を忘れて勉強しろとは言わないけれど、結構しんどいよ。
頑張る覚悟はあるかい」
私はとても感動している。
いやそれだけではない、フローラを誘惑した自分を恥じている。
王侯貴族の汚さ下劣さを非難していた自分が同じような不正をしようとした。
一生懸命不正する事なく努力している級友を裏切るとことだった。
それをフローラの正義感が防いでくれたのだ。
美しい輝きを微塵も曇らせる事無く断ってくれたのだ。
「あります、覚悟はできています。
正々堂々と級友達に恥じる事のない方法で執行導師格を目指します。
ロイド君には負担をかけると思いますが、よろしくお願い」
フローラが深々と頭を下げてくれる。
フローラは俺の事を商人の子供だと思っている。
それなのに公爵令嬢のフローラが躊躇いを見せる事無く頭を下げてくれる。
建前では身分の差がない学院だが、実情は違うのだ。
表に出る部分では身分差は現れないが、陰では違うのだ。
見えない所や心の中には確実に身分差や差別がある。
そもそも交流しなければ、王侯貴族子弟や令嬢は平民に礼を取らなくていい。
学院も身分差の問題が表だって現れないように配慮しているのだ。
差別意識や身分意識の強い王侯貴族子弟や令嬢は、平民子弟や子女とは同じクラスにならないように配慮しているのだ。
「では早速フローラ嬢の実力を再確認しようと思う。
魔境で現れたフローラ嬢の魔力と以前学院で計った魔力が違い過ぎる。
学院に戻っている今の魔力がどうなっているか計らせてくれ。
そしてその違いがなぜ現れたのかを検証させてくれ」
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