第31話 9月末 恒例の飲み会
9月末の飲み会で、及川さんから『報告! 彼女が出来た。』と、爆弾発言が飛び出した!
「何~!! 及川、いつの間に彼女が出来たんだ?」
「お盆休みの同窓会の時に、元カノに会って……それで……」
「及川! 彼女の友達を紹介しろ~!」
田中先輩の追及は止まらない。これが無ければ良い先輩なんだけどなぁ~。
「田中さん、そんなことまだ言えないですよ」
「そんなことだと――!」
「「まぁまぁ……」」
不貞腐れた先輩を、太田さんと二人でなだめて話を変える。先輩の好きなアイドルの話を聞く! 話の腰を折らないように相槌を打つ……面倒だとは思ってはいけない……なぜなら、僕は顔に出てしまうから……思ってはいけないんだ。
「そうだ、僕も報告がありますよ。この前の休みに、『火魔法』を覚えました!」
「「「おお!」」」
太田さんが、メガネをクイッと上げて話題を変えてくれた。……助かった。太田さんは、ここぞと言うときに頼りになる。
「太田~! 魔法使いになったのか~!」
魔法書狙いのダイバーが多くて、太田さんは二日目にやっと魔法書を拾ったそうだ。確かに、箕面ダンジョンでも魔法書狙いのダイバーが増えたよな。
「凄いな! 『火魔法』が出たのか! 魔法使いが2人になったな。今度、3人で堺ダンジョンBに行こうか!」
おぉ! それは良いな! 堺ダンジョンBに入るには、パーティーを組まないと入れないしね。後藤さん達から聞いた、10階毎にボス戦があることを話した。
「「「お~! ボス戦だと!」楽しみだ!」ゲームだね!」
3人いたら、ボス戦も出来そうな気がする。太田さんが言う通り、ゲームみたいだよね。
「東山~、宝箱も出るのか?」
田中先輩の言葉に、及川さんと太田さんの動きが止まった。
「「!!」」
「宝箱、出るそうですよ! 田中先輩もダイバーの登録をしませんか? 一緒にダンジョンに行って、宝箱を開けられますよ!」
宝箱が出ると聞いて、及川さんと太田さんの目がキラキラして来た。公式サイトには、まだダンジョンA・Bの詳細は載っていないからね。10月、ダンジョンBが開放になったら、詳細を公開するだろうな。
「俺は~、魔物を追いかけるより、アイドルを追いかける方が良いな~!」
あはは! 凄く先輩らしい返事が帰って来た。それでこそ、田中先輩だ! 先輩が、僕にも報告は無いのかと聞くので魔法のことを言った。
「僕も魔法を集めています。この前、箕面ダンジョンでメイジを追いかけて、『風魔法』が出ましたよ」
「東山~、それで最近、箕面ダンジョンへ行っているのか~」
先輩、その通りですよ。魔法書狙いで、来月の連休も箕面に行くと伝えておく。
「おいおい、東山。4属性の魔法を集める気か? 又、攻略が進まないぞ?」
「及川さん、魔法を全部集めたいんですよ。攻略は、そのうちに……」
今は魔法を集めるのが楽しい。黙々と狩りをして、『スキル書』が出た時の達成感? あの嬉しさがたまらない。それに、寝屋川ダンジョンは30階までワープを通していたら十分だと思うんだけどな。
「そう言えば、佐藤課長と20階のワープを取りに行ったんだって? 課長が、魔法は便利だって言っていたから、僕も魔法を集めようかと思っているよ」
そうなんですよ! その後、太田さんと魔法の話で盛り上がった。
10月に入り、一般ダイバーの初心者講習が始まる。それと同時にダンジョンBの開放も始まった。
今月の連休も、金曜の仕事終わりから箕面に行ってビジネスホテルに来た。土魔法を取る為に気合を入れて3泊の予定。上手く魔法が出たら……20階のメイジが何か落とさないか、時間を掛けて調べるつもりだ。
翌朝、早く起きて、コンビニに寄ってダンジョンに向かう。箕面DWAに行くと、後藤さんが手を振っていた。えっ? 何故?
「東山君、おはよう!」
「後藤さん、おはようございます。何故ここにいるんですか?」
この前、後藤さんから『東山君、連休の予定はあるかい?』とメールが来ていたので、『連休は、魔法書を取りに箕面ダンジョンに行きます』と、返信した。
「代休で休みになったんだが、暇だから東山君の手伝いに来たんだ。『挑発』の時のお返しにね。後、『土魔法』で4つ揃うんだろう?」
えっ! 手伝ってくれるんですか!? でも、『土魔法』を探すのは9~10階ですよ。
「せっかくの休みを良いんですか? 凄く嬉しいですけど……あっ! 後藤さんが手伝ってくれるなら、20階でも良いですか?」
後藤さんがいるならランクCの魔物が出るエリアが良いな。
「うん? 20階のメイジも魔法書を落とすのかい?」
「いえ、まだ何を落とすか分からないんですけど、何か別の魔法を落としそうな気がするんですよ」
後藤さんが一緒だと、数多くの魔物を倒せるからドロップしやすいと思う。10階は、ソロで余裕だしね。
「別の魔法だって!? そうか! 東山君、何が出るか楽しみだな!」
「はい! 予想はしているんですけどね」
後藤さんが手伝ってくれることになったので、予定を変更して20階のメイジを狩りに行く。ついでに、受付で30階までの地図も貰っておく。忘れそうだからね。
「後藤さん、毒キノコとポイズンスネイクが出て来たら、僕が開幕魔法を撃ちます。それと、メイジは僕が狩ります」
「おう! 東山君、了解だ」
後藤さんと狩りをするのは久しぶりだな。佐藤課長と比べると、後藤さんは豪快な剣裁きだ。安心して見ていられるけど、僕も頑張って腕を上げないとな。
そろそろ、お昼にしようと階段に向かうと、通路の真ん中にホブゴブリンとメイジのペアーが居座っていた。
「東山君、行くよ!」
「はい! 後藤さん。僕がメイジを狩りますね」
後藤さんが、ホブゴブリンに突っ込んで行く。そして、僕がメイジに向かって火魔法を撃って突っ込んで行く。メイジが一瞬たじろいだ隙に、素早く剣を振り下ろす。
メイジが消えた場所に、念願のスクロールが落ちた。
「おお! 東山君、出たぞ!」
「後藤さん! やっと出ましたよ!」
『スキル書』を拾い上げて、まじまじと見る。見たことのない初めての模様だ。スマホの写真と見比べても、同じ模様は無い。
「これは、メイジが出したから魔法書か?」
「たぶんそうだと思います。後藤さん、これ覚えても良いですか?」
「ああ、勿論だ」
階段に移動して、覚える前に『スキル書』の模様をスマホで撮っておく。そして、『スキル書』を手に取り集中する……『スキル書』は反応して浮かび上がり、吸い込まれるように手の中に消えていった。
うん? フワッと、何かに包まれた気がした……。
何を覚えたかな『ステータス・オープン』
名前 東山 智明
年齢 21歳
HP 183/205
MP 3/153
攻撃力 90
防御力 87
速度 85
知力 102(+5)
幸運 67
スキル
・片手剣C ・盾C ・火魔法C ・挑発 ・水魔法D
・風魔法E→D ・回復魔法F
「おお! 思った通りだ! 後藤さん! 『回復魔法F』を覚えましたよ!」
知力と風魔法も上がっている。けど、もうMPが無いから回復魔法を試せないな……。
「なんだって――! か、『回復魔法』か――!」
「やった~! 後藤さん、きっと哀川さんに褒めて貰えますよ!」
「お、おう? そうか?」
後藤さんは頭を傾げるけど、JDAでは、まだ回復魔法を使える人が少ないんでしょ?
「だって、『回復魔法』は宝箱から出たって聞きましたけど、これは魔物からドロップするんですよ。頑張れば何個でも出るんですよ! 攻略しやすくなるじゃないですか。JDAに一番必要な『スキル書』だと思いますよ」
「なるほど! そうか、DEAに負けられんな!」
ん? DEAに勝つとか負けるとかじゃ無いと思うけど。あぁ~、DEAが岩手の攻略を成功させていたから、気にしているのかな?
昼休憩を終えて、回復魔法が出たので2人ともやる気に満ちている!
「東山君! 昼からも頑張るぞ!」
「はい! あ、あの後藤さん、もうMPが無いので魔法が使えません……」
「毒消しは多めに持ってきているから大丈夫だよ。さっきも出たしね」
確かに、毒キノコが出してくれたから手持ちは余裕だけど、MPが午前中で無くなるとは……後藤さんが瞬殺するから、魔物を狩る数が半端ない。あ~、MPがもっと欲しいな。
これはあれだな、僕が様子を見て『挑発』を使えば良いんだよな、神田さんの動きを思い出してみる……。
昼からも頑張ってメイジを探し、本日2個目の『スキル書』を拾った! 『挑発』はアレだよ……使い慣れていないから途中で止めた。使うタイミングが下手過ぎて、恥ずかしすぎる。
「おお! 東山君、又出たよ!」
「やった~! 後藤さんのお陰で、数多く狩れるから出たんですよ。これは、後藤さんが試して、ダメだったら哀川さんに……」
後藤さんが遮るように言う。『ん? 東山君、それさっきの出たヤツと模様が違うんじゃないのか?』と、
「えっ?」
後藤さんと一緒に、さっき撮った写真と見比べると、確かに中央の模様が違う。おお~! 後藤さんの言う通り、違う魔法だ!
「2種類も出るのか! 大発見だ! 東山君、何の魔法か覚えて見てくれ」
「えっ、次は後藤さんの番ですよ。後藤さんが覚えて下さい」
後藤さんは、違う種類の魔法だろうから、僕が覚えるようにと言ってくれる。そして、僕が覚えられなかったら後藤さんが試すことになった。
スマホで写真を撮ってから、『スキル書』に手を当てて集中する。『スキル書』が手に吸い込まれて魔法を覚えたようだけど、今回は何も感じなかった。ステータスを見ると、
知力 107(+5)
幸運 67
スキル
・片手剣C ・盾C ・火魔法C ・挑発 ・水魔法D
・風魔法D ・回復魔法F→E
あれ? 知力が5増えていたけど、追加のスキルは無くて、回復魔法がEになった。
「後藤さん、おかしいです。知力は5増えましたけど、スキルの数は増えていないんです。でも、『回復魔法』FがEになっているんですよ……何故でしょう?」
「え? 知力は増えたのにスキルが増えていないのか……もしかしたら、今のも『回復魔法』なのかもしれないな」
そうか! 2個とも回復魔法だけど、回復する『もの』が違うのか! 何を回復するのか試してみたいけど……。
「うぅ、試してみたいですがMPがないから試せないです。歯がゆい……」
「そうか。じゃぁ、東山君、今日はもう上がろうか」
可能性は、HP・MP・毒のどれかの回復だと思うんだけどな。それ以外だったら……毒以外の弱体攻撃をする魔物を探さないとね。
ダンジョンを出て、毒消し以外を換金したら35万もあった!僕は魔法を2つも覚えたから、これは後藤さんにと思ったら、『今日は、暇つぶしだから要らない』と言われた。びっくりだ……しかたがないので、後藤さんに毒消しを全部渡した。喜んでくれたから良かった。
そして、後藤さんと飲みに行くことになった。打ち上げだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます