第33話 回復魔法
ダンジョンから出て、『毒消し(キュア)』以外を換金した。今日は、50万以上あったんだけど……。
「私は魔法を覚えたから、2人で分けて。うふふ」
神田さんがそう言ったので、後藤さんと僕で折半することになった。そして、昨日の居酒屋に行った。打ち上げだ!
「「「乾杯~! ゴクゴク……」」」
神田さんが、魔法を覚えられて嬉しいのか、怖いぐらいに機嫌が良い。
「うふふふ。後藤も、東山君も、ありがとうね! 今日は、私に奢らせて! ゴクゴク……」
「「どういたしまして……」ご馳走になります」
神田さんが、『HP回復』を覚えたから、後藤さん達の攻略部隊も楽になるよね。
「これで攻略の時、神田が回復してくれるんだな! 頼りにしているからな! ゴクゴク……」
「あ~、後藤! 私まだ2回しか使えないからね。ゴクゴク……」
「「えっ!」」
そう言えば、後藤さんも神田さんも、前にMP10無いって言っていたな……僕が火魔法覚えた時も、3回しか使えなかった。後藤さんは、MP10ないから覚えられないのか? 魔法を覚える条件にMP量も関係あるのかもな。
「神田……なぜ覚えられたんだ?」
「日頃の行いが良いから? ゴクゴク……」
「「……ゴクゴク……」」
断言出来ないけど、MPが10を超えたから覚えられたのか? 消費MPが5だから、MP15は無いってことか。うわ~、神田さんのスキル上げが大変そうだ。
飲みながら明日の話をした。僕は、明日も土魔法狙いでダンジョンに入るつもりなので、二人とは夕方に寝屋川DWA支部で待ち合わせをした。そして、『毒消し(キュア)』は僕が預かることになった。
翌日、10階に飛んだが前回より人がいる。きっと、みんな魔法狙いだな。5時間ほど探し歩いたが、メイジは『土魔法』を出してくれなかった。代わりに『風魔法』を拾った……やっぱりダブるよね。
僕は、早めにダンジョンから出て寝屋川へ向かうことにした。
3時頃に寝屋川DWAに着いた。掲示板を見ていたら、哀川さんと、後ろに二人がダンジョンの方から戻って来た。哀川さんの表情が嬉しそうだ。神田さんの『HP回復』を試しにダンジョンへ行ったのかな?
「こんにちは、哀川さん。後藤さん、神田さんも、昨日ぶりです」
「ああ、東山君。ちょうど良い所に来たね。奥の部屋に行くよ」
哀川さんが微笑んでいる。そして、哀川さんの後ろでニコニコしている後藤さんと神田さん、初めて見たかも。
「おう! 東山君」
「ふふふ。東山君、行くわよ~」
「はい」
応接室で、哀川さんに『回復魔法(キュア)』と『風魔法』の『スキル書』を渡したら、凄く喜んで貰えた。
「東山君、明日からJDAの攻略部隊と幸運値の高いメンバーで箕面ダンジョンに籠るよ」
「はい。哀川さん、頑張ってください」
そうだよね、JDAが先に『回復魔法』を手に入れたいよね。2種類とも攻略部隊に必要な魔法だしね。
「東山君、換金は少し待って貰うことになる。奮発するから期待しておいてくれ。それと、神田に覚えさせてくれてありがとう」
おお! 哀川さん、奮発してくれるんですか! 期待して待ちます!
「哀川さん、楽しみにしています! あの、『回復魔法』は3人で取ったので3等分でお願いします。神田さんは、一緒に狩りをしたのでお礼は要らないですよ」
「ふふふ。東山君、ありがとう~!」
その後、哀川さんの奢りで飲みに連れて行って貰った。
「「「「乾杯!」」」」
飲みながら、哀川さんに『回復魔法』FがEになったことを話した。哀川さん曰く、属性魔法でも同じ現象があるそうで、例えば、ダンジョンの中階層で『火魔法』Dを覚えた後に、深階層で出た『火魔法』を覚えてBになったりするそうだ。ただし、『火魔法』Dを育ててBにした後に『火魔法』Bを覚えることは出来ないらしい。それと、Bを覚えた後にDを覚えることも出来ないそうだ。
「つまり、東山君。属性魔法のスキル上げは、コツコツ育てるか、よりランクの高い同じ属性魔法書で一気に育てることが出来るんだ」
そうなのか。でも、僕がランクの高い魔法書を手に入れるのは難しいだろうから、使いたい魔法は育てるしかないよな。
連休明け仕事が始まる。昼休み、先輩たちが土魔法は出たかと聞かれたから、土魔法は出なかったけど、他に良い魔法が出たと答えた。
「「何が出た?」」
「東山君、良い魔法って?」
哀川さんに、口止めされていないから言っても良いよね。すぐに掲示板に張り出されるだろうし。
「『回復魔法』です。今日から、JDAが籠っていると思いますよ」
「おお~! ホイミか~!」
「田中さん、そこはケアルでしょう! 東山、良いのが出たな!」
「東山君、僕も欲しい!」
ふふ。何のゲームが好きか分かってしまうな。そうだ、佐藤課長に報告に行かないと。何か出たら教えると約束していたな。昼休みの間に課長の部屋に行き、『回復魔法』の話を少し詳しく話した。
週の中頃、後藤さんからのメールに、箕面ダンジョンの様子が書かれていた。
あれから毎日、ホブゴブリンとメイジが出て来る各階層をJDAの攻略チームで埋め尽くしたそうだ。うわ~、壮観な光景だろうな、ちょっと見てみたい。
そして、パーティーメンバーの誰かが『回復魔法』を覚えたら、一週間でメイジ狩りから解放されて、通常任務に戻る。その後、希望者と誰も覚えなかったパーティーは追加で一週間。JDAも、多めに『スキル書』を確保しておきたいんだろうけど。罰ゲームみたいだな……
第三土曜日は、寝屋川ダンジョンに行く。魔法のスキルを上げたいから21階でスキル上げをした。
21階でスキル上げが出来る日が来るとは……水・風・回復魔法を重点的に使った。そして、帰りにステータスを確認する。
名前 東山 智明
年齢 21歳
HP 211/213(+2)
MP 5/162(+2)
攻撃力 91
防御力 89(+1)
速度 88(+1)
知力 107
幸運 67
スキル
・片手剣C ・盾C ・火魔法C ・挑発 ・水魔法D→C
・風魔法D→C ・回復魔法E
おお! 水魔法と風魔法がCに上がっている。回復魔法は、その内に上がるだろうから良いとして、後はMPだな。
ダンジョンから出て換金しに行くと、先に白石さんから声を掛けられた。白石さんの顔を見るのは久しぶりだな。相変わらず、可愛いお姉さんだ。
「東山様~! お待ちしていました。こちらへどうぞ」
「白石さん、お久しぶりです」
今日はいつものカウンターではなく、奥のカウンターに案内された。一般ダイバーが増えて受付窓口を増やしたそうだ。そして、なんと白石さんが寝屋川DWAの支部長になったそうです。
「えっ! 白石さんが支部長に!? 凄い! おめでとうございます。」
「ふふ。東山様、ありがとうございます」
白石さんは、元々、支部長の補佐をしていたらしく、上が異動したから繰り上がったと言う。でも、仕事が出来ないと繰り上がらないと思うよ。若いのに支部長なんて凄いな。
「支部長に『様』を付けられるのは、変な気分なので普通に呼んで貰えますか?」
「では、東山さん。で、宜しいですか?」
「はい」
もしかして、若くないのかな……。
「東山さん、先日の『スキル書』の換金額が決まりましたので、ご確認の上サインをお願いします」
白石支部長が提示してくれた書類を見ると、うわっ! 情報料50万×2=100万! 『回復魔法』に200万! 『風魔法』は30万の値段が付いている。総額330万! 心臓がバクバクしてきた。
「えええ!? こんなに貰って良いんですか!? 白石支部長、この『回復魔法』は三等分されていますか?」
「はい。分配した金額になります。『風魔法』は、既に他の人が換金に出されていますので、通常価格の30万になります。後藤・神田にも臨時ボーナスが支給されていますよ。それと、2種類の『回復魔法』は、しばらく200万円の買取りになります」
哀川さん、奮発してくれたな~。『回復魔法』は、200万で換金してくれるんだ。でも、覚えられる人に制限があるからね。公表されたら、箕面ダンジョンに人が押し寄せるだろうな。
白石支部長は、金額が大きいからと登録カードに入金してくれた。はあ~、凄い。 魔法書だけで330万! 箕面ダンジョンで頑張った甲斐があるな。
さあ、ご飯を食べに行こう。中華の豪華バージョンだな! 今日から、ビールのおかわりOKにするぞ!
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