第25話:媚・イザベル視点

「フローラ嬢、今まで挨拶を遅れた事、申し訳ありません。

 キャンベル王国との関係があって、挨拶を躊躇ってしまっていたのです。

 他意がない事はここで誓わせていただきます。

 それでですね、今度我が国出身の貴族令息令嬢の集まりがあるのです。

 今度から他国の貴族の方にも参加していただこうという話になりまして。

 栄誉ある一番目の招待をフローラ嬢にしたいと満場一致で決まったのです。

 一度参加していただけませんか」


 ここまで露骨に手のひら返しするとは、恥知らずとしか言いようがありません。

 今までは平民と仲良くする公爵令嬢など貴族ではないという態度を取っていたのに、王級の魔術士に認定された時にも妬みの視線を向けるだけだったのに、本国からの指示が来た途端に露骨に媚を売ってきました。

 全員叩きのめしたいところではありますが、単なる護衛役では無理です。


「待ってもらおうかジェイムズ君。

 フローラ嬢は我が国のパーティーに参加していただくのだよ」


 やれやれ、今度はスタンリー王国のヒューイ殿ですか。

 確かバーンウェル伯爵家の出身でしたね。

 相手がキングセール王国のプランケット侯爵家の出身だから、貴族の地位ではなく学院の規則を建前に君付けですか。

 自分の都合で本音と建て前を使い分ける、信用ならない男ですね。


 さて、どうしたモノでしょうか。

 フローラ嬢のご性格では強く断る事などできないでしょう。

 そうなると礼儀知らずの無礼者に押し切られてしまうかもしれません。

 最悪の場合は厳罰を受けるのを覚悟して二人とも殺してしまう手もあるのですが、そうすると直ぐに次の護衛が間に合わずにお嬢様に危険が迫るかもしれません。

 ここはわざと私を殴らせてお嬢様の逆鱗に触れさせるしかありませんね。

 お嬢様はああ見えて家臣が不当な扱いを受けた時にはキレられますから。


「申し訳ありません、キングセール王国プランケット侯爵家のジェイムズ君。

 スタンリー王国バーンウェル伯爵家のヒューイ君。

 フローラ嬢には導師格として今直ぐやっていただくことがあるのですよ。

 それともキングセール王国とスタンリー王国では、学院の導師に仕事を放り出してパーティーの出ろと命じられるのですか。

 まさかとは思いますが、母国の立場を悪くするような事を、御両名が独断で決めてませんよね。

 そんな事が露見してしまうと、実家を追い出されかねませんよ」


 ロイド殿が助けに来てくれました。

 これでひと安心ですね。

 それにしてもロイド殿は何者なのでしょうか。

 どう考えても商人の息子には見えません。

 その気になれが大陸をひっくり返す事もできる実力者です。

 どのような思惑があってお嬢様に味方しているのか、場合によったら刺し違えてもお嬢様を御守りしなければいけません。

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