第25話 箕面ダンジョン1


 みんなのお盆休みの予定は、田中先輩は、前半は東京に遊びに行って、後半は実家に顔を出すらしい。


 及川さんは、奈良の実家に帰ってダンジョンに入るそうだ。あっ、同窓会もあるらしい。


 太田さんは、8月初めに第三期のダンジョンCの開放をしたけど、他府県の開放は来月からなので、大分に帰ってもダンジョンには入れない。


「仕方ないよね、次に帰った時の楽しみにするよ。東山君は気を付けて」

「はい、太田さん。僕は箕面ダンジョンを楽しんで来ますよ」


 僕はお盆休みを利用して、箕面ダンジョンCに入ることにした。箕面ダンジョン近くのビジネスホテルを3連泊で予約している。


「東山~、何かあったらメールしろよ~。いや、何も無くてもメールして来い」

「え? 田中先輩、大丈夫ですよ……」


 はは、先輩らしいセリフだ。


「東山、箕面ダンジョンがどんな感じか教えろよ」

「はい。及川さんも、奈良のダンジョンの様子を教えて下さいね」


 こんな他愛もないやり取りが、僕には居心地が良いんだろうな。


 お盆休みに入り、みんなそれぞれの目的地に向かった。



 僕は、電車に揺られて箕面に向かう。そして、先にビジネスホテルにチェックインして荷物を置いてから、箕面DWA支部に向かった。


 そこで、箕面ダンジョンCで出て来る魔物を調べる。ネットでも調べたけど追加情報は資料室が早いんだよな。今回の目標は10階のワープを取ることにしているけど、ついでに20階までの魔物を確認しておこう。


 箕面ダンジョンは、驚くことに1階からランクDのカエルが出て来る。しかも、カエルは続けて15階まで出て来ると書いてある……後はランクEのラット・スライム・ゴブリン。

 6~10階は、ラット・スネイク・カエル・そして、ゴブリンとゴブリンメイジがセットで出て来るようだ。ダンジョンCだけあって、低階層にランクDの魔物が出て来るな。

 11階からは、ボア(猪)・カエル・キノコ・ポイズンスネイク。16階からは、ポイズンスネイクに、毒キノコ・ワイルドボア・ホブゴブリンとゴブリンメイジのセット。もう、毒攻撃する魔物が出て来る。だからか? カエルが出過ぎだよ。



 昼から、試しにダンジョンに入ってみようと、受付でレンタル装備を借りに行くと5,000円の装備しかなかった。後はオプションで武器が変更できるようになっている。


 ふむ。ダンジョンによって、置いている装備が違うのか。武器はボーガンとか興味があるけど、う~ん、僕はこのまま片手剣だな。武器を変えると、スキル上げに時間が掛かるからね。


 受付で地図が欲しいと言うと、


「はい。こちらが箕面ダンジョンCの20階までの地図となります。20階のワープを使えるようになりましたら、お声がけください。30階までの地図をお渡しします」


 ここでは、いきなり20階までの地図を渡された。初心者扱いしないってことか。




『チュ――!!』


 ダンジョンに入ると、早速ラットから攻撃を受けた。ラットは、素早くてラグビーボール程の大きさだ。ウロチョロして剣を命中させるのが難しい。


 ボワッ、ヒュ――バァ――ン!


 うん、ラットは、魔法で倒すことにする。1発で倒せるから楽だしね。


 箕面ダンジョンは、寝屋川と同じ迷路タイプのダンジョンみたいだが、所々に蔦や草が茂っている。地図を見ながら6階に進んだ。広さ的には、寝屋川ダンジョンと変わらないな。


 6階エリアの迷路を進むと、ゴブリンが2体出て来た。シルバーウルフのペアーよりマシだなと思ったら、片方が魔法を撃って来た。そうだ! メイジとセットだった!


 ヒュル、ヒュ――シュッ!


「これは、どっちから倒すのが正解だ?」


 メイジの魔法を盾でかわして、剣持ちのゴブリンの顔を目掛けて魔法を撃ち、杖を持つメイジに突っ込んで行った。ランクEのゴブリンなら魔法1発で倒せるんだが、どうやら個々がランクDらしい。メイジに突っ込んだ後、剣を持つゴブリンの止めを刺した。


 6階で少し狩りをして、ダンジョンを出ることにした。


 う~ん、あのゴブリンメイジの魔法は火魔法じゃなかったな……とりあえず、明日10階のワープを通してから、魔法書が出るか頑張ってみようか。


 箕面DWAでポーションと毒消し以外を換金した。レンタル装備代は稼げたから、よしとする。夜は、ホテルの近くにあったファミレスで食べよう、何を食べるかはメニューを見てからだな。



 翌朝、途中のコンビニでおにぎりと飲み物を買い。箕面DWA支部に向かった。


 今日は結構人がいるな。見たことある人が……えっ、佐藤課長だ! 何でここにいるんだよ? あ~、目が合ってしまった。


「おはようございます。佐藤課長」

「ああ、君は確か田中君の指導を受けていたね。君もダイバーだったのか」

「はい。東山と言います」


 顔を覚えられていたみたいだ、挨拶して良かった。太田さんは、及川さんや僕の話をしていないんだな。


「箕面ダンジョンには、良く来るのか?」

「いえ、今回初めて来ました」

「そうか。今日は20階まで行くつもりだが、東山君、一緒に行くか?」


 た、田中先輩~! 助けて下さい……どう言って断ろうか……。


「お誘いありがとうございます。太田さんから、佐藤課長の剣裁きが見事だと聞いています。僕は、いつも低階層で狩りをしています。申し訳ないんですが、僕が一緒だと足を引っ張りますので辞退させて下さい」


 怒られるか? 上手く言えたか!?


「低階層で狩りをしているのか……そうか、分かった。東山君、頑張りたまえ」

「はい。ありがとうございます」


 深々と頭を下げて見送った。


 まさか、こんな所で佐藤課長に出会うとは……僕の幸運は、やっぱりダンジョンの中だけなんだな……はぁ~、そうだ田中先輩にメールをしておかないと! 断ったから、田中先輩が怒られたらスミマセンと送っておこう。


 どっと疲れたけど、気を取り直してダンジョンに入ろうか。中で会いませんように……


 装備に着替えてダンジョンに入った。他にもダイバーがいるので魔物も少なく、6階までサクサクと進んだ。


 6階からは、ゴブリンがメイジとペアーで出て来るんだが……10階に到着するまでに、メイジが攻撃してくる魔法が4属性もあった。う~ん、困るじゃないか。出るか分からないけど、全部欲しくなってしまう!


 


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