第8話 12月31日 実家へ
12月31日、昼を食べて実家に向かった。電車とバスを乗り継いで、2時間も掛からない。
家が見えて来た。親父に今日帰るとメールをして、返事が来ていたから家にいるだろうけど足が重い……ダイバーのことも報告しないといけないしなぁ。
「ただいま」
「おう、お帰り。智明、元気にやっていたか?」
親父は、ソファーに座ってTVを見ていた。
「ああ、元気だよ。親父は? 少し太った?」
「ああ、だいぶな……外食が多いからな」
僕も、ソファーに座って話を続ける。
「ああ、それは仕方ないね。それで、母さんの情報とかないの?」
「ないな……」
「そっか……」
話が続かない……気まずいな。
「お前、仕事の方はどうなんだ?」
「ああ、先輩に可愛がってもらって頑張っているよ。そうだ、親父に土産と報告があるんだ。これ、ダンジョン産の蜂蜜。人気があって手に入らない品だって」
「ダンジョン産?」
親父は怪訝な顔をした。ダンジョンって聞いたら引っ掛かるよな。
「親父……ダイバーになったんだ。母さんの事故の件で、優先的に選んでくれたそうだよ」
「そうか。ダンジョンに入っているのか……」
「ああ、無理をしない程度で、魔物を一匹でも多く狩っているんだ」
「智明、ちょっと待て……」
親父は、スーパーで買って来たおせち料理の盛り合わせとビールを持って来た。
ダンジョンの話は、酒を飲みながら話をした。僕がダイバーに選ばれた理由や、初心者エリアでゆっくり狩りをしていること、工場の先輩もダイバーになったことを話していたら、気が付いたら年を越していた。
元旦、目が覚めたら昼前だった。昨日は、久しぶりに親父と話をしたな。居間に向かうと、親父はもう起きていて正月の挨拶を交わした。
「智明、明けましておめでとう」
「親父、明けましておめでとうございます」
もう、親父と話すこともないし寮に戻るかな。
「親父、今日寮に戻るよ」
「もう、戻るのか?」
「ああ、教育係の先輩が寮に残っているからね」
嘘をつくのは心苦しいが、昨日十分に話をしたから話すことがないしね。昼飯を食べてゆっくりと実家を出る。
「じゃあ親父、身体に気をつけて」
「ああ、智明も気を付けるんだぞ……無理はするな」
やっぱ、母さんが居ないとなあ~。はぁ、家に親父が一人で良かった……親父に彼女がいることは、母さんが行方不明になる前から知っている。たぶん、母さんも知っていた……その彼女をこの家に入れたら、もう2度と帰らないと決めている。僕はマザコンだから敢えて寮に入ったのに……こんなことになるなら、家から通えば良かった。
◇◇
1月2日と3日、ダンジョンに入った。2日とも13階まで進んで狩りをしたが、移動に2時間もかかった。
火魔法がDになったので、威力が上がったか確認するが良く分からない。1階のスライムで試した方がいいかな、帰りに試してみよう。しかし、20階のワープなんて、遥か先の話だな……みんなどこまで進んでいるんだろう。
帰りに1階でスライムを見つけて、火魔法を試してみた。
ボワッ、ヒュ――バァン!!
「おおっ!」
思わず声が出てしまったが、スライムを1発で倒せた! ふふ、これは嬉しいな。
「東山様、今日も蜂蜜ありがとうございます。換金額は、登録カードに入金しますね」
「はい、お願いします」
2日とも蜂蜜を売ったら、白石さんに喜ばれた。2日で7万、着実に登録カードの残高も増えていく。むふふふ。ステータス値も少しずつだけど上がっているし、良い感じだ~。
1月5日、仕事始め。先輩たちには、前日に寮で正月の挨拶は済ませていて、土産の蜂蜜も渡してある。
「東山~、あの蜂蜜マジで美味いな!」
「田中先輩は、甘い物が好きでしたよね。アレ人気があるらしくて、予約待ちだそうですよ」
甘党の田中先輩には、気に入って貰えたようだ。
「あぁ~、あれは予約する価値があるぞ!」
「東山、アレは何階で出るんだ? 換金額は高いのか?」
及川さんが、目をキラキラさせて聞いて来た。
「えっと、11階から出て来るキラービーが落としますよ。レアアイテムなので、なかなか落とさないですけど、換金額は高くないですよ、1,000円ですから」
「11階か~。先にワープ取らないと無理だな」
及川さん、ワープ取りが時間かかるんですよ……。
「東山君、卸値1,000円の蜂蜜っていい値段だよ? 僕もあの蜂蜜好きだな~。ダイバーになったら、その蜂だけ狩ろうかな」
「そうだな~、ダイバーの換金額は1,000円でも、売値は1,500円とか2,000円取るかも知れんぞ?」
「あぁ、田中先輩、そうかも知れませんね」
蜂蜜なんて買ったことがないから、店売りの値段なんて知らないなぁ。しかし、甘党は田中先輩だけかと思ったら、太田さんも好きだったのか。もしかして、及川さんも……?
1月の第2週、寝屋川のDWA支部に来たらいつもより人が多い。あぁ、企業のダイバー講習が終わったのか。今から仕事でダンジョンに入るのか、それとも、休みの日に小遣い稼ぎかな?
装備に着替えて、さっさとダンジョンに入る。今日も13階辺りで狩りをしよう。ステータスの速度と知力が70で止まったようなので、攻撃力と防御力が70になったら16階に進むことにしよう。
あれ? 僕は自衛手段にとダイバーになったのに、いつの間にかステータスを上げるのが楽しくなっているよな。着実にダンジョンの階層を進めているしね。
倒せる魔物の数も多くなって、ドロップ数も多くなる。お陰で、リュック1つじゃ足りなくなった。帰りにはリックが2~3個になっている。入りきらない時は、安くてかさ張る狼の毛皮(300円)を放置したりする。最近は、体力が付いて重いと感じないけど、大型リュック3つはかさ張るよな……。
1階に戻り、ステータスを確認する。
「ステータス・オープン」
名前 東山 智明
年齢 20歳
HP 106/124
MP 4/36
攻撃力 70
防御力 68
速度 70
知力 70
幸運 67
スキル
・片手剣D ・盾D ・火魔法D
う~ん、あと上がるのは防御力だけみたいだな。
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