第37話:叙爵志願・ドロシー視点
「二人は昨日の話を受ける気があるの」
私はピエールとシモンを睨みながら言い放った。
「昨日の今日ではあるけれど、早く決めないといけないのよ。
一日遅れればそれだけ家族が危険になるわ。
それにこちらから動かなければ、フレイザー公爵家が独立戴冠を決断しないかもしれないのよ。
三人もの貴級魔術士が国内貴族にいるかいないか、それは大きな圧力になるのよ」
「それはその通りだと思うよ。
ドロシー嬢の言う通り、フローラ嬢とエレノア嬢に加えて三人もの貴級魔術士がいるとなれば、キャンベル王国もフレイザー公爵家に手出しできないと思う。
だが本当にフレイザー公爵家に独立戴冠の意思があるのだろうか」
ピエール君が優柔不断な事を口にする。
女性を口説く時は積極果敢なのに、こう言う重大な時ほど尻込みする。
腹立たしい、女性を軽く見ているのが透けて見えるわ。
「だからこそこちらから積極的に出た方がいいと言っているのよ
それにあのロイド君が口にしたのよ。
確実な話か、よほど可能性が高い話よ。
もうピエール君はいいわ、ロイド君から見て役に立たないと思われたら、ライル君のようにパーティーメンバーから外されるだけよ。
シモンはどう思うの、どうするの」
私はピエール君を見切る事にした。
今回のロイド君の提案は、ライル君の時と同じ可能性がある。
フローラ嬢に寄生するだけの役立たずを斬り捨てるための試験の可能性がある。
私は今の生活を失うのが嫌だわ、絶対に嫌。
フローラ嬢の側にいてほんの少し役に立つだけで、大好きな魔術の研究を、お金の心配も家族の心配もせずに一生続ける事ができるようになるのよ。
「僕かい、僕は叙爵を望むよ。
正直フレイザー公爵家の争いに巻き込まれるのは嫌だよ。
エレノア嬢の誤解を受けて嫉妬で殺されるのは嫌だからね。
不安だし心配だし怖いけど仕方がないよ。
最近家族から学院領に呼んでもくれないかという手紙が来た。
家族の住む貴族が僕に眼をつけたようなんだ。
王家ならともかく、地方貴族なら特級の魔術士でも配下に加えられたら、周辺貴族に大きな圧力を加えられるんだ。
もう僕には時間がないんだ。
選り好みできるような立場じゃないんだ。
君達がどう思い、どうしようと考えていても関係ない、僕は叙爵してもらうよ」
どうやらシモン君は私とな同じ考えのようね。
それにしても、シモン君がここまで追い込まれていたとは全然知りませんでした。
このタイミングでロイド君の提案ですか。
ロイド君は本当に優しいですね。
今回の件はフローラ嬢のためではなくシモン君のためでしたか。
「では今から私と一緒にフローラ嬢とエレノア嬢にお願いに行きましょう」
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