第28話 後藤さんと飲みに行く
お盆休みも終わり仕事が始まったが、今日から値上がりする魔石のことよりも水以外の魔法書が欲しくて、次はいつ行こうかと考えてしまう。
「東山~、佐藤課長には怒られなかったぞ~。もぐもぐ……」
「田中先輩が、怒られなくて良かったですよ」
お昼に、食堂でカレーを食べながら答えると、
「ん? 東山、今度は何をやらかした? もぐもぐ……」
あれ? 及川さん、僕って問題児でしたっけ?
「及川さん、何もやっていませんよ。箕面DWAで、偶然課長と会っただけです」
「へぇ~、東山君、佐藤課長と一緒にダンジョンに入ったの?」
「太田さん、それをお断りしたから……教育係だった田中先輩が怒られるかと思ったんですよ」
今はもう教育期間は終わっているけど、何かあったら先輩に指導不足だと話が行ったりする。
「「「なるほど」」」
田中先輩が、怒られなくても箕面ダンジョンの土産をくれてもいいぞと言うから、『ネズミの尻尾とかカエルの肉なんていらないでしょ?』と答えた。
「何~! そんなのが出るのか!」
「はい。あっ、先輩! 後は、蛇の肉と皮も出ましたよ」
「東山~、俺はそんな物はいらんぞ! 旨い肉か甘いのが良いな!」
「先輩~、もしかしたら蛇の肉って美味しいかもしれませんよ? 食べてみます?」
きっと、蛇やカエルの肉は、動物園や水族館にエサとして卸されていると思う。
「いらんわ!」
オーク肉があんなに美味しかったから、もしかしたら旨いかも? 先輩と僕のやり取りに、及川さんと太田さんはケラケラと笑っている。
第3土曜の朝、後藤さんから『鹿児島から戻ったから、今日、ダンジョンの後に飲みに行かないか?』と誘いのメールが来たので、『喜んで。何時に集合ですか? DWA支部で待っています』と返信した。
20階にワープして、狩りをする。水魔法のスキルを上げたくて、弱々しい水魔法を使いまくった。いつも後藤さんを待たせているので、今日は、いつもより早めにダンジョンを出ることにした。
魔石の売り値が上がってから初めての換金で、14万以上あった。うわ~、凄いな! こんなにもらっても良いのか? いつものようにカードに入金してもらった。
「東山様、哀川からの伝言があります。『スキル書』の値段が付いたので確認して欲しいとのことです」
白石さんが書類を出して来た。
「あ! 換金額が決まったんですね。いくらですか?」
「こちらになります。サインをお願いします。こちらは、サイン後に登録カードへ入金となります」
「えっ! こんなに!?」
うわっ! 50万!? 『挑発』の30万ぐらいだと思っていたけど……凄い金額だ。
「東山様、『水魔法』を出す魔物の情報料込みのボーナス価格になっているそうです。次回から、換金額は変わりますがご了承ください」
白石さんがにっこりと登録カードを渡してくれた。
「はい、白石さん。分かりました」
ボーナス価格って嬉しいな~。次からは30万になるのかな? あっ、早く着替えないと後藤さんが来るな。
着替えてDWAのフロアーで掲示板を見ながら待っていると、奥から出て来る後藤さんが見えた。
「こんばんは、後藤さん」
「東山君! 待たせたな。行こうか!」
後藤さんと、前回行った駅前の居酒屋へ行った。
「東山君、乾杯しようか!」
「はい、後藤さん。「乾杯! ゴクゴク……」」
プッハ~。ダンジョンの後のビールは美味しい~! 小皿をつまみながら、後藤さんが話せる範囲で、鹿児島攻略の話を聞いた。
「東山君、これは土産だ! これも旨いからな~」
「えっ、鹿児島のですか? ありがとうございます」
ダンジョンのお土産かと思ったら、鹿児島の特産品で焼酎と黒豚みそをもらった。へぇ~、美味しいのか、食べたことないから楽しみだ。
今回の鹿児島ダンジョンCの攻略は、失敗に終わったらしい。後藤さんが言うには、深階層の魔物の数が多すぎて、薬が足りず最下層まで進めなかったそうだ。
「東山君、失敗と言うか、初めから攻略するには薬が足りないって分かっていたんだ。だが、そろそろ鹿児島でスタンピードが起きそうだったから、そのまま魔物を間引くことになったんだよ。ゴクゴク……」
「そうなんですか。今回は、スタンピードを防ぐのが目的だったんですね」
そろそろ一般人もダンジョンCに入る人が増えていると思うけど、それでもスタンピードが起きそうになるんだな。まぁ、箕面ダンジョンCみたいに、低層階に毒系の魔物が多かったら階層を進められないけどね。回復魔法とかないのかな?
「後藤さん、回復魔法の『スキル書』は見つかっているんですか?」
「ああ、海外では、ドロップする魔物の報告が上がっているみたいだが、日本では、ダンジョンAとBの宝箱から何個か出たと聞いたな。何人かは使えるよ。ゴクゴク……」
「宝箱ですか。ドロップする魔物が見つかって、使える人が多くなったら良いのに……」
ゴブリンみたいに、低階層でも出す魔物がいるんじゃないかな。見逃しているだけで……。
「ダイバーが増えたから、その内に見つかるんじゃないかな。俺達は魔物を間引くのに時間が取られて、アイテム狩りをする時間は無いからね。休みに欲しい物を狙いに行くだけだしな。もぐもぐ……」
JDAは毎週、ダンジョンAとBに、順番に入って魔物を間引いているそうだ。
「人手が足りないんですね……」
「東山君、これでもマシになったよ。ダンジョンDは、ほぼ放置出来るようになったしね」
あっ、後藤さんが、毎週寝屋川ダンジョンにいたのは間引いていたのか? 仕事していたんだ……てっきり、白石さん狙いだと思っていましたよ。
それから、後藤さんに、鹿児島ダンジョンで出て来た魔物を色々と教えてもらったが、魔物よりドロップ品の方に興味がわいてしまう。
「そうだ、東山君が出してくれた『水魔法』だが、攻略部隊のJDAが覚えたよ」
「そうですか! JDAで覚えられる人がいて良かったですよ」
「あの魔法、俺が覚えたかったんだが、俺も神田も覚えられなかったよ……」
「あぁ……残念でしたね」
魔法って適性があるって初心者講習で言っていたけど、弱い魔法でもそうなのか。
「弱い魔法だから、育てるのに時間が掛かりますけどね」
「ああ、スキル上げは武器でも時間がかかるよ。ゴクゴク……」
後藤さんは、『『幸運の君』には、支払わせる訳にはいかない』と言って、今日も奢ってもらった。お土産まで貰ったのに、ご馳走様でした。
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