第28話:溺愛2・イザベル視点

「ギャアアアアア、全部です、これが全てです。

 もう何も隠していません、だからやめてください。

 もうゆるしてください、お願いします」


 エレノアお嬢様らしい拷問ですね。

 よく拷問に伴ってしまう陰湿な所が全くありません。

 ただひたすら真直ぐに憎い相手の身体を叩き潰すだけです。

 駆け引きの欠片もない暴力だけによる拷問です。

 指揮官は嘘で誤魔化そうとしていますが、ジェイムズ達は嘘などつけませんね。

 身体中の関節があらぬ方向に向いています。

 ジェイムズ達にはあの痛みに耐えられるような根性はないでしょう。


「痛みがなくなるように治癒魔法をかけてあげます。

 その代わり私が拷問をした事は黙っていなさい。

 いいですね、もし何か言おうとしたら心臓を潰します」


「「「「「分かりました」」」」」


 ジェイムズ達学院生はもう逆らう気力もないようですね。

 指揮官はまだ逆転の機会を伺っているようですが、エレノアお嬢様と私の隙を突いて何かできるような力はないでしょう。


「うっうううううん。

 え、なぜ、どうして、エレノアがここにいるの」


 フローラお嬢様がようやく目を醒まされました。

 でも自分が誘拐された事も分かっていないようです。

 未だに学院にいる心算のようです。

 やはりジェイムズ達の言葉に嘘はないようですね。

 自分達も眠る覚悟で睡眠香を使ったようです。


「……」


 ああ、またですか、エレノアお嬢様。

 未だにフローラお嬢様の前では何もしゃべれなくなってしまうのですね。

 しかも緊張の余り顔が強張り睨みつけているように見えます。

 そんな事を繰り返してしまうから、フローラお嬢様がエレノアお嬢様に嫌われている蔑まれていると誤解されるのです。


 頑張ってくださいエレノアお嬢様。

 ここで誤解を解いて仲のよい姉妹になるのです。

 それがお二人の為なのです。

 ひと言でいいのです、エレノアお嬢様。

「お姉様を助けに参りました」とひと言口にされるだけで、全ての誤解が解消されるのです、エレノアお嬢様。


「分かっています、エレノア。

 私のような才能のない者が公爵家に残っては貴女の邪魔になりますものね。

 抵抗はしません、ここで殺してください。

 ただこれだけはお願いします。

 父上と母上の事はお願いしますね」


 ああ、フローラお嬢様が何かとんでもない勘違いをされています。

 このままでは今まで以上に誤解が深くなってしまいます。

 エレノアお嬢様、勇気を出して何か言ってください。

 くそ、何故何も話せない。


 ロイド殿、何故私を動けるようにしてくれない。

 私が話せれば今度こそ誤解を解くことができるのに。

 約束したではないか、ロイド殿。

 フローラお嬢様とエレノアお嬢様の間を取り持つと言ったのは嘘か。

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