第15話:魔境狩り・フローラ視点
「今日は稼ぐぞ、授業料の足しにするぞ」
シモン君がやる気になっています。
平民出身のシモン君は授業料の捻出に苦労しているようです。
「そう、そう、今日はパーティーだけで魔境に行く愉しい日だな」
ライル君がとてもうれしそうです。
こう言っては何ですが、ちょっと気持ちの悪い笑い方をしています。
でもロイド君はなんだか少し不機嫌です。
ピエール君は普段と全く同じですから大したことではないのでしょう。
「余計なことは言わないでよ、ライル君。
貴男のせいでロイド君のやる気が下がったら、私は食事抜きになるのよ。
ロイド君なら殴るだけで済ますでしょうが、私は呪うわよ」
ドロシー嬢が怖い事を言っています。
でもそれだけ本気だと言う事ですね。
ドロシー嬢も平民出身で裕福ではないのでしょう。
魔境での狩りの成果で生活レベルが変わってしまうのですね。
私も足を引っ張らないように気を付けないといけません。
下手をすれば彼らが授業料が払えなくなり退学になるかもしれないのですから。
「今から手順を話す。
今日は前回よりも奥に入る。
基準はフローラ嬢の貴級攻撃魔術で斃せる魔獣のいる場所にする。
前回のように素材を無駄にしないように魔獣を狩る。
前回程度の魔獣じゃ貴級攻撃魔術で傷つき過ぎる。
それと魔獣のダメージを与え過ぎる相剋魔術は禁止だ。
同属性の魔術で斃して素材の損傷を最低限に抑える」
ロイド君がとんでもないことを言いだしました。
私のような初心者が実験ではない本気の狩りの主軸になるなんて無理です。
パーティーメンバー全員の生活を背負うなんて重すぎます。
「おい、おい、おい、そりゃ無茶だ。
確かに金になる魔獣は狩りたいさ。
だがそれも命あっての物種さ。
死んじまったら何にもならねえよ。
フローラ嬢の貴級攻撃魔術が素晴らしいのは分かっている。
だけど初心者に命は預けられない」
普段は少し軽いライル君ですが今は本気です。
ライル君の言う通りです。
私のような実戦経験のほとんどない素人に命を賭けられなくて当然です。
死んでしまったら彼らの魔術師になると言う夢もかなえられなくなるのですから。
「ちょっと待ちなさいよライル君。
貴男ももう少し考えてからしゃべりなさいよね。
ロイド君がここまで口にしているのよ。
軽々しい考えで口にしている訳がないわ。
何か考えがあるんだよね、ロイド君」
ドロシー嬢が加わってきました。
ドロシー嬢は本気です、真剣です。
生活と夢、命までかかっているのですから当然です。
いえ、よく考えたら自分達だけではありませんでした。
イザベルが私を護ってくれているように、彼らにも護衛がいます。
家臣なのか雇人なのかは分かりませんが、彼らの命も掛かっているのです。
私も本気で考えないといけません。
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