第30話 箕面DWAで再会


 やっと、涼しく秋らしくなって来た9月の3連休、金曜の仕事終わりに二泊の予定で箕面のビジネスホテルに来た。明日から箕面ダンジョンに入る為に、もちろん、魔法書狙いだ。



 翌朝、早く起きて、箕面DWAの資料室で魔物を再び確認する。すると、ゴブリンメイジが、稀に『水魔法』を落とすと書き加えられていた。


 カエルは15階まで出てくる。カエルが多いのは、毒攻撃する魔物が多いからか?そして、ゴブリンメイジは6~10階。その後に16~20階でホブゴブリンとセットで出て来る。何故、カエルみたいに連続で出て来ない?


 怪しい……。


 もしかして、落とす魔法書が違う? まさか! 回復魔法を落とすんじゃないのか!? 何も出さないかも知れないけど……う~ん、確かめたいけど、先に10階メイジの4属性魔法を取った後だな。そうなると、20階のワープが欲しい。


 気合を入れてダンジョンに向かった。10階に飛んでメイジを探して狩るが、なかなか出してくれない。水魔法のスキル上げも兼ねて黙々と狩りをした。


 昼からは、風魔法と土魔法を撃つメイジが出たら、心の中で『魔法書を出せー!』と叫びながら止めを刺す……まだ、出してくれない。


 何体目のメイジだろう。やっと……『スキル書』を出した。近づいてスクロールを拾って見る。水魔法か? いや、この前のとは少し模様が違う。線が細くて波打っているような模様だ。スマホの写真と見比べる……。


「おお! 違う模様だ! これも写真を撮っておこう」


 スマホで写真を撮った後、『スキル書』に手をかざして集中する……すると、直ぐに魔法のスクロールが反応して浮かび上がり、吸い込まれるように手の中に消えた。そして、『ステータス・オープン』


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP  165/201

MP   5/149

攻撃力  89

防御力  86

速度   84

知力   96(+5)

幸運   67

スキル

 ・片手剣C ・盾C ・火魔法C ・挑発 ・水魔法E→D

 ・風魔法F


 おっ、やったー! 知力が増えて、風魔法を覚えた! うん? いつの間にか水魔法もDに上がっている! 疲れが一気に吹き飛んだよ! よし! 残るは土魔法か……それは明日だな。


 ダンジョンを出て換金してもらう。今回、毒消しを売らなかったので7万程だった。ホテルへの帰り道にあるファミレスで食事をした。初めての店に入って失敗したくないから、どうしてもチェーン店に入ってしまうな。




 翌朝、ホテルをチェックアウトしてダンジョンに向かう。箕面DWAのロッカーに荷物を預けて装備に着替えると、知っている人がいた。


「佐藤課長、おはようございます」

「おや、東山君おはよう。珍しいね、君はいつも寝屋川ダンジョンに入っていると聞いていたが」


 佐藤課長は、同じ装備を着ているのに強そうに見えるよな。いや、強いんだけど……風格のある剣士って雰囲気だ。


「はい。いつもはそうですが、欲しい物があって来たんです」

「ああ、追加資料にあった魔法書か?」


 最近追加になった資料なのに、課長は良く調べているな~。


「はい、そうです。佐藤課長は、箕面ダンジョンに良く来られているんですか?」

「ああ、時々だがね。今日は、前回のリベンジだよ。フフ」

「えっ! 20階のワープですか!?」


 うわ~、あんな目にあったのに、又、一人で行くなんて漢だな!


「ふむ。東山君は今日も低階層で狩りかい? それとも、一緒に行くか?」


 えっ! 佐藤課長が誘ってくれる。前回お断りしたのに有難い。20階のワープが欲しかったんだ!


「えっ、誘って貰えるんですか! 足を引っ張りますが、ついて行っても良いですか?」

「おや? 今回は断らないんだな。フフ」


 確かに、ちゃっかりしているよな……。


「はは。佐藤課長、前回は断ってすみませんでした。今回、20階のワープを取ったら調べたいことがあるんです」

「ほお~、調べたいことって何かな? ダンジョンへ行きながら話そう」


 佐藤課長に、ここの低階層のメイジが魔法書を落とすなら、16~20階のメイジも何か魔法書を落とすかもしれないと言うと、興味深そうに聞いてくれる。


「なるほど。他にも魔法を落とす魔物がいるのか調べるのか」

「はい、そうです」

「面白そうだな。東山君、何か出た時は教えてくれ」


 それでしたらと、佐藤課長に昨日の魔法のことを教えた。低層階のメイジが『水魔法』だけではなく『風魔法』も落としたことを……。


「なんだって……東山君、出たのか!?」

「はい、昨日一日狩りをしてやっと出ました」


 佐藤課長が魔法を見せて欲しいと言うので、狩りの時にと答えた。



 佐藤課長と10階にワープして、20階目指して進む。佐藤課長が先頭で、左後ろを付いて行く。


「佐藤課長、ポイズンスネイクが出て来たら、開幕に魔法を撃たせて下さい」


 顔に魔法を撃てば楽に狩れることは、実証済みだからね。


「分かった。東山君、頼んだよ」


 11階からランクCの魔物、キノコやポイズンスネイクが出て来るから気が抜けない。後は、ランクDの強めのカエルと初めましてのボア(猪)だ。


 佐藤課長は、勢い良く突っ込んで来る1m以上あるボアを、一太刀で倒してしまう……そして、ほとんどの魔物を瞬殺する。うわ~、強いな! 僕は、邪魔をしないようにポイズンスネイクに火魔法を撃つだけだった。


「佐藤課長、本当に凄く強いですね! JDAのダイバー並ですね」

「フフ、ありがとう。東山君の魔法に、助けて貰っているよ。それのお陰で毒攻撃をしてこないから楽だよ。だが、16階からは気を引き締めて行くからな」


 あぁ、課長が毒を受けたエリアになるのか。


「はい。毒キノコとポイズンスネイクは、開幕に魔法を撃ちますね」

「ああ、頼むよ。ふむ、魔法も覚えられたら使い勝手が良いな」


 16階も順調に進み、17階からホブゴブリンがメイジを従えて出て来た。ホブゴブリンは180cm位あり、ゴブリンに比べると筋肉質に見える。メイジの武器を見ると、低階層のメイジとは柄の部分が違う形のワンド(杖)だった。


 武器の形が違う……予想が当たっていれば良いけどな。


「東山君が話していたヤツだな」

「はい。佐藤課長、メイジを倒して良いですか?」

「ああ。私はホブゴブリンを狩る」


 僕がメイジに向かって魔法を撃ったと同時に突っ込んで行く。一太刀浴びせた時に、魔物の叫び声が聞こえた。


『ブヒィ~! グヒィ~!!』


 目の端に、ワイルドボアが突っ込んで来るのが見えた。ヤバイ! 慌ててメイジに止めを刺して振り向くと、佐藤課長が悠然とワイルドボアを斬り伏せていた。流石、剣士だ……。


「東山君、行くぞ」

「はい、佐藤課長」


 この人は、かっこ良すぎる……無駄な動きが一つも無い。


 17階からは階段毎に休憩を取りながら進んだ。危ない場面もあったけど、二人とも毒を受けることなく20階のワープ・クリスタルに到着した。ゴブリンメイジは何も落としてくれなかったが、まぁ、簡単には出さないよね。


「佐藤課長のお陰で、20階のワープを取ることが出来ました。ありがとうございます」

「私も、前回に比べたら楽に進むことが出来たよ。毒消しも使わなかったしね」


 ダンジョンから出て、ドロップ品は換金して折半にした。ドロップした毒消しは連れて行って貰ったお礼にと課長に引き取ってもらった。


 課長は、もう1泊するそうで食事にも誘ってくれた。前回の豪華ホテルでステーキ懐石だ! 牛肉旨~い!


「佐藤課長、ご馳走でした。この後は寮に戻ります。今日は、ありがとうございました」 


 20階のワープ取りなんて、まだまだ先だと思っていたから、誘って貰えて本当に有難かった。


「東山君、気を付けて帰るように。また何かあったら教えてくれ」

「はい。佐藤課長、失礼します」


 ホテルのロビーで、佐藤課長を見送ってから寮へ帰る。


 帰りの電車の中で、後藤さんに、風魔法のスクロールが1個出て覚えたと、写真を添えてメールを送った。直ぐに返信が来て、


『今日、寝屋川にいなかったのは、箕面ダンジョンに行っていたのか』


と、返信が来た。


あれ? 後藤さんと、何も約束していなかったよな?



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